表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばあちゃんの遺品が聖剣だった!  作者: 渓夏 酔月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/75

67.エロおやじの館

 翌日、和名倉(わなくら)ノ庄の庄館の櫓に立つと、多比人は四方に向けて聖剣『神祓(かみはらい)』を振った。


 これで、この庄から斑病は駆逐されたはずだ。


「ありがとうございます防人様。これで庄の民も安心して暮らせましょう」


 櫓から降りてきた多比人に、そう言って鹿野(しかの)が頭を下げる。


「それでは、私が幼児趣味の変態エロおやじと言われる理由をお見せしましょう」


 鹿野が楽しそうに笑う。


 多比人達が鹿野に案内されて着いたのは、庄館内にある大きな別棟だった。


「ここが、『エロおやじの館』です。もともとは『こどもの館』と名付けたのですが、みんなが『エロおやじの館』と言うのでそっちを正式名称にしてしまいました。はっ、はっ、はっ」


 大きな鍵の付いた門を開けて中に入る。


 建物の中に入ると、大きな部屋では子供達がそろばんの授業を受けていた。他の部屋では書道の授業が行われていた。さらにほかの部屋では、裁縫、大工仕事、剣術、襖張りなど、様々な作業に子供達がとりくんでいた。


「これはいったい、何をやっているのですか」


「御覧の通り、知識や技術を子供達に教えているのです」


 子供達は、熱心に勉強や作業に取り組んでいた。


 鹿野が多比人に尋ねる。


「多比人様は神界の人々を幸せにするために、愛姫様をお討ちになると聞きました」


「……はい。その通りです」


「私は世の中の不幸の多くは、貧困が生み出すものだと思っています」


「貧困……確かにそうかもしれません」


「では、どうして貧困は生みだされると思いますか」


 多比人は鹿野の問いに、考え込んでしまう。


「多比人様、私は貧困の大きな原因は、(いくさ)と無学だと考えているのです」


「戦と無学?」


「はい。戦は弱い者にしわ寄せが来ます。親を失い、家を失い、仕事を失い貧困を産みます。なので、私はこの庄の平和を守ります。そして無知無学という部分ではどうでしょう」


「無学……ですか」


「はい。例えば医者は、医学の知識があるから人を治せる。人はそれを期待してお金を払うのです。良い家を建てたいと思う人は、少々値が張っても腕の良い大工にお金を払ってお願いするでしょう。これも大工に知識や技術があるからです」


「つまり、そういう知識や技術を学べば、貧困が防げるということですか」


「さすがは防人様、話が早い。私はここで子供達に、様々な勉強や技術を教えているのです。ここを出て行っても自分の知識や技術で食べて行けるようにです。その雪姫様がお付けいただいている、髪飾りを売っていた露店の女店主を覚えておられますか。」


「はい。とてもしっかりされた女性でした」


 雪が自分の髪飾りを触りながら答える。


「その女店主は織江(おりえ)と言って、ここの卒業生です。どうです、ちゃんと良い商売をしていたでしょう。織江はここで読み書きそろばん、商売の基礎に宝飾品の知識を学びました」


 そう言って、鹿野は自分の娘を自慢するようにドヤ顔をした。


 多比人は、ここの卒業生が様々な情報収集も担っていることを理解した。


「さあ、そろそろお昼です。今日はここで御一緒に食べましょう」


 鹿野はそう言うと、奥の調理実習室のような部屋へと多比人達を案内した。


 部屋の机の前に座ると、十二、三歳ほどの子供達が、料理を運んできた。


「将来調理人を目指している子供達が作ったものです。試食も兼ねておりますので防人様、どしどし厳しいご意見をお願いします」


 鹿野の言葉に、子供達が緊張している。


 その子供達に、鹿野が声を掛ける。


「今日は東ノ庄からわざわざ防人様に来ていただいた。お前達の料理を食べていただけるなんて、本当に幸運なことだぞ」


「ありがとうございます! 一生懸命作りました! お召し上がりください!」


 子供達のまっすぐな声を聞き、これでまずいなんて言えるわけがないと思いながら、多比人は出てきた料理を食べてみた。


 ご飯にお味噌汁、香の物に肉野菜炒めのシンプルな定食だ。


「おいしい!」


 思わず多比人が声を上げた。


「すごく優しい味付けで、これは毎日食べても飽きが来ませんね」


 雪もびっくりしたようにしている。


 楓は何も言わずにもりもり食べている。


 気に入ったらしい。


「食材の原価を抑え、何度でもお客様に来てもらえるように飽きの来ないものを目指して作りました」


 子供達が笑顔でそう答える。


 ここの授業は、常に子供達の自立を意識した実践的なものであると多比人は思った。


 多比人には、鹿野が何故こんなことをしているのか。さらに言えば、何故実態を明らかにせず、『エロおやじ』などと呼ばれることを鹿野が受け入れているのか分からなかった。


「多比人様は、何故私がこんな酔狂なことをしているのか、不思議に思われているようですな」


「はい。大変すばらしい慈善活動をされていると思いました」


「慈善活動? いえいえ、これはすべて自分のために行っていることです。その説明には、少し私の話をさせていただいてもよろしいでしょうか」


 そう言って、鹿野は湯呑のお茶を静かに飲んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ