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ばあちゃんの遺品が聖剣だった!  作者: 渓夏 酔月


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23.訴訟前裁き処

 翌日、波姫が政務庁舎に赴くと、ニコニコ顔の文官に出迎えられた。


「さあ、波姫様。ここに時が作った、それぞれの庄から寄せられた書類の要約がございます。これをお読みになって、御裁断をお願いいたします」


 文官から差し出された一枚の紙を見ながら、波姫は後ろに控えていた時姫に聞いた。


「時、あんた、たった一日であの書類読み込んだの? だって昨日、お茶会から帰ってからも、わたしの世話をしてくれていたじゃない。いつ読んだの?」


「恐れながら、文官様にもご協力いただいたおかげで、波姫様がお茶会に出かけている間に読み込むことが出来ました。それより要約が波姫様のお気に召すか不安です。ご一読ください」


 波姫は、時姫が作成した要約を読む。


「これ、とっても分かり易いわ。要は、『山森ノ庄』の土地を、『楠ノ庄』がいちゃもんつけて横取りしようってことね」


「はい、『山森ノ庄』は先祖伝来の土地であることを太古の歴史から述べたため、膨大な量の書類となり、『楠ノ庄』は、屁理屈を練りすぎて膨大な書類の量となったようです」


 時姫の返答に、波姫は考えるまでもないと要約の紙を置いた。


「じゃあ、『山森ノ庄』の勝訴で決まりね。簡単よ」


 そうあっけらかんと言う波姫に、時姫が言う。


「そこでひとつ問題がございます、波姫様」


「何? 何かまだあるの?」


「今回の訴訟にあたり、波姫様への寄進が、『山森ノ庄』は百万神銭、『楠ノ庄』は三千五百万神銭でございます」


「……あら。それは重要なことね」


 はたと、波姫の動きが止まる。


「そこで、こうされてはいかがでしょう。庄境で揉めている土地のうち、十分の一を『楠ノ庄』のものとして認めてやるのです。『楠ノ庄』としては、もともと全く自分達のものとして認められる可能性のない土地を、波姫様のお力で十分の一は手に入ったとして納得するでしょう。『山森ノ庄』は、ほとんど自分達の言い分が通ったとして納得することでしょう」


「……いい、すごくいいわ、それ」


「では、波姫様、御裁断をお願いします」


「では、裁断は、争いの土地の十分の一を『楠ノ庄』、十分の九を『山森ノ庄』とする」


 文官が差し出した紙に、波姫が自分の言った言葉を筆で書き記す。


「では、裁断終わり! じゃあお茶会に行こうかしら!」


 文官が苦い顔をして奥の机に積まれた書類の山を波姫に指し示す。


「波姫様、本日は訴訟が三件ございます。ぜひあの書類に目をお通しください」


「げっ! と、時! あんた前裁きしておいてよ! もう館の雑用なんてやらなくていいから!」


「かしこまりました。波姫様の御期待に沿えるよう、微力ながら頑張ります」


「よろしくね、時。じゃあ、わたし出かけてくるから!」


 そう言って部屋を出ていく波姫を文官のおばあさんは止めることはしない。


「時、お前が来てくれて本当に助かる。波姫様に一から書類を呼んでいただいても、いまひとつ理解して頂けず、困っておったのじゃ。お前の要約なら波姫様も容易に判断できるようじゃ。頼むぞ、時、今回は三つの案件があるが大丈夫か?」


「身に余ることながら、波姫様のため、頑張ります」


 そう言って、時姫は文官に頭を下げた。


 この日以来、波姫の政務は、実質的に時姫が執り行うようになった。




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