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ばあちゃんの遺品が聖剣だった!  作者: 渓夏 酔月


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16/22

16.六本木

 六本木の『北山リゾート』の本社ビルは、ガラス張りの高層ビルだった。


 その一階ロビーの受付で、スーツ姿の多比人は取次をお願いしていた。


「数馬多比人と申します。北山社長と本日十時にお会いする約束になっているのですが」


 受付嬢は、社長に面会を申し込んだ変な三人組を怪訝な目で見ていた。どう見ても社長に面会する人物には見えない。安物スーツ姿の多比人と、その後ろに控える安物のワンピースを着ているが飛び切り美しい若い女性、それにこの鬱陶しい少女だ。


「おうおう、こちとら忙しいんだ! 早く通しやがれ!」


 そう啖呵を切った少女は、変なピタッとした黒いスカートをはいているが、どうやらスーツを着ているつもりらしい。


「え~と、こちら様は数馬様とどのようなご関係で……」


「申し遅れました。わたくし、こういう者です」


 急に口調が改まった楓がドヤ顔で渡したのは、昨夜作った手書きの名刺だった。


『主様の秘書 霧降(きりふり) 楓』


「は、はあ~?」


 受付嬢が困惑しながら楓から名刺を受け取ると、秘書課から多比人達を三十二階の社長室まで案内するようにと返答が来た。


 社長室直通のエレベーターに多比人達を案内しながら、受付嬢は自分の社長の交友関係の幅広さに改めて驚いていた。


「耳が、耳がやられる~」


 初めて乗るエレベーターに、楓が耳が痛いと騒ぐ。雪も顔が引きつっている。


「あくびをしなさい楓、雪もあくびをすると耳が痛いの治るよ」


 多比人にそう言われ、一生懸命あくびをする二人を見ながら、受付嬢はドン引きしていた。


 三十二階のエレベーターの扉が開くと、テレビで見た北山社長の美人秘書が待ち構えていた。


「遠い所、ようこそおいでくださいました。北山の秘書、久禮(くれい)と申します」


「わ、わたしは主の秘書の霧降楓だ。北山様のもとに案内してくれたまえ」


 あくびで開いた口を隠して楓がふんぞり返ってそう言った。


「こちらへどうぞ」


 楓の言動に動揺することなく、久禮と名乗った秘書は、社長室へと三人を案内した。


「やあ。遠い所よく来てくれたね。同じ防人に会えてとっても嬉しいよ。しかも美しい奥様とかわいらしいシノビちゃんもいっしょに。さあ、どうぞどうそ、こちらに腰かけて」


 北山社長はテレビで見ていた以上にイケメンで、爽やかだった。年は多比人と同じか、少し上くらいだろうか。


「ちょうどイギリスからいい紅茶が届いたのだけど、みんなそれでいいかな?」


「「「はい!」」」


「良かった! じゃあ久禮、頼むよ」


 体が沈んでしまいそうになるようなふかふかのソファーに座り、今まで飲んでいた紅茶は何だったのかと思えるほど、香りの良い紅茶を三人はごちそうになった。


 久禮が押してきた小さな台には、色とりどりの美味しそうなケーキが乗っており、好きなものを選ばせてくれた。


「はわわ~。北山様、わたしこんなに美味しいもの、生まれて初めて食べました。幸せです~」


 楓がうっとりとそう言った。


「気に入ってもらえて何よりだよ。落ち着いたところで自己紹介させてもらうよ。私は北山(きたやま)桜乃(さくらの)。ご存じの通り、北ノ庄の防人さ。こっちは僕のシノビの久禮(くれい)静代(しづよ)。下界では秘書をやってもらっている僕の大切なパートナーさ」


「改めまして。北山様のシノビ、久禮静代と申します。」


 そう言って久禮は北山のイスの後ろに立って頭を下げる。


「僕は数馬多比人。一応、東ノ庄の防人ということになっています。こちらは東ノ庄の茅原野(かやはらの)家の次女で、僕の婚約者の雪です。そしてこの娘は僕のシノビ、霧降楓です。よろしくお願いします」


 多比人が頭を下げると、雪と楓が一緒に頭を下げる。


「いや~、嬉しいよ。生まれて初めて自分以外の防人に会ったよ。防人って意外に孤独な役柄だからね、同じ境遇の人がいるって心強いよ。しかもこんな綺麗な婚約者まで紹介してもらえて嬉しいなあ」


 北山が朗らかに笑う。この男の笑顔には、人を安心させる何かがあるようだ。




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