152話 帰還
「予と一緒に城へ戻る様に命じる。カーポの特別休暇は終わりだ。これからの業務は後程辞令があるのでそれ迄自宅待機を命ずる」
エゼルラッドのいきなりの命令に、カーポも躊躇した。
(命令とはいえ、いくら何でもこれから城へ行くとなると荷物はどうする?)
カーポは「はい」と返事をしたものの、顎に手をやり考え込んだ。
その姿を見たソフィアはカーポの後ろから肩をポンポンと叩いた。
「カーポさん、命令とは言えいきなりの引っ越し困っているでしょ?大丈夫。荷物なら任せて。マサトの魔法のカバンで全て持っていくことが出来るから」
ソフィアの言葉を聞いたカーポは苦笑した。
「どうしても、このまま一緒に行かなくちゃあいけないみたいだな」
◇ ◇ ◇
カーポを含め、皆が馬車に乗り込み帰路へ向かって進みだした時ソフィアはマサトに語りかけた。
「マサト、外を見て」
マサトが車窓から外を見てみると、何やら文字が現れ消えていく。
「あれ何?」
「このゲームのエンディングよ。テロップが流れているの」
「え?まだ魔王とか倒していないんだけど?」
「このゲームのストーリーは、王国を助けて王女の恋が実るまでの様ね。ほら、テロップが止まったわ『to be continued next 竜討伐の物語2』って文字が浮かんでそのままよ」
「成程、続きは別のソフトを用意しなくちゃいけないんだね」
少しやり残した感があるものの、取り敢えずエンディングを迎えることが出来たマサトは安堵の表情を浮かべていたが、ソフィアの顔は険しかった。
「ねえ、マサト。今迄有難う。マサトと一緒に『竜討伐の物語2』をやりたいのはやまやまなのだけど、『ワープ』や色々な魔法を手に入れることが出来たので私は自分の国へ帰るわ、国を救わなくちゃいけないの」
「判った。僕も一緒にソフィアの国を救い行くよ」
やる気満々のマサトに対してソフィアは黙って首を横に振った。
「だめ、あなたとはここでお別れよ。今迄有難う。あなたはまだ子供、もっともっと現実の世界で学ばないといけない事が沢山ある」
実の所、ソフィアはラシアンの軍勢と戦うのは様々な魔法を手に入れた今に於いても、かなりの危険だという事を認識している。
マサトが参戦してくれると心強いが、これからの彼の人生を潰してしまう可能性もある。
「これは私からのプレゼント」
そう言ってソフィアはマサトに指輪を渡した。
「こ、これは?婚約指輪?」
顔を真っ赤にして動揺するマサトの頭をソフィアはペシッとはたいた。
「馬鹿ねえ、違うわよ。その指輪には魔法が込められているの。それをはめると『ファンタジックワールド』の魔法が使えるわよ。でも『リワインドタイマー』はないから、冒険は決まった時間で頑張ってね」
「本当に行ってしまうんだね…」
「ええ、私を待っている人達がいるの…」
「そうだ、前にソフィアが言っていたでしょ?シャーロットワールドも具現化されている空間だって」
「そうね、シャーロットワールドは具現化された世界だから、このゲームの中の世界と近いものがあるわね」
「じゃあ、ソフィアと一緒ならティアもこのまま人形に戻らないんだね?」
「そうだけど…」
「ティア、ソフィアと一緒に行ってあげて。ティアの素晴らしい魔法はきっとソフィアの役に立つ。少し寂しけど、ソフィアの国を救う方が大切だから」
マサトにとってティア(木の人形)は大切な人から貰った思い出の品で大切な宝物だ。それにここで一緒に旅をして更に愛着がわいている。できればずっと傍にいて欲しい。
だが、優先したいのはソフィアの未来。
寂しさを押し殺していると、ティアはマサトを抱きしめた。
「マサトさん、有難う。マサトさんが言わなければ私がお願いをしていましたよ。私も、私に心をくれたソフィアさんを助けてあげたい」
ソフィアもティアを背中から抱きしめた。その瞳に涙を浮かべながら
「有難う、ティア。マサト、必ずティアを連れて戻るからね」
「うん。絶対だよ。それと、僕もこの指輪を使ってもっともっと強くなっておくから困った時には何時でも呼びに来ていいからね…」
その言葉を聞いてソフィアは笑顔で「うん、期待しておく」と言った。
そして、エンディングの余韻に浸った後、ソフィアはゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、このままティアと『ワープ(移動魔法)』でシャーロットワールドに向かいます。私達が去った後、直ぐにマサトは現実の世界に戻されるでしょう。だから、一旦ここでサヨナラ。元気でねマサト」
「うん。幸せを取り戻してきて。今度はゲームじゃないものね」
ソフィアはティアと手を繋ぎ、ゆっくりと頷いた後、『ワープ(移動魔法)』を唱えた。
ソフィア達がいなくなるのとほぼ同時にマサトはいつも通りの現実の世界に戻された。
いつもと違う所はマサトの手にはソフィアから貰った指輪がはめられていた事と、いつもの場所にティアの人形が無くなっている事、そしてソフィアも居ない事だ。
静まり返った部屋の中で、唯一流れている音はテレビから流れる『竜討伐の物語』のエンディング曲だけ。
マサトは放心状態でエンドレスに流れる音楽を聞き流していたが、ようやく現実に目を向けようという気持ちになれた。
ソフィアは無事シャーロットワールドを救えているだろうか…
僕も頑張らないとな…
手にした指輪を見つめ、この指輪がある限りソフィアとの糸は繋がっている。再びソフィア達と会える事を自分に言い聞かせた。
これでこの物語の ~竜討伐の物語 編~は完結です。
続編の構想はありますが、まだ一文字も活字にしていませんので、いつ投稿できるかは不明です。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。




