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ソフィアのファンタジックワールド ~竜討伐の物語 編~  作者: 季山水晶
暮雲春樹 掬われる恋路

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151話 カーポの事 ②

 残念ながら手紙に書いてあった女性を連れてくる事は出来なかったが、盗賊を退治し村を救うことは出来たらしい。とんでもないガキどもだ。


 そのガキどもが嬉しそうに手土産迄持ってきた。『ビックベアーの肝』、俺の大好物の高級食材。 酒の肴にもってこいの逸品だ。


 もう会う事は無いと思っていたが、お礼を言いに来るなんて可愛い所があるじゃないか。おまけに手土産迄持ってさ、ふふふ。嬉しそうな顔をしやがって


 そう言えばウイザードの嬢ちゃんの持っている杖はあれじゃあ水と火以外の魔法は殺されちまう。丁度いい機会だ、このお嬢ちゃんに使ってもらえるならあの宝石も本望だろう。儂もその方がいい。


「これは『ビックベアーの肝』のお礼だよ。きっとウイザードの嬢ちゃんの役にたつ、それと杖を武具屋に持っていきな。良いことがあるぜ」


 これでいい。儂の最後の想いでもこれで終わりだ。一番いい形で終われて良かったよ。


『黒蝶真珠』を受け取ったウイザードの嬢ちゃんは遠慮がちだったが、とても嬉しそうな顔だったな。


 この先、彼らの幸運を祈るとしよう。


 最近、街道を行き来する人がちらほら見られるようになってきた。彼らが盗賊を討伐した話は本当だったのだろう。


 それでもまだ街道は整備されていない為、時折モンスターに追われてこの木こり小屋へ飛び込んでくる冒険者や商人も時折見られた。迷惑な話だ。


 坊やたちがバルビアを救ってくれたのは良いが、この辺りもすっかり賑やかになっちまった。感傷に浸っている暇はねえな。


 ◇ ◇ ◇


 幾日か経った後、扉をやさしくノックする音がした。丁度、脚立を治している時だ。


(うるさいな。また、どこぞの冒険者が『休ませてほしい』のなんだの言いに来たのだろう、今は忙しいんだ)


 カーボは再び脚立を治し始めた。


 今度はもう少し強く扉がノックされた。


(忙しいって言っているだろう、誰だ、一体。誰も出なかったのなら大人しく帰りやがれ、どんな奴か面を見てやる)


 扉ののぞき窓を開けて外を見ると、立っているのは女性、それもなんて服装だ、え、この服は…思わず手に持っていた脚立を落とし、再び修理が必要なものとなる。


(お、オリビアじゃないか…どうしてこんな所へ…)


 扉を開けると本当にオリビアが立っていた。声を出そうにも言葉が出てこない。夢じゃないだろうか。


 なんと首に着けているアクセサリーは『黒蝶真珠』のネックレスだ。


(やっと、思い出を手放したと思えば、オリビアがそれを付けて儂の前に現れるのか…)


 オリビアの脇からひょっこりウイザードの嬢ちゃんが顔を覗かせた。笑ってやがる。


(そういや、この子の名前は何て言ったっけな?まあ、適当でもいいか)


 適当なカーポの言葉にソフィアはむくれた表情


(この娘がいるという事は、もしかして儂があげた『黒蝶真珠』なのか、なんてこった。結局彼女が受け取るという筋書きが出来上がっていたと言う訳か)


(お嬢ちゃんには参ったよ)


 オリビアは昔と変わらず今でも美しかった。思わず見とれてしまったがふと後ろを見ると他にも人が立っていた。


「お、おいおい。こんな山の中に大勢やって来ていったいこの偏屈な木こりに何をさせようって言うんだい」


(後ろに立っている男性は誰だ、その横にいるのは剣をあげた坊やだって判るが…)


 その男性はカーポに近づき挨拶をした。


「カーポさん、初めまして。私はオリビアの兄でエゼルラッドです」


(エゼルラッド?何だか聞いたことがあるぞ。オリビアの兄?国王陛下じゃないか!)


(どういう事だ?オリビアとの付き合いを無かったものにしてくれとか、そんな話か?それならとうに終わっているから安心すればいいさ)


「私は可愛い妹が好きになった相手に会いに来ただけですよ」


(意味が判らん。儂と付き合えばオリビアは勘当されるんじゃあなかったのかい、取り敢えず否定だ)


「それなら、それは儂じゃねえです。王女様が好きになった男性は別の方じゃあないですかい?」


 カーポは否定したものの、エゼルラッドは「あなたに間違いがない」とか、「オリビアの気持ちはどうなのか」とかしつこく絡んでくる。


(何を言われようが、今更どうこう出来るものでもねえだろうが、大切な妹を勘当させたいのか?)


 そんなやり取りをしていると、ソフィアの笑っていた顔が鬼の形相に変わっていく。


(おいおい、お嬢ちゃん何を怒っているんだ?何事も無かったかのようにする事が一番良い解決策だろうが…)


「ちょっとカーポさん!いい加減にしなさい。オリビア様が若い頃の思い出の服を引っ張り出して、勇気を出してこの山奥まで会いに来たのよ。女に恥をかかせるんじゃないわよ」


 …


 確かにそうだ。儂はオリビアの気持ちを何も考えていなかった。お嬢ちゃんの言う通りだ。わざわざ昔の服を引っ張り出してきて、あの日の約束の続きとでも言いたいのだな。


 最後に会った時に大臣の話を聞いて、儂は城を出た。オリビアには何も言わずに。オリビアはいつもの所で儂を待っていて、来ないから迎えに来たという事か…


「オリビア、その服を着てここに来たという事は、何も変わっていないと言いたいのか?」


 オリビア…なんて顔をしているんだ。判ったよ。お互いが納得するまでゆっくりと話し合おう。



いつも読んで下さりありがとうございます。

次の投稿は3日後くらいです。

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