レポート48 BDMの伝言
本屋に行って文庫の棚を見るのが大好きである。
それでよく思うのが、昔とずいぶん作家の顔触れが変わったなということだ。ぼくが中学生や高校生のころ、本屋の棚のかなりの部分を占めていたのが、オジサンのミステリー作家たちだった。例えば、
大藪春彦、梶山季之、黒岩重吾、斎藤栄、笹沢佐保、佐野洋、島田一男、清水一行、志茂田景樹、西村寿行、和久俊三、等々(敬称略)。
ふとこれらの作家の作品を開きたくなって本屋に行き、一冊も見つからないと、とても寂しくなる。かつてのぼくは、彼らオジサン作家の文章を大人に感じ、憧れをもって仰ぎ見ていたのだ。
今や古本屋でも、彼らの本は多くない。タイムマシンで昔の本屋に行きたいくらいだ。
「横ウーマンとやら」
逆さ男マンが、額の濡れた唇をぬぐって言った。
「バイオ博士マンの居場所について、なにか情報はないか?」
「噂だけど」
横ウーマンが、向かって右側の顎に手を当てて、横目遣いで逆さ男マンを見て言った。
「このデパートには、よく来ていたらしいの。わたしの兄は、地下道で見かけたんだって。残念ながら、兄は昨日逮捕されてしまったけど」
「地下道に隠れているのか?」
「いなかったわ。秘密の通路でもあれば別だけど」
「探してみよう。でもその前に、武器の調達だ」
みんなでエレベーターのほうに向かった。と思ったら、アドバイ爺がいない。
「待ってください。アドバイ爺を連れてきます」
ゲームコーナーに戻ると、アドバイ爺は、ガチャガチャのカプセルを次から次へと開けていた。
「あのー、今はそれどころじゃないんですけど。状況わかってます?」
「知っとるわい! おぬしの投稿は毎晩読んどるからな。ちなみにブックマークが1件増えたと喜んどったが、あれわしだから」
ガックリ力が抜けた。
「美少女のフィギュアを探しとるんじゃが、キモいバイオ生物のフィギュアしかなくての。ユメオ殿も一緒に探してくれんか?」
「あとにしましょう。みんなを待たせてますから」
「あともうちょっと。これが最後……うん? なんじゃ、カプセルにこんな紙が入ってたぞ」
アドバイ爺が差し出した紙を受けとって、広げてみた。するとこんな文章が書いてあった。
《映画館で待っている。BDM》
「なんでしょうね。いちおう逆さ男マンに見せてみます」
エレベーターのところに戻って、紙を渡した。すると逆さ男マンはおおっと声をあげ、
「BDMとは、バイオ、ドクター、マンの頭文字だ。つまりバイオ博士マンは、映画館にいるのだ!」
「罠じゃないですか?」
「いや、バイオ博士マンは困ってるんだ。誰かにバイオ刑事マンの暴走を止めてもらおうと必死だ。だから、こんなふうに、きっとあちこちに手がかりをばら撒いておいたんだろう」
「でもこれだけじゃ、どの映画館かわかりませんね」
「この街に映画館は1つしかない。このデパートの10階だ」
ということで、まずは9階で武器を調達し、それから10階の映画館に行くことになった。
「どれでも好きなのをとれ。どうせ誰もいないんだから、じゃんじゃん試し撃ちしておけよ」
9階の銃砲店は、品揃えが充実していた。まるでゲームの終盤に出てくる店のように。
「あ、これかっこいい」
ぼくはリボルバーを選んだ。銃身が銀色に輝いていて、手にずっしりと重い。
「コルトパイソンか。小僧、いいのをとったな。ちなみに握りのところに♾のマークがあるのは、弾が無限に出るっていう意味だ。そら、あっちの階段に向かって撃ってみろ」
「はい!」
ぼくはみんなに背を向けて、腰を落として撃った。
ズガン!
反動で、腕が跳ねあがった。弾は階段を大きく逸れて、天井のエアコンに穴をあけた。
「練習しろ! そんなへっぴり腰じゃ、連れてかんぞ!」
逆さ男マンに一喝され、ズガンズガン撃った。すると次第に階段に当たるようになった。
「わたしにもやらせて!」
フラはライフルを選んで、ダガンダガン撃った。1回だけ狙いが逸れて、横ウーマンのすれすれを弾が通過したときは、ヒヤッとした。
「うん、かなり正確に撃てるようになったわ。このウィンチェスター気に入っちゃった」
「フラ、アクション映画のヒロインみたい」
「わしはコレじゃ!」
アドバイ爺がロケットランチャーを構えてドゴーンと撃った。ぼくらはみんな、衝撃でひっくり返った。
「それはラスボス用だ。見ろ」
煙が消えてみると、階段は瓦礫になっていた。
「おれはマシンガンがあるからいいが、横ウーマンはどうする?」
「わたしはこれにするわ」
横ウーマンが、ガトリングガンをとって横に構えた。
「撃ちにくいわね」
そう言った横ウーマンの目が、キラッと光ったように見えた。
フラがさっと立ちあがり、エスカレーターのほうへ走った。
ガトリングガンが火を噴いた。
ピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュン!
フラが倒れた。
「フラ!!」
ぼくは頭が真っ白になって駆け寄った。抱き起こすと、フラは気絶していたが、どこも撃たれてはいなかった。
「ウフフ。これはバイオ博士マンが開発した、コトリングガンよ。オバサンなんて言うから、ちょっとからかってみただけ」
そう言って横ウーマンが笑うと、コトリングガンも小鳥のようにピュンピュンチュンチュン鳴いた。
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前回の後書きで、「一夢庵風流記」のキャラが強烈だったと書いた。
ではぼくにとっての、史上最高のキャラ小説はなにか?
ズバリ、「モンテ=クリスト伯」(アレクサンドル・デュマ著)です!
エドモン・ダンテス。最高です。
しびれます。濃いです。クセがたまらん。
これ以上のキャラは、もはや想像することさえ不可能です。




