↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第六章 いつもの日常?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/75

第六十二話 甘いクレープと、いつもの笑顔

 駅前に着くと、すぐに彩花の声が聞こえてきた。


「湊ー! こっちこっち!」


 大きく手を振る彩花の隣には、美咲、結衣、沙耶、そして莉奈がいた。


「お待たせ!」


「おっ、凛も本当に来たんだ!」


 彩花が凛を見て、ぱっと笑顔になる。


「うん。湊に誘われたから」


「よーし、今日は凛も一緒にクレープ会だね!」


「クレープ会って何……?」


 美咲が呆れたようにツッコむ。


「今、私が名付けた!」


「堂々と言わないでよ」


 みんなが笑い出す。


 その様子を見て、凛も少し戸惑ったあと、ふっと笑った。


 よかった。


 凛がみんなの中に自然に入ってくれたことが、私は嬉しかった。


「それで、湊は何にする?」


 莉奈がメニューを差し出してくれた。


「えーっと……チョコバナナもいいし、イチゴもいいし……」


「迷ってるね」


「だって、どれもおいしそうなんだもん!」


「じゃあ、私と半分こする?」


「……えっ?」


 莉奈は、ごく自然な顔で言った。


「私、イチゴにしようと思ってたから。湊がチョコバナナなら、少しずつ交換できるでしょ?」


「そ、それは……いいね!」


 変なところで声が裏返ってしまった。


 美咲がにやりと笑う。


「へえー。二人で半分こ?」


「な、何その言い方!」


「別にー?」


「絶対、何か思ってるでしょ!」


「思ってない、思ってない」


 美咲の顔には、思いっきり「思ってます」と書いてあった。


「湊、顔赤いよー!」


「彩花まで!」


 莉奈はくすくす笑っている。


 ……もう。


 みんな、楽しそうで何よりです。


     ◇


 それぞれクレープを買って、駅前の広場にあるベンチに座った。


 私はチョコバナナ、莉奈はイチゴ。


 そして、当然のように莉奈が自分のクレープを私のほうへ差し出した。


「はい、湊。一口どうぞ」


「えっ、いいの?」


「うん。約束したでしょ?」


「……じゃあ、いただきます」


 私はそっと一口食べた。


 イチゴの甘酸っぱさとクリームの甘さが、口いっぱいに広がる。


「おいしい……!」


「よかった」


 莉奈が嬉しそうに笑う。


「じゃあ、私も湊のを一口もらっていい?」


「もちろん!」


 私はチョコバナナのクレープを差し出した。


 莉奈が一口食べて、目を細める。


「うん、おいしいね」


「でしょ?」


 ただクレープを交換しただけ。


 それだけなのに、なぜか胸の奥がぽかぽかする。


 ……こういう時間、好きだな。


「ねえねえ、私たちも交換しようよ!」


 彩花が美咲に向かって言った。


「えー、彩花の絶対クリーム多いやつじゃん」


「いいじゃん! 美咲の抹茶も食べたい!」


「はいはい、一口だけね」


「やったー!」


 結衣と沙耶も、それぞれ少しずつクレープを交換している。


 凛はその光景を眺めながら、どこか懐かしそうに微笑んでいた。


「凛は交換しないの?」


 私が尋ねると、凛は少し驚いたように顔を上げた。


「え? ああ、私は……」


「よかったら、私のも食べる?」


 莉奈が自分のクレープを差し出した。


「イチゴだけど」


「……いいの?」


「もちろん!」


 凛は少し迷ってから、一口だけ食べた。


「……おいしい」


「でしょー!」


 莉奈が嬉しそうに笑う。


 凛はクレープを見つめながら、ぽつりと言った。


「こういうの、久しぶりかも」


「こういうのって?」


 結衣が優しく尋ねる。


「友達と、何でもないことで笑う時間」


 凛は照れくさそうに笑った。


「最近、考え事ばっかりだったから」


「じゃあ、これからはいっぱい笑えばいいよ!」


 彩花が即答した。


「そうそう。難しいことは、クレープ食べてから考えればいいんだから」


 美咲も頷く。


「その理屈、初めて聞いたよ……」


 凛が笑う。


 その笑顔は、昨日までよりもずっと自然に見えた。


     ◇


 クレープを食べ終えたあと、私たちは駅ビルの雑貨屋さんを覗くことになった。


「見て見て! このキーホルダーかわいい!」


 彩花が手に取ったのは、小さな猫のキーホルダーだった。


「彩花って、猫好きだよね」


「かわいいものは全部好き!」


「それ、理由になってる?」


 美咲が笑う。


 店内には、動物のマスコットやアクセサリー、小さな文房具が並んでいた。


 私も棚を眺めていると、淡いピンク色の鈴がついたキーホルダーが目に入った。


「……あ」


 思わず足が止まる。


 形は違う。


 私の持っている鈴とは、何の関係もなさそうな普通の雑貨だ。


 それなのに、どうしてか気になってしまった。


「湊、それ気になるの?」


 莉奈が隣から覗き込んだ。


「うん。なんか、かわいいなって」


「ほんとだ。湊に似合いそう」


「えっ、そう?」


「うん。色もかわいいし」


 莉奈はキーホルダーを手に取って、私の鞄にそっと当てた。


「ほら、ぴったり」


「……莉奈がそう言うなら、買おうかな」


「ふふっ。私の意見で決めちゃっていいの?」


「い、いいの!」


 自分で言っておきながら、なんだか恥ずかしくなってしまった。


 莉奈はそんな私を見て、優しく笑った。


「じゃあ、私もお揃いにしようかな」


「……えっ!?」


「だめ?」


「だ、だめじゃないけど……!」


「よかった」


 莉奈は同じキーホルダーを手に取った。


 お揃い。


 その言葉が頭の中で何度も繰り返される。


 ただのキーホルダーなのに。


 どうしてこんなに嬉しいんだろう。


「二人とも、決まった?」


 沙耶がこちらへやってきた。


「うん。これにする!」


 私はキーホルダーを見せた。


「あっ、かわいい! 莉奈とお揃い?」


「そ、そうなの!」


「いいね。私も何かみんなでお揃いにできるもの、探そうかな」


 その言葉に、彩花がすぐに反応した。


「それなら全員分買おうよ!」


「全員分?」


「そう! 今日の記念!」


 結局、みんなで相談した結果、小さな星のチャームをそれぞれ色違いで買うことになった。


 莉奈は水色、私はピンク。


 美咲は紫、彩花は黄色、結衣は白、沙耶は緑。


 そして凛は、淡い青色を選んだ。


「……なんだか、いいね」


 凛がチャームを手のひらに乗せて呟いた。


「こういうの、好きかも」


「じゃあ、またみんなで買いに来ようよ!」


 彩花が笑顔で言う。


「今度は別のお店も見たい!」


「はいはい。次は計画してからね」


 美咲がそう言いながらも、どこか楽しそうだった。


 私はみんなの顔を見回した。


 莉奈も、沙耶も、結衣も、美咲も、彩花も、そして凛も。


 みんなが笑っている。


 私は、この時間を大切にしたい。


 鈴が何を示しているのか。


 神社の奥に何があるのか。


 まだ分からないことはあるけれど。


 それでも、今の私には、こうして一緒に笑える人たちがいる。


 それは、誰かに与えられたものじゃない。


 私たちが一緒に過ごして、少しずつ築いてきたものだ。


     ◇


 帰宅してから、私は買ったばかりのピンク色のキーホルダーを鞄につけた。


 その隣には、星のチャーム。


 揺らすたびに、小さく音が鳴る。


「……ふふっ」


 自然と笑みがこぼれた。


 それから、机の引き出しを開ける。


 中には、布袋に入れた不思議な鈴があった。


 私はしばらく眺めたあと、そっと引き出しを閉じた。


 今日は、もう考えなくていい。


 明日も学校がある。


 莉奈たちと話して、みんなで笑って。


 そんな当たり前の毎日を、これからも続けていきたい。


 そう思いながら、私はスマホを手に取った。


 莉奈からメッセージが届いていた。


『今日は楽しかったね! キーホルダー、大事にするね』


 私は笑顔で返信する。


『うん! 私も大事にする! また一緒にお出かけしようね』


 すぐに返事が来た。


『約束だよ!』


 私はその短い言葉を見つめて、そっとスマホを胸元に抱えた。


「……うん。約束」


 窓の外では、夕暮れの空がゆっくりと夜へ変わっていく。


 今日という一日が終わる。


 でも、明日もきっと、楽しいことが待っている。


 そんなふうに思えることが、今は何より嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。