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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第五章 私と神社

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第四十六話 鈴が繋いだ縁

 放課後。


 私は教室で帰る準備をしていた。


「湊ちゃん、帰ろー!」


「うん、今行く」


 莉奈ちゃんに返事をしてから。


 私は、ふと後ろを見る。


 そこには沙耶ちゃんがいた。


 一人で机の上を片付けている。


「……」


 昨日までなら。


 たぶん、声をかけることもなかったと思う。


 でも。


 今日は違った。


「沙耶ちゃん」


「……?」


 沙耶ちゃんが顔を上げる。


「一緒に帰らない?」


「え?」


「もし予定がなかったらだけど」


「……いいの?」


「うん」


 沙耶ちゃんは少し驚いた顔をして。


「……ありがとう」


 小さく笑った。


 すると。


 ――チリン。


「……また鳴った」


 私は鞄を見る。


 鈴が小さく揺れていた。


「湊ちゃん?」


「ううん、なんでもない」


 私は笑う。


 でも。


 昨日よりも、この鈴の意味が分かってきた気がした。


     ◇


 校門を出る。


 今日は四人ではなく、五人。


 莉奈ちゃん、私、沙耶ちゃん。


 少し後ろには美咲ちゃん、彩花ちゃん、結衣ちゃんもいる。


「ねえ、沙耶ちゃんって普段どこから帰ってるの?」


 彩花ちゃんが聞く。


「駅のほう」


「じゃあ途中まで一緒だ!」


「うん」


 彩花ちゃんは嬉しそうに笑う。


「じゃあ、明日からも一緒に帰ろうよ」


「え?」


 沙耶ちゃんが驚く。


「いいの?」


「もちろん!」


 美咲ちゃんも頷く。


「私たちも同じ方向だから」


「……ありがとう」


 沙耶ちゃんは少し照れたように笑った。


 私はその様子を見ていた。


 なんだか。


 昨日まで一人だった子が。


 今日はみんなと一緒に歩いている。


 それだけなのに。


 少し嬉しい。


「……」


 鞄の中を見る。


 ――チリン。


「やっぱり」


 私は小さく笑った。


     ◇


 駅前でみんなと別れたあと。


 私は莉奈ちゃんと二人になった。


「湊ちゃん」


「なに?」


「最近、なんか変わったよね」


「私が?」


「うん」


 莉奈ちゃんは歩きながら言う。


「前はさ、分からないことがあると、一人で考え込んでたじゃん」


「……そうだったかな」


「そうだよ」


 少し笑って。


「でも今は、自分から誰かに声をかけるようになった」


「……」


 私は今日のことを思い出す。


 沙耶ちゃんに声をかけた。


 みんなと一緒に帰った。


 ほんの小さなことだけど。


「……巫女さんのおかげかも」


「やっぱりその巫女さん、すごい人なんだね」


「うん」


「私も会ってみたいな」


「今度一緒に行こうよ」


「約束ね」


「うん」


 そのとき。


 ――チリン。


 鈴が鳴った。


「……」


 私は立ち止まる。


「どうしたの?」


「……今、鳴った」


「また?」


「うん」


 鞄から鈴を取り出す。


 すると。


 鈴は静かに揺れていた。


「……」


 でも。


 今までとは違う。


 鈴が向いている方向が。


 神社とは反対側だった。


「……え?」


「湊ちゃん?」


 私は鈴が示す方向を見る。


 そこには。


 駅へ続く道があるだけ。


「……何だろう」


 その瞬間。


 スマホが震えた。


「誰から?」


 莉奈ちゃんが覗き込む。


「分からない」


 画面を見る。


 メッセージが一件。


 送り主は。


 ――『神社』


「……え?」


 そんな名前の登録はない。


 なのに。


 確かに表示されている。


 私はメッセージを開いた。


『今日、あなたが繋いだ縁は――』


 そこまで読んだところで。


 文章が消えた。


「……え?」


「どうしたの?」


「今、メッセージが……」


 画面には何も残っていない。


 莉奈ちゃんが不思議そうに私を見る。


「大丈夫?」


「うん……」


 私は鈴を握る。


 ――チリン。


 小さな音が響いた。


 そして。


 その瞬間。


 なぜか分かった。


 今日の出来事は。


 ただの偶然じゃない。


 誰かと出会って。


 誰かと話して。


 誰かとの距離が少し近くなった。


 それ自体が。


 この神社にとっては、大切なことなのかもしれない。


「……明日、巫女さんに聞いてみよう」


「うん」


 莉奈ちゃんが笑う。


「私も一緒に聞く」


「ありがとう」


 二人で歩き出す。


 その後ろで。


 誰もいないはずの道から。


 小さな鈴の音が聞こえた。


 ――チリン。


 まるで。


 次の縁を知らせるように。


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