第四十五話 私が繋ぐ縁
次の日。
私は昨日の巫女さんの言葉を考えながら、学校へ向かっていた。
『次は、あなたが誰かの縁を繋ぐ番です』
「……縁を繋ぐって、どういうことなんだろう」
鈴を鞄の中に入れてある。
歩くたびに。
――チリン。
小さな音が聞こえる。
「……やっぱり不思議だな」
私は鈴を取り出して眺める。
普通の鈴にしか見えない。
でも。
昨日は莉奈ちゃんや、美咲ちゃん、彩花ちゃん、結衣ちゃんを思い浮かべるたびに鳴った。
「誰かの縁を繋ぐ……か」
そんなことを考えながら教室へ入る。
「湊ちゃん、おはよー!」
「おはよう、莉奈ちゃん」
「昨日は楽しかったね」
「うん」
莉奈ちゃんが笑う。
「また神社行こうね」
「もちろん」
そこへ。
「おはよう」
美咲ちゃんがやってきた。
「おはよう、美咲ちゃん」
「昨日はどうだった?」
「えっと……」
私は神社のことを話す。
すると。
「へえ……」
美咲ちゃんが少し興味深そうに聞いていた。
「不思議な神社なんだね」
「うん」
「私も行ってみたいかも」
「今度みんなで行ってみる?」
「……それもいいね」
彩花ちゃんと結衣ちゃんも会話に加わる。
「神社ってなんか楽しそう!」
「私も行ってみたい」
「じゃあ、みんなで行こうよ」
私は笑った。
――チリン。
「……?」
鞄の中から鈴の音がした。
「今、鳴った?」
莉奈ちゃんが聞く。
「うん」
私は鞄を見る。
でも。
さっきまでと違う。
鈴は一度だけ鳴った。
「なんだろう……」
◇
昼休み。
みんなで昼食を食べていると。
私はふと、教室の隅に目を向けた。
一人で昼食を食べている女の子がいた。
「……あの子」
最近、よく見かける。
いつも一人でいる。
誰かと話しているところを、ほとんど見たことがない。
「どうしたの?」
彩花ちゃんが聞いてくる。
「ううん……」
私はその子を見る。
そのとき。
――チリン。
「……!」
鈴が鳴った。
「また?」
私は驚く。
さっきよりも、はっきり聞こえた。
「湊ちゃん、どうしたの?」
「……あの子の近くで鳴った」
「え?」
私は鞄を見る。
でも。
鈴はもう鳴らない。
「……」
もしかして。
巫女さんが言っていた、
『あなたが誰かの縁を繋ぐ番』
というのは。
この子のことなのだろうか。
「……ちょっと話してみようかな」
「湊ちゃん?」
「少し行ってくる」
私は立ち上がった。
◇
「……あの」
「……?」
女の子が顔を上げる。
「どうしたの?」
「急にごめんね」
私は少し緊張しながら笑った。
「いつも一人で食べてるなって思って」
「……うん」
「よかったら、一緒に食べない?」
女の子は驚いたような顔をした。
「……私と?」
「うん」
「いいの?」
「もちろん」
少し間があって。
「……ありがとう」
女の子が小さく笑った。
その瞬間。
――チリン。
「……!」
鈴が鳴った。
私は思わず鞄を見る。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
私は笑った。
「そういえば、名前聞いてなかったね」
「あ……」
女の子は少し恥ずかしそうに答えた。
「……沙耶」
「沙耶ちゃん?」
「うん」
「私は湊。よろしくね」
「知ってる」
「え?」
「……有名だから」
「私が?」
「うん」
沙耶ちゃんは少しだけ笑った。
「いつも、みんなと一緒にいるから」
「……そっか」
私は少し照れた。
そして。
後ろを見る。
莉奈ちゃんたちがこちらを見ている。
私は手を振る。
すると。
莉奈ちゃんたちも笑って手を振り返してくれた。
「……なんか、いいね」
沙耶ちゃんが呟く。
「え?」
「こういうの」
沙耶ちゃんは、少し嬉しそうだった。
私はその顔を見て。
昨日の巫女さんの言葉を思い出した。
『次は、あなたが誰かの縁を繋ぐ番です』
「……これが」
私は小さく呟く。
「縁を繋ぐってことなのかな」
「何か言った?」
「ううん。なんでもない」
私は笑った。
そして。
鞄の中から。
――チリン。
また鈴の音が聞こえた。
今度は。
どこか嬉しそうな音に聞こえた。




