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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第五章 私と神社

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第四十三話 人との縁

 放課後。


 私は莉奈ちゃんと二人で、あの神社へ向かっていた。


「ねえ、湊ちゃん」


「なに?」


「結局、どこの神社なの?」


「……私もよく分からない」


「え?」


「昨日、帰り道でたまたま見つけたんだ」


「たまたま?」


「うん」


 私は昨日のことを思い出す。


 いつもの帰り道を歩いていたはずなのに。


 気づいたら、見覚えのない場所にいた。


「でも……」


「でも?」


「なんか、呼ばれてるみたいな感じがしたんだよね」


「呼ばれてる?」


「うん」


 莉奈ちゃんは少し考えるように黙った。


「……なんか怖くない?」


「やっぱり?」


「うん」


「でも、巫女さんは悪い人じゃないと思う」


「巫女さん?」


「うん。すごくきれいな人で」


「へえ……」


 莉奈ちゃんが私を見る。


「……湊ちゃん、なんか楽しそう」


「え?」


「その巫女さんの話するとき」


「そ、そうかな?」


「うん」


 私は少し恥ずかしくなって、前を向いた。


「……まあ、ちょっと不思議で面白い人だから」


「ふーん」


 莉奈ちゃんが意味ありげに笑う。


「な、なに?」


「別にー?」


「絶対なんか考えてるでしょ」


「考えてないよー」


 そんな会話をしながら歩いていると。


「あ……」


 見覚えのある赤い鳥居が見えてきた。


「ここ」


「……ここ?」


 莉奈ちゃんが立ち止まる。


 でも。


「……何もないよ?」


「え?」


 目の前には、ただの住宅街が広がっていた。


「そんな……」


 私は周りを見渡す。


 昨日は確かにここにあった。


 赤い鳥居も。


 長い階段も。


 あの神社も。


「……おかしいな」


「湊ちゃん、本当にここ?」


「うん。絶対ここだよ」


 私は何度も周囲を見渡す。


 すると。


 ――チリン。


「……!」


 鞄の中から鈴の音が聞こえた。


「今の……」


「うん」


 莉奈ちゃんも聞こえたらしい。


 私は鞄を開ける。


 昨日の鈴が、小さく揺れていた。


「……」


 その瞬間。


 目の前の景色が少しだけ歪んだ。


「え……?」


 次の瞬間。


 そこには。


 赤い鳥居が立っていた。


「……えぇ!?」


 莉奈ちゃんが驚いて後ずさる。


「なにこれ!?」


「私も知らないよ!」


 昨日と同じ。


 長い階段。


 木々に囲まれた境内。


 そして、その先にある小さな社。


「……本当にあった」


 莉奈ちゃんが呟く。


「湊ちゃん……」


「うん」


「これ……普通の神社じゃないよね?」


「……たぶん」


 二人で顔を見合わせる。


 そして。


 私は鳥居をくぐった。


「行こう」


「うん」


 莉奈ちゃんも後ろからついてくる。


     ◇


 境内に入ると。


「……お待ちしておりました」


 聞き覚えのある声がした。


 巫女さんだった。


 昨日と同じ場所に立っている。


 でも。


 私たち二人を見ると。


 少しだけ驚いたような顔をした。


「……なるほど」


「こんにちは」


 私は頭を下げる。


「昨日の鈴、持ってきました」


「ええ。分かっています」


 巫女さんは私の鞄を見る。


 そして。


 莉奈ちゃんを見る。


「そして……」


「?」


「あなたが、湊さんの大切な方ですね」


「えっ?」


「えっ?」


 私と莉奈ちゃんの声が重なった。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 莉奈ちゃんが慌てる。


「大切な方って……!」


「違う意味ではありませんよ」


 巫女さんは穏やかに笑った。


「湊さんにとって、とても大切な方なのでしょう?」


「……」


 私は莉奈ちゃんを見る。


 幼なじみ。


 昔からずっと一緒にいる。


 困ったときには助けてくれる。


 そして。


「……うん」


 私は頷いた。


「莉奈ちゃんは、大切な友達です」


「湊ちゃん……」


 莉奈ちゃんが少し照れたように笑った。


 巫女さんは満足そうに頷く。


「そうですか」


「巫女さん」


「はい?」


「どうして莉奈ちゃんのことまで分かるんですか?」


「それは――」


 巫女さんは鈴を見る。


「その鈴が教えてくれたのです」


「鈴が?」


「ええ」


 私は手の中の鈴を見る。


 何の変哲もない小さな鈴。


「この鈴は、人の『縁』に反応します」


「縁……?」


「人と人とのつながりです」


 巫女さんは静かに続ける。


「強い縁がある場所では、鈴が鳴るのですよ」


 私は思わず鈴を見る。


「じゃあ……昨日、学校で鳴ったのも?」


「ええ」


「私たちがいたから?」


「それだけではありません」


「……?」


 巫女さんは莉奈ちゃんを見る。


「湊さんの周りには、強い縁を持つ方が多いようです」


「……!」


 私は思わず、みんなの顔を思い浮かべた。


 美咲ちゃん。


 彩花ちゃん。


 結衣ちゃん。


 そして。


 莉奈ちゃん。


「……私、そんなに人との縁が強いのかな」


「そうですね」


 巫女さんは微笑む。


「だからこそ、この神社があなたを呼んだのでしょう」


「……私を?」


「はい」


 巫女さんは静かに頷いた。


「ですが」


 一拍置いて。


「今日は、湊さんだけにお願いがあります」


「私だけ?」


「ええ」


 巫女さんは莉奈ちゃんを見る。


「あなたは、そこで見ていてください」


「分かりました」


 莉奈ちゃんが頷く。


「湊ちゃん、頑張ってね」


「うん」


 私は巫女さんの前に立った。


「それで……今日は何をするんですか?」


 巫女さんは、社の奥を指差した。


「今日は、お願いではありません」


「え?」


「湊さん自身に、選んでいただきます」


「選ぶ……?」


 巫女さんは小さく笑った。


「あなたがこれから、何を大切にするのか」


 私は言葉を失った。


「……どういう意味?」


「それは、これから分かります」


 ――チリン。


 鈴が鳴った。


 今までよりも。


 少しだけ大きな音だった。


 私はその音を聞きながら。


 なぜか、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じていた。


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