↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第三章 私の知らない昔の私

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/71

第二十五話 あの日、誰かに言われたこと

 ――昨日の夜。


 私は、昔の写真をずっと眺めていた。


 私。


 凛ちゃん。


 桜ちゃん。


 三人で笑っている。


 そして。


 思い出した。


 あの日。


 三人で「また会おう」と約束したあと。


 私は誰かと話していた。


「……誰だったんだろう」


 目を閉じる。


 すると。


 また、あの声が聞こえた。


『湊は、ずっと湊だよ』


「……」


 その声。


 やっぱり聞いたことがある。


 でも。


 思い出せない。


 ◇


 次の日。


「おはよー、湊ちゃん!」


「おはよ、莉奈ちゃん」


 いつものように莉奈ちゃんに挨拶をする。


 席に座ると。


「……」


 私はぼんやりと窓の外を見た。


「湊ちゃん?」


「ん?」


「どうしたの?」


「ううん。なんでもない」


 でも。


 頭の中では昨日の記憶がずっと残っている。


 あの日。


 私は誰かと話した。


 その人が。


 私に何かを言った。


 そして――。


「……」


 そこから先が思い出せない。


 ◇


 昼休み。


 いつもの五人でお弁当を食べている。


「湊ちゃん、これいる?」


 彩花ちゃんが卵焼きを差し出してくる。


「うん。ありがとう」


「はい!」


 私は卵焼きを受け取る。


 そのとき。


「……昔もこうだった」


 凛ちゃんが呟いた。


「また?」


「うん」


「私、そんなに卵焼き好きだったの?」


「好きだった」


「じゃあ、今と変わらないね」


「そうだね」


 凛ちゃんが少し笑う。


 私はその笑顔を見て。


 ふと思った。


「ねえ、凛ちゃん」


「何?」


「あの日のことなんだけど」


「……」


 凛ちゃんの表情が少し変わる。


「三人で約束したあと」


「うん」


「私、誰かと話してたよね?」


「……」


「その人って誰?」


 凛ちゃんはしばらく黙っていた。


 そして。


「……覚えてるんだ」


「少しだけ」


「そう」


 凛ちゃんは箸を置いた。


「でも」


「うん」


「その人については、まだ話せない」


「また?」


「ごめん」


「……」


 私は少しだけ頬を膨らませた。


「凛ちゃん、秘密多すぎ」


「そうかも」


 凛ちゃんが苦笑する。


「でも、一つだけ言える」


「何?」


「あの人は、湊にとって大切な人だった」


「……大切な人?」


「うん」


 その言葉を聞いた瞬間。


 胸の奥が少しだけざわついた。


「友達?」


「それだけじゃない」


「……え?」


 凛ちゃんはそれ以上言わなかった。


 ◇


 放課後。


 私は一人で教室に残っていた。


 机の中を整理していると。


「あれ?」


 一枚の紙が落ちた。


「……何これ?」


 見覚えのない紙。


 でも。


 そこには私の名前が書かれていた。


『湊へ』


「……」


 心臓が跳ねた。


 私はゆっくり紙を開く。


 そこには。


 昔の子どもの字で、短い文章が書かれていた。


『忘れても大丈夫』


「……」


 その下には。


『いつか思い出すから』


 そして。


 最後に。


『また会おうね』


「……っ」


 私は思わず紙を握りしめた。


 これ。


 私が書いたもの?


 それとも。


 誰かが私に書いたもの?


 分からない。


 でも。


 この文字には。


 なぜか見覚えがあった。


「……誰の字?」


 そのとき。


「湊」


「……!」


 後ろから声がした。


 振り返る。


 そこには。


「凛ちゃん……」


 凛ちゃんが立っていた。


 私の手にある紙を見ると。


 一瞬だけ驚いた顔をした。


「それ……」


「知ってるの?」


「……うん」


「誰が書いたの?」


 凛ちゃんは答えなかった。


「凛ちゃん」


「……」


「教えて」


 しばらく沈黙したあと。


 凛ちゃんは静かに言った。


「それは、湊が昔、自分で書いたものだよ」


「……私が?」


「うん」


 私は紙を見る。


「じゃあ、なんでこんなものを……」


「湊は昔」


 凛ちゃんがゆっくり話し始める。


「自分が忘れてしまうかもしれないって思ってた」


「……」


「だから、自分に向けて書いたんだと思う」


「何を忘れるの?」


「それは――」


 凛ちゃんが口を閉じる。


「……まだ言えない」


「また……」


 私は少しだけ俯いた。


 でも。


 今回は違った。


 私は紙を握りしめる。


「分かった」


「湊?」


「私、自分で思い出す」


 凛ちゃんが私を見る。


「昔の私が何を忘れたのか」


 そして。


「どうして、こんなものを残したのか」


 私は顔を上げた。


「全部、自分で知りたい」


 凛ちゃんは少し驚いたあと。


 小さく笑った。


「……うん」


 そのとき。


 廊下から声が聞こえた。


「湊ちゃんー?」


 莉奈ちゃんだった。


「あ、莉奈ちゃん」


 私は紙をしまう。


 でも。


 最後にもう一度だけ。


 紙を見た。


『忘れても大丈夫』


 その言葉が。


 今の私に向けられているような気がした。


 そして私はまだ知らなかった。


 この紙が。


 私が忘れていた「あの日」の記憶を取り戻すための、大きな手がかりになることを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。