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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第三章 私の知らない昔の私

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第二十話 私、ついに出会う!?

 ――昨日。


 凛ちゃんから聞いた話が、ずっと頭から離れなかった。


 私と凛ちゃんと。


 もう一人の友達。


 三人で遊んでいた記憶。


 そして。


 「また会おうね」


 その言葉。


「……誰なんだろう」


 私はベッドの上で呟いた。


 昔のことなのに。


 どうして私は、何も覚えていないんだろう。


 そもそも。


 私は何を忘れているんだろう。


「……分からない」


 考えても答えは出てこない。


 私は諦めて、布団に潜り込んだ。


 ◇


「おはよー、湊ちゃん!」


「おはよ、莉奈ちゃん」


 次の日。


 教室に入ると、いつものように莉奈ちゃんが声をかけてきた。


「なんか眠そう?」


「え?」


「昨日ちゃんと寝た?」


「……たぶん」


「たぶんって何よ」


 莉奈ちゃんが笑う。


「ちょっと考え事してただけ」


「また?」


「うん」


「凛ちゃんのこと?」


「……」


 図星だった。


「やっぱり」


「なんで分かるの?」


「湊ちゃん、分かりやすいから」


「そんなことないよ」


「あるよ」


 莉奈ちゃんは楽しそうに笑った。


「でも、無理に聞かないから」


「……ありがとう」


 その言葉に、少しだけ安心する。


 すると。


「おはよう」


 後ろから声がした。


「あ、凛ちゃん」


「おはよう、湊」


「おはよ」


 凛ちゃんは私の隣を通り過ぎる。


 そのとき。


「……思い出した?」


「え?」


「昨日のこと」


「まだ……」


「そう」


 凛ちゃんはそれだけ言って、自分の席へ向かった。


 その様子を。


 莉奈ちゃんがじっと見ていた。


「……」


「莉奈ちゃん?」


「ううん」


 莉奈ちゃんは笑った。


「なんでもないよ」


 でも。


 その笑顔が、少しだけ気になった。


 ◇


 昼休み。


 いつもの五人でお弁当を食べていた。


「湊ちゃん、これ食べる?」


 彩花ちゃんが卵焼きを差し出してくる。


「また卵焼き?」


「好きでしょ?」


「まあ……好きだけど」


「じゃあ、はい!」


「ありがとう」


 受け取ろうとしたとき。


「……相変わらずだね」


 凛ちゃんが呟いた。


「何が?」


「昔も、よくこうやって食べ物をもらってた」


「え?」


「覚えてない?」


「……うん」


 凛ちゃんは少し考えるように黙った。


「そっか」


「昔の私は、どんな感じだったの?」


「今とそんなに変わらないよ」


「ほんと?」


「うん」


 凛ちゃんは私を見る。


「ただ……」


「ただ?」


「昔の湊は、もう少し男の子っぽくしようとしてた」


「……」


 私は箸を止めた。


「男の子っぽく?」


「そう」


「どういうこと?」


「言葉遣いとか。仕草とか」


 凛ちゃんは淡々と話す。


「本当は今みたいな感じだったのに、無理して男の子らしくしてた」


「……」


 私は自分の手を見る。


「じゃあ、昔から……?」


「うん」


「女の子っぽかったの?」


「そういう言い方は少し違うかも」


 凛ちゃんは首を横に振った。


「ただ、湊は湊だったよ」


「……」


 その言葉を聞くと。


 なぜか少しだけ安心した。


「そっか」


 私は小さく笑った。


「なんか……変な感じ」


「何が?」


「今の私と、昔の私がつながってるみたいで」


「つながってるよ」


 凛ちゃんは即答した。


「ずっと」


「……」


 私は何も言えなかった。


 ◇


 放課後。


 みんなが帰る準備をしている中。


 私は凛ちゃんに声をかけた。


「凛ちゃん」


「何?」


「昨日の話なんだけど」


「うん」


「もう一人の友達って……」


 凛ちゃんがこちらを見る。


「誰なの?」


「……まだ言えない」


「どうして?」


「その人に会えば、湊が思い出すかもしれないから」


「……」


「だから」


 凛ちゃんは少しだけ目を伏せた。


「先に教えないほうがいいと思う」


「そっか……」


 私は少し残念だった。


 でも。


「じゃあ、その人は今どこにいるの?」


「この町にいる」


「え?」


 思わず聞き返した。


「この町に?」


「うん」


「じゃあ……」


 私は教室を見回した。


「学校にいるの?」


「それは分からない」


「そっか」


 凛ちゃんは鞄を持ち上げる。


「でも、近いうちに会うと思う」


「なんで?」


「そういう気がするから」


「……凛ちゃんって、たまに意味深なこと言うよね」


「そう?」


「うん」


 凛ちゃんは少しだけ笑った。


「じゃあ、ひとつだけ教える」


「何?」


「その子は、湊のことをよく知ってる」


「……」


「今の湊を見ても、きっと分かると思う」


「私だって?」


「うん」


 凛ちゃんは頷いた。


「今の姿でも」


 その言葉を聞いた瞬間。


 なぜか胸がざわついた。


 ◇


 帰り道。


 今日はみんなと別れて、一人で歩いていた。


「……昔の私を知ってる人」


 そんな人が、この町にいる。


 しかも。


 私が女の子になった今の姿を見ても、私だと分かるかもしれない。


「……誰なんだろう」


 私は空を見上げた。


 そのとき。


「……あれ?」


 前から歩いてくる人影が見えた。


 同じ制服。


 でも。


 顔はよく見えない。


 すれ違う直前。


 その人が、ふとこちらを見る。


「…………」


 目が合った。


 その瞬間。


 頭の奥が、ズキッとした。


「……っ」


 思わず立ち止まる。


 今。


 何かを思い出しかけた。


 小さな公園。


 夕方。


 私と凛ちゃん。


 そして――もう一人。


『また会おうね』


「……誰……?」


 振り返る。


 でも。


 その人はもう、角を曲がって見えなくなっていた。


 私はしばらく、その場から動けなかった。


「……今の人」


 知らないはずなのに。


 なぜか。


 初めて会った気がしなかった。


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