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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第三章 私の知らない昔の私

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第十四話 私、転校生と訳あり?

 次の日。


 朝のホームルーム。


 私はいつものように自分の席に座っていた。


「今日も眠い……」


「昨日遅くまで起きてたの?」


 隣の莉奈ちゃんが聞いてくる。


「ちょっとだけ」


「また考え事?」


「うん……まあ」


 昨日の帰り道を思い出す。


 莉奈ちゃんと手をつないで歩いたこと。


 あのときの感覚。


 そして――。


 私は本当に、百合の中にいるのかもしれない。


「……」


 考えていると。


 先生が教室に入ってきた。


「はい、みんな席について」


 教室が静かになる。


「今日はみんなに紹介したい人がいる」


「紹介?」


 クラスがざわつく。


「転校生だ」


「えっ、転校生!?」


 彩花ちゃんが小さな声を上げる。


 私は少し驚きながら、教室の前を見る。


「入ってきて」


 先生がそう言うと。


 ガラッ。


 扉が開いた。


 そこから、一人の女の子が入ってくる。


 肩くらいまでの黒髪。


 落ち着いた雰囲気。


 あまり表情を変えずに、教室を見渡している。


「白石凛です」


 女の子は短く自己紹介した。


「今日からこのクラスになりました。よろしくお願いします」


 その声を聞きながら、私は彼女を見る。


 ……なんだろう。


 初めて見るはずなのに。


 どこか引っかかる。


「白石の席は……」


 先生が教室を見渡す。


「湊の後ろが空いてるな。そこに座ってくれ」


「はい」


 凛ちゃんがこちらへ歩いてくる。


 そして。


 私の横を通り過ぎる瞬間。


「…………」


 凛ちゃんが立ち止まった。


「?」


 私は振り返る。


 すると。


 凛ちゃんと目が合った。


「…………湊?」


「え?」


 名前を呼ばれた。


 でも。


 その呼び方が妙に気になった。


「……私のこと、知ってるの?」


 そう聞くと。


 凛ちゃんは少しだけ目を細めた。


「……やっぱり」


「え?」


「いや」


 凛ちゃんは何事もなかったように自分の席へ向かう。


「なんでもない」


「……?」


 私は首を傾げる。


 なんだろう。


 今の反応。


 まるで。


 私のことを知っているみたいだった。


     ◇


 休み時間。


「湊ちゃん!」


 莉奈ちゃんがすぐにやってきた。


「さっきの子、知り合い?」


「ううん。私も初めて会った」


「でも名前呼ばれてたよね?」


「うん……」


 莉奈ちゃんが凛ちゃんを見る。


 彩花ちゃんも近づいてくる。


「なんか、ちょっと変じゃなかった?」


「彩花もそう思った?」


「うん」


 美咲ちゃんと結衣ちゃんもこちらを見る。


「……湊のこと、知ってるのかな」


「私もそう思う」


「でも、私には覚えがないんだよね」


 私は腕を組む。


 昔の知り合い?


 でも、あんな子がいた記憶はない。


「湊ちゃん」


 莉奈ちゃんが少し心配そうに言う。


「大丈夫?」


「うん」


 私は笑う。


「たぶん、何かの勘違いだよ」


 そう言ったものの。


 私の中には、妙な違和感が残っていた。


     ◇


 放課後。


 帰る準備をしていると。


「湊」


「……?」


 後ろから声をかけられた。


 振り返る。


 そこには凛ちゃんが立っていた。


「どうしたの?」


「少し聞きたいことがある」


「私に?」


「うん」


 凛ちゃんは少し黙ってから。


「……いつから?」


「え?」


「いつから、そんな感じになったの?」


「……?」


 意味が分からない。


「そんな感じって?」


 凛ちゃんは私を見る。


 そして。


「……女の子になったの」


「…………」


 息が止まった。


「……え?」


 どうして。


 どうして、この子が。


 そのことを知っているの?


「……凛ちゃん」


「何?」


「私のこと……知ってるの?」


 凛ちゃんは少しだけ目を逸らした。


「……知ってる」


 その一言だけだった。


 私は何も言えなかった。


 そして。


 初めて会ったはずの転校生が。


 私の知らない「私」を知っている。


 その事実だけが、頭から離れなかった。


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