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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第二章 百合を見る側だった私が、なぜか百合の中にいるんですけど?

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第十一話 私、あんがい楽しいかも?

 次の日。


「おはよー、湊ちゃん!」


「おはよ、莉奈ちゃん」


 いつものように挨拶をして、私は自分の席に座る。


 昨日のことを思い出していた。


 ――私、百合の中にいる……?


 昨日、家に帰ってからも何度か考えた。


 でも。


 よく考えてみれば、そんなわけがない。


 私たちはただの友達だ。


 一緒にお昼を食べて。


 一緒に帰って。


 たまに距離が近くなる。


 それだけ。


「……うん」


 私は一人で頷いた。


「何が『うん』なの?」


「え?」


 気づけば、莉奈ちゃんが私の隣に立っていた。


「さっきから一人で考え込んでたけど」


「なんでもないよ」


「ほんと?」


「ほんとほんと」


 私は笑ってごまかした。


 すると、莉奈ちゃんがじっと私を見る。


「……怪しい」


「怪しくないって」


「ふーん」


 莉奈ちゃんは少し笑った。


「まあ、いいけど」


     ◇


 昼休み。


 いつもの五人で机を囲んでいた。


「湊ちゃん、これ食べる?」


 彩花ちゃんが自分のお弁当を見せてくる。


「また?」


「だっておいしいよ?」


「じゃあ一個もらう」


「はい!」


 私は卵焼きを受け取った。


 その様子を見ていた美咲ちゃんが、


「……彩花、湊に甘すぎない?」


「えー? そうかな?」


「そうだと思う」


 結衣ちゃんも小さく頷く。


「……ちょっと分かる」


「え、結衣まで?」


 彩花ちゃんが笑う。


 私は三人の会話を聞きながら、お弁当を食べる。


 すると、莉奈ちゃんが突然言った。


「ねえ、湊ちゃん」


「ん?」


「昨日言ってたじゃん」


「昨日?」


「百合の話」


「……あ」


 私は箸を止めた。


「うん。言ったね」


「それでさ」


 莉奈ちゃんが私を見る。


「今の私たちって、どう見える?」


「え?」


「ほら」


 莉奈ちゃんが私たちを指差す。


「女の子五人でお昼食べてるでしょ?」


「まあ、そうだけど」


「しかも、みんな湊ちゃんの近くにいる」


「……」


 私は周りを見る。


 右には美咲ちゃん。


 左には彩花ちゃん。


 向かいには莉奈ちゃんと結衣ちゃん。


 確かに。


 最近、いつもこんな感じだ。


「それがどうしたの?」


「昨日の湊ちゃんの話を思い出しただけ」


「……」


 私は少し考える。


「でも、百合って女の子同士の恋愛とか、そういう話でしょ?」


「そうだね」


「私たちは友達だから、違うよ」


 そう答えると。


 莉奈ちゃんが少しだけ笑った。


「そっか」


「うん」


 私は安心してお弁当を食べようとする。


 そのとき。


「でも、湊ちゃん」


 美咲ちゃんが口を開いた。


「昨日、自分で言ってたよね」


「何を?」


「女の子同士が仲良くしてるのが好きって」


「うん」


「一緒に帰ったり、近くで話したり、手をつないだりするのも好きなんだよね?」


「……うん」


「じゃあ」


 美咲ちゃんが少しだけ首を傾げる。


「今の私たちって、湊が好きだったものに近くない?」


「…………」


 私は固まった。


 昨日、家で考えていたことと同じだった。


「……あ」


 思わず声が出る。


「やっぱり?」


 彩花ちゃんが笑う。


「私もそう思ってた!」


「彩花は黙ってて」


「なんで!?」


 みんなが笑う。


 でも私は笑えなかった。


 いや。


 正確には。


 笑っている場合じゃなかった。


「……待って」


 私は頭の中を整理する。


 私が昔好きだったもの。


 女の子同士が仲良くすること。


 近い距離で話すこと。


 一緒に帰ること。


 お互いを気にかけること。


 そして今。


 私は、その女の子たちと一緒にいる。


 しかも。


「…………私も女の子なんだよね」


 ぽつりと呟く。


「そうだよ?」


 結衣ちゃんが普通に答えた。


「いや、そうなんだけど……」


 なんというか。


 今まで気にしていなかったことが、急に気になってきた。


 私は昔、女の子同士の関係を外から見ていた。


 でも今は。


「……私が、その中にいる?」


 思わず口に出した。


「うん」


 莉奈ちゃんが即答した。


「……え?」


「だって、湊ちゃんも女の子じゃん」


「それはそうだけど……」


 なんだろう。


 その言葉を改めて聞くと、妙に意識してしまう。


「それに」


 彩花ちゃんが楽しそうに言った。


「湊ちゃん、最近すっごく女の子っぽいし」


「え?」


「髪とか仕草とか」


「……そう?」


「うん」


 美咲ちゃんも頷く。


「かなり自然になったと思う」


「結衣もそう思う?」


「……うん」


「そっか……」


 私は自分の髪に触れた。


 昔なら、こんなことを言われても絶対に信じられなかった。


 でも今は。


 鏡を見ると、そこにいるのは完全に女の子の姿をした私だ。


 そして。


 その私は、女の子たちと一緒に笑っている。


「…………」


 なんだか変な感じがした。


「湊ちゃん?」


「ううん」


 私は少しだけ笑った。


「なんか、不思議だなって」


「何が?」


「私が昔好きだったものを、今は自分がやってるんだなって」


 四人が顔を見合わせる。


 そして。


「……ふふ」


 莉奈ちゃんが笑った。


「何?」


「ううん」


 莉奈ちゃんは楽しそうに笑う。


「湊ちゃんらしいなって思って」


「どういう意味?」


「秘密」


「えー……」


 私は頬を膨らませる。


 すると、彩花ちゃんが笑い出した。


「ほら、それも!」


「何が?」


「今の顔」


「?」


「すっごく女の子っぽい」


「……もう」


 私は少し恥ずかしくなって、視線を逸らした。


 その瞬間。


 ふと気づいた。


 ――私。


 今、恥ずかしがってる。


 昔の私なら。


 こんなふうに女の子たちに囲まれていたら、きっと遠くから眺めていた。


 でも今は違う。


 私はこの場所にいて。


 みんなと笑っていて。


 そのことを、嫌だとは思っていない。


 むしろ。


「……楽しいかも」


「え?」


 四人が一斉にこちらを見る。


「何でもない!」


 私は慌ててお弁当に視線を戻した。


 ただ。


 胸の中には、ひとつだけ新しい疑問が残っていた。


 ――私がずっと好きだった「百合」って。


 もしかして。


 こんな感じなのかもしれない。


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