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百合好きな俺がTSしたのでこれからを楽しみたい。  作者: とみなが つき
第二章 百合を見る側だった私が、なぜか百合の中にいるんですけど?

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第十話 私、百合の中にいる?

 次の日の朝。


「湊ちゃん、おはよー!」


「おはよ、莉奈ちゃん」


 教室に入ると、いつものように莉奈ちゃんが声をかけてきた。


 私は鞄を机の横に置いて、自分の席に座る。


 すると。


「湊ちゃん、ちょっとじっとして」


「え?」


 莉奈ちゃんが私の髪に手を伸ばした。


「髪、少し跳ねてる」


「ほんと?」


「うん。ここ」


 そう言って、莉奈ちゃんが私の髪を整えてくれる。


「はい、これで大丈夫」


「ありがと」


 私は何気なくお礼を言った。


 でも。


 少し離れたところから、その様子を見ていた彩花ちゃんが口を開く。


「朝から仲良しだねー」


「幼なじみだからね」


 莉奈ちゃんが笑う。


「それなら私も!」


「え?」


 彩花ちゃんまで私のところへやってきた。


「湊ちゃん、今日のお昼一緒に食べよ!」


「いつも一緒じゃない?」


「そうだけど、今日は私の隣ね!」


「なんで?」


「なんとなく!」


 ……なんとなくって。


 最近、みんなこんな感じだ。


 前よりも距離が近い。


 最初は気のせいだと思っていた。


 でも、こうも続くとさすがに気になる。


「まあ、いいけど」


「やった!」


 彩花ちゃんが嬉しそうに笑った。


 その隣で、美咲ちゃんが小さくため息をつく。


「彩花、あまり湊を困らせないで」


「えー? 美咲も一緒にお昼食べたいでしょ?」


「……それは」


 美咲ちゃんが少しだけ私を見る。


「……そうだけど」


「ほら!」


 彩花ちゃんが笑った。


 結衣ちゃんもこちらへ近づいてくる。


「私も……一緒に食べたい」


「結衣ちゃんまで?」


「……だめ?」


「いや、だめじゃないけど」


 むしろ。


 どうして今日はこんなに集まってくるんだろう。


 そんなことを考えながら、私は席に座った。


     ◇


 昼休み。


「いただきます!」


 いつものように五人で昼食を食べる。


 すると、彩花ちゃんが自分のお弁当から卵焼きを一つ取った。


「湊ちゃん、これ食べる?」


「え、いいの?」


「うん!」


「じゃあ、もらう」


 私が受け取ろうとすると。


「はい、あーん」


「……え?」


 彩花ちゃんが卵焼きを箸で持ったまま、私の前に差し出していた。


「いや、自分で食べるから」


「えー」


「ほら、貸して」


 私は箸ごと受け取って、そのまま食べた。


「おいしい」


「でしょ?」


 彩花ちゃんが嬉しそうに笑う。


 ……なんだろう。


 この感じ。


 どこかで見たことがあるような。


「湊ちゃん?」


「ん?」


「どうしたの?」


「いや……なんでもない」


 私は首を振った。


 そして、ふと昨日のことを思い出す。


 ――百合。


 女の子同士が仲良くしているところを見るのが好き。


 近い距離で話したり。


 一緒に帰ったり。


 ちょっとしたことで笑い合ったり。


 そういう関係が好きだった。


 ……あれ?


 私は箸を止める。


「湊?」


 美咲ちゃんが不思議そうに私を見る。


「どうしたの?」


「……ううん」


 私は周りを見た。


 莉奈ちゃん。


 美咲ちゃん。


 彩花ちゃん。


 結衣ちゃん。


 そして私。


 五人で昼食を食べている。


 最近は、こうしてみんなが私の近くにいることが増えた。


 それだけなら、別におかしくない。


 友達なんだから。


 でも。


「……なんか、距離近くない?」


「え?」


 私が呟くと、四人が一斉にこちらを見る。


「そう?」


 莉奈ちゃんが首を傾げる。


「うん。なんというか……」


 私は少し考える。


「前よりみんな、私の近くにいる気がする」


 一瞬。


 四人の動きが止まった。


「……気のせいじゃない?」


 美咲ちゃんが答える。


「そうかな?」


「うん」


 結衣ちゃんも頷いた。


「……たぶん」


 彩花ちゃんは笑いながら、


「湊ちゃんと一緒にいるのが楽しいからじゃない?」


「それなら分かるけど……」


 私は首を傾げた。


「まあ、いっか」


 深く考えるのはやめた。


     ◇


 放課後。


「じゃあ、帰ろっか」


 私は鞄を持って立ち上がる。


 すると。


「湊ちゃん、一緒に帰ろ!」


 莉奈ちゃんがすぐに隣へ来た。


「うん」


 教室を出ようとすると、反対側から彩花ちゃんもやってくる。


「私も一緒!」


「え?」


「駅まで!」


 さらに。


「……私も」


 結衣ちゃんが私の制服の袖をちょこんとつまむ。


「結衣ちゃんも?」


「うん」


 最後に美咲ちゃんが少し遅れてやってきた。


「……私も一緒に帰っていい?」


「もちろん」


 こうして。


 結局、五人で帰ることになった。


「なんか、こうして帰るの久しぶりだね」


 莉奈ちゃんが言う。


「そうだね」


「最近、みんな予定が合わなかったから」


 私たちは並んで歩く。


 その途中。


 彩花ちゃんが私の腕を軽く引いた。


「湊ちゃん、こっち歩こ!」


「はいはい」


 すると今度は結衣ちゃんが私の袖をつまむ。


「……こっち」


「え?」


「こっちのほうが歩きやすいから」


「そう?」


 私は結衣ちゃんの隣へ移動する。


 すると。


「じゃあ私は湊ちゃんの反対側!」


 彩花ちゃんが反対側に来た。


「……私も」


 美咲ちゃんも隣に並ぶ。


「ちょっと、みんな近くない?」


 私が笑うと、莉奈ちゃんが前から振り返った。


「いいじゃん」


「まあ、いいけど」


 私はそのまま歩き続ける。


 そして。


 また、あの感覚があった。


 見覚えがある。


 この距離感。


 女の子同士が自然に近くにいて。


 一緒に歩いて。


 くだらないことで笑って。


 お互いのことを気にしている。


 私は、そういうのを見るのが好きだった。


 ……でも。


「…………」


 私は歩きながら、みんなを見る。


「どうしたの?」


 莉奈ちゃんが聞いてくる。


「ううん」


 私は少しだけ笑った。


「なんでもない」


 ただ。


 ひとつだけ。


 頭の中に、妙な考えが浮かんだ。


 ――これって。


 もしかして。


 私が昔から好きだったものに、ちょっと似てない?


     ◇


 その日の夜。


 私は部屋でベッドに寝転びながら、スマホの写真を眺めていた。


 そこには、今日撮った五人の写真がある。


「……仲いいなあ」


 自分でも、少し笑ってしまう。


 写真の中の私は、みんなと一緒に笑っていた。


 昔の私は。


 女の子同士が仲良くしているのを、少し離れたところから見ていた。


 それが好きだった。


 でも今は。


「……私も、その中にいるんだよね」


 ぽつりと呟く。


 そう考えると、なんだか不思議だった。


「…………」


 私はスマホを胸元に置く。


 そして、もう一度だけ写真を見る。


「……もしかして私」


 そこまで言って、私は止まった。


「……いや、まさかね」


 そう言って、私はスマホを伏せた。


 けれど。


 さっき浮かんだ考えだけは、なかなか頭から離れてくれなかった。


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