第30話 手繰り寄せる猫の手
「ええーーーー!本当にいいの〜!?」
トゥエンさんがくじ引きで当てた馬、トゥエンチャンズブロックとフレン、僕、そして馬主となったトゥエンさんと訪れたのは以前ミッケさん達と牛乳などを買いに来たグラン牧場。
「大丈夫です。うちは馬を飼うような場所がないので」
「ええ〜でも本当にいいのかい?」
「大丈夫だにゃ。うちには馬みたいなのがいっぱいいるからにゃ」
それは語弊があるな。
「じゃ遠慮なくうちでお世話しようかな。色々頑張ってもらうからねえ〜。いいお尻だこと〜」
「ヒヒン!」
やはりこの馬、人の言葉がわかるようだな。頭がいい。この牧場だってターフみたいなものだし、きっといい働きをしてくれるだろう。レースで活躍できなくてもいろんな方法でこのトゥエンチャンズブロックには優駿になってもらおう。
「ちなみに名前はトゥエンチャンズブロックだにゃ!」
「変な名前ね〜。あ。パパにも伝えないと。お家で待ってて。お茶でもしましょう!ぱぱ〜お馬ちゃんが来たよ〜!」
変な名前って言われてしまった。
それからおやつをいただいてから少し牧場のお手伝いをして夕食をいただくことになってしまった。
思っていた通り、この辺りは馬やロバなどが高価な値段で取引されるのだそうだ。この街には列車はないみたいだから輸送が大変なのだろう。生き物なら小回りもいいし。
この前お邪魔した時も餌や荷物を運ぶのに苦労しているようだったからこんな形で手助けができてよかった。トゥエンチャンブロックも必要とされている人のもとへ行った方が幸せだろうしここでなら愛されるだろう。
夕食を食べながらグランさんと話していた。
「いやあ。馬をくれるだけでなくまた手伝ってもらって悪いな」
「どうせ暇だったからにゃ。こうやってご飯貰えるだけでお釣りが来るってもんにゃ」
「夕食出したぐらいじゃ全然割に合わねえよ。あとで時間ある時にキエリスちゃん呼んでくれないか?また牛乳とか用意しておくから」
「本当ですか!?それは助かります!」
「うちにも馬はいてもみんな年老いてきてたから助かるよ。それに馬は集団で過ごす動物だからな。若い牡馬ならきっと可愛がられるさ」
「ガルニエで一頭だけ飼うのはうのはかわいそうですしね」
「もちろん一頭だけで飼っている奴もいるけど。ま、ここならいくら走っても文句を言う奴はいないからな」
そんな話をしながらグランさん一家と楽しい時間を過ごしてガルニエに帰った。なんだかんだでこの牧場とはご縁があるな。ミッケさんの料理も美味しいけどルミさんの手料理も最高だった。果物一年分よりも僕らとしてはいい思いをした気がする。
「絶対にまた来てくれよな〜!じゃないと直接ガルニエに色々置いていくからなー!!」
「わかりましたー!ありがとうございまーす!」
「俺って運がいいからにゃ〜。結果オーライって奴だったにゃ。美味い飯も次の飯の調達もできたしミッケとステラッチェにでかい顔ができるにゃ」
「乳製品なんていくらあってもいいからな!」
トゥエンさんも同じことを思ったらしい。僕らが当てたリンゴなどの果物はルミさんの手によってフルーツタルトになった。デザートまでいただいてしまってすっかり夜になってしまったが、月明かりが出ていて夜道も明るい。
「それにしても一等よく当たりましたね」
「ああ。でも実はあれ。どんなに回しても、前に回した時点で出る玉は決まってるのにゃ」
「え!そうなんですか!?」
「当てたのは俺だけど、そういう意味ではプレンツの運を俺が拾った形にゃ。ま、結局運であることには間違いにゃいが」
重ねて俺って運は結構いい方だからにゃ〜、とあくびをしながら話すトゥエンさん。膨れたフワフワのお腹を撫でている。
「そうだ。プレンツ。明日の特訓俺も観ていいかな」
「?いいよ。もちろん」
「特訓?プレンツお前特訓してなんか変わるのかにゃ?」
「い、一応」
確かに僕の魔法は魔法を消すだけ。今のままでも十分こなせているから側から見ればあまり意味がないように見えるのかもな。
「今は魔力量を増やすのと魔法を出し続ける特訓をしているんです」
「へ〜知らなかったにゃ。頑張るんだぞ。頑張って俺の給料をガンガン上げてくれにゃ」
僕の応援なのか、己の財布の応援なのかわからない。
「トゥエンさんも見ます?」
「いつやってるにゃ?」
「朝6時ぐらいですね」
「朝は飯の時間まで寝ることに決めてるにゃ」
こういうところはやはり猫のような気ままな性格のトゥエンさんだった。
ガルニエに戻りキエリスさんとすれ違った。
「あ、キエリスさん。明日時間があったらグランさんのところへ行ってもらえませんか?」
「いいけど。どうして?」
「いろいろくれるらしいにゃ」
「くれる?お金は払ったってこと?」
「馬をあげたお礼にゃ」
「馬?」




