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Stellacce Twinkle  作者: 橿原るり
第三幕 イビポランマラン編
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第24話 ラウラ嬢の長剣

改めて現状を言語化することはシンプルだけどとても整理ができる。色々試しながらというのも時と場合によってはアリかもしれないけどやはり今見える情報を一度羅列して一連の流れに沿って考えてみると思わぬ収穫がある。


 ラウラさんの場合はオンとオフ。0と100しか出せない。(ラウラさんからすれば0に等しい1ではあるだろうが)普通の人ならばその100すらも十分に思うがままに振舞うのは難しい。全力を出せるというのも才能のひとつでもある。よってセバスさんからの提案を端的に表すなら一旦ラウラさんを弱らせれば出力にムラがあろうが最大値に振られなくなるはず、ということだ。


 魔力量だけは一級品のラウラさんの場合は一度全力を出し尽くしてそこから引き算をしておく。その後に自分のコントロールがしやすい出力を図っていけばいい。


 シンプルが故に気が付かなかった。いや団長や他の人はもしかしたら気がついていた人もいたかもしれない。しかし提案しなかった。それは何故か。理論はシンプルが故に目を背けたい事実も残念ながら存在するからだ。


「つまり僕が全力のラウラさんの魔法を受け止めねばならないということですね。」


あれ?僕、声が震えてない?


「その通り。今までもいろんな方がラウラお嬢様の魔法の御指南をしていただきましたが、おそらくは皆が一度は考えて、その考えを放棄したであろう練習方法。今まさにプレンツ様の魔法の訓練も同時に行うという建前があってこそ。その思考を声に出せた次第であります」

「ひどい!」


つい大声で心の叫び声が出てしまった。

フレンのいっていた『遠くから見守っている』の意味はこういうことだったわけだ。多分みんな気づいてたな。許せん。


「素晴らしいですわ!早速試してみましょう!」

ノリノリのラウラさん。右腕を回して気合十分といった感じだ。なんかブオンブオンいってるよ。あの腕、実は五トンぐらいあるじゃないか。


 全力ダッシュをずっと続けられる人なんていない。それは団長やザーラさん、ニニギさんだってそうだろう。(多分)全力を出していれば五日ぐらい経てばさすがに出力が減っていってしまうだろう。でなければ人間じゃない。いや人間じゃないけども。

……めんどくさいなあの人たちの在り方!

 なんで内心の呟きでノリツッコミをしなくてはならないんだ!

 だめだ。あのひとたちは例外中の例外だから思考から外す。


———本人の意思に関係なく魔法の威力が減っていく。

 膨大な魔力量が身体に秘められていても消耗し続ければ、最終的に先ほどのセバスチャンさんの放った水鉄砲ほどの威力にだってなるだろう。


 しかしあまりにも。あまりにも負担が多い。ラウラさんというよりも僕の!

 僕の力が貧弱なのは確か。ラウラさんにとっても僕にとっても荒療治かもしれないな。別に病気ではないけども!


 命の危機が目の前に迫っているからなのか、ヤケクソなのかテンションが高いのが自分でも怖い。


「——わかりました。ラウラさんの全力を僕が受け止めます」

言ってしまった。しかしアヴェラルさんもいつか言っていた。男に生まれてきたからにはカッコつけてなんぼだと。

 この考えに同感も同調もする気はないんだけど、ラウラさんのような美人にやられるなら僕の人生も悪くはなかっただろう。

……思考がアヴェラルさんに似てきたような気がする。


「では早速始めましょう!行きますわよ〜」

「待って!ください!さすがに距離だけは取らせてください!」


* * * * * * *


ラウラさんのジェスチャーがギリギリ見えるほどまで距離を取った。それは半端な魔法なら届かせる気がないほど遠くまで。

 今まで受けてきたラウラさんの攻げ……魔法はあれでも本人からすれば可能な限り、使う魔力を絞っていた。それであれほどの威力、スピード、水量。恐ろしい他ない。


そして今から僕に向かってくる魔法はラウラさんの全力。恐ろしい他ない。しかしカッコつけて啖呵切ってきたので逃げられない。

 やっぱり万が一を考えていつでも飛べるようにしておこう。


「プレンツ〜そろそろ行きますわよ〜!」

ラウラさんが大きく腕を振って僕に合図をする。随分ラウラさんの声が小さく聞こえる。

 時は来たようだ。処刑台で首に縄をくくりつけられた気分だ。そんな体験はないけど。


「はーい!どうぞー!」


心はビビっているけどこれだけ離れているんだ。正直全部を受け止められるとは思っていない。ファーストインパクトを凌ぎつつ横に飛びながら逃げる。要はラウラさんの全力を削いでいけばいい。全部が全部付き合う必要はない。

 もちろんそれができるのがベストだけどザーラさんに教わった最悪の中の最悪を避けて行動するんだ。

 この場合の一番の最悪なケースは僕が死ぬことだ。これは避けなければならない。絶対に。試してみたら意外と昨日の訓練と威力変わらないじゃん、で済んだらそれはそれでいい。まずは相手の力量は見てからだ。

 うーむ。対応と対策を考える思考が完全に敵と対峙した時のそれだな。


「ラウラお嬢様あちらも準備ができたようです」

「ええ。私も頑張りますわ!それにしても全力を出すなんて本当に久々ですわ。寝てる時でさえもとても気を遣って過ごしてるんですから」

「お気持ちはわかります。触れるもの全てが破壊に繋がっていた悲しきゴリラお嬢様のことは幼少期から心を痛めてみておりました」

「だから!私はラウラお嬢様ですわッ!!!!」


ラウラさんの叫び声が聞こえた刹那。あのか細い腕を僕に向けて背中から僕に対して振り回すように掌で空を張り手をした。


 先ほどのラウラさんの叫び声を打ち消す巨大な水の壁。直径70メートルの水柱が僕に放たれた。


 地面を抉りながら水の壁は僕に近づいていく。両手を構えていた僕は技の威力を見て打ち消すことを放棄した。すかさず体を翻して右斜め後ろへ体の軸を移す。同時に全力で地面を蹴り滑空へと移る。滑空はスピードに乗るまで時間がかかる。しかし焦りがない。感情もない。ただ人間の生存本能のみで体が動いていた。あれは対処できるものではない。あの脅威からいち早く距離を取れと本能が身体に命令した。ほぼ脊髄反射の動きだった。滑空に移り、少しスピードに乗ってきた。このまま逃げ切れる!感情と思考が自分の支配下にやっとなってから0.5秒後。僕の太ももから足先までは間に合わず壁と共に巻き込まれた。


 体が凄まじい勢いの水量に持っていかれそうなところを僕の力を足の部分に迫り来る水に向けて放った。後ろからまた新たな水が襲うので意味はないかと思ったけど試してみると、少しだけ弱まったところを見逃さずに離脱!


 上空から斜めに弧を描くようにラウラさんたちの元へ戻ってきた。

「お見事!目標は遥か遠いですが双方得るものがあったようですな」

「プレンツ!死んじゃったかと思いました!けど、あなたを信じていましたわ!さぁ!もう一度いきましょう!」

「できるかッ!!!!!!!!!!!!!!!」

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