第18話 追撃!グラン酪農!
ラウラさんが台車を押してガルニエに着いた。僕は嘘みたいに大きいチーズの塊を、フレンはとっておきの方の牛乳を。ラウラさんは人の背丈ぐらい大きいミルク缶を持ってキッチンへ向かった。円柱になった黄色くてまろやかな乳製品の匂いを放つチーズ。待ってみると思っていたよりもずっと重い。フレンの持ったミルク缶だって腰ぐらいまであって重そうだ。このミルク缶が貯まるぐらいルミさんの母乳が詰まっていると思うとお母さんって大変なんだなと感心してしまう。フレンも結構力持ちだけどラウラさんが凄すぎて霞んでしまう。
『よいしょ』と難なくラウラさんよりも大きいミルク缶を持ち上げてキッチンまで持ってきたラウラさん。あの細い腕のどこにそんな力があるのか。キッチンへ行くと、奥の部屋に通された。部屋の中が一際寒い。奥にも扉があるようだ。
「じゃあ牛乳はそこの棚の隣にフレンのも。プレンツ君のチーズはとりあえず同じ棚に置いておいて」
「ミッケさん、奥の部屋はなんですか?」
「奥も保管庫だよ。ここも寒いけどあっちはもっと寒いよ。いわゆる冷凍室かな」
「へぇ〜」
まだ知らない部屋があったとは。電気機器や機械がある部屋とかは入ったことないし、未だにガルニエ内で知らないことは多い。
「よし。じゃ食堂へ行ってきな。多分双子ちゃん達がセッテイングしてる頃だろうからさ」
朝ご飯を食べてまだ間もない気がするけど、もうお腹が減っている。グランさんのお宅でも軽食を食べたのに。
「今日はなんですか?」
「俺がいなかったから、簡単でいいよとは言っておいたけど。あ、せっかくだからこの牛乳も持っていこうか」
ミッケさんがそういうと蓋のついた瓶を持ってきて牛乳を掬い入れた。とっておきの牛乳だ。
「じゃラウラさんこれも持っていってもらえる?」
「もちろんですわ。もうはらぺこですわ。さっさと行きましょう。他には何かあります?」
「まあこんなもんでしょ。多分今日は街に行ってる人も多いだろうし」
そういうとガチャリと扉が開いた。シンシンだ。
「みなさん!思っていたよりお早いお帰りでしたね!」
「うん。牛乳とか買えたからとりあえず持っていこうかなってね」
「そうでしたか、そうでしたか」
「今日は結局何にした?」
「パンにバジルソースを塗って焼いたものとチーズとサラミ、あとスクランブルエッグにしました。チーズがなくなりそうだったので他の食材を探しにきたのですが、そこに見えるは立派なチーズ。ナイスタイミングです!」
「じゃ早速だけど切って持って行くか。シンシンもあっちで食べちゃってていいよ。任せてすまなかったね」
「いえいえ。ではお言葉に甘えます!あ、ラウラさん!それ持ちましょうか?」
「心配には及びませんわ」
「あはは!それもそうでしたね。ではお願いします!」
キッチンに漂うこのいい匂いはバジルソースだったか。たまに出るマルゲリータピッツァにこのソースをかけるととんでもなく美味しいのだ。
キッチンには大きなピザ窯もあってたまに食卓に並ぶのだ。
元アクィラ人としてはピッツァは大変嬉しい。料理というのはやはりソースが決め手だとしみじみと思う。浮き足立ちながら食堂にシンシンとみんなで向かった。
シンシン「牧場はどうでしたか?」
フレン「のどかでいいところだったよな」
プレンツ「うん。今度キエリスさんとも買い付けに行くって話をしたからその時はもっと用意してくれるって」
シンシン「乳製品はいくらあってもいいですからね。チーズなどは保存も効きますしね」
プレンツ「あとヨーグルトもあったんだけど今度の機会にしたんだ。台車での移動だったから」
シンシン「へぇ〜!牧場なのに随分手広くやってますね」
プレンツ「オーナーは亜人の人だったけど、従業員に他の人もいるらしいから結構規模の大きい牧場みたいだったよ」
シンシン「ほぉ〜!今度買い付けに行く時楽しみにします!」
ミッケさんがいなくても2人で色々作ってしまう。しかもオケ隊の人もいるから結構な量だ。僕ぐらいの歳で背だってそんなに変わらないのにすごいなぁ。料理をするようになると僕も大人に見えるようになるかな。みんな夢とか仕事とかあってちょっとだけ羨ましい。
火消しという仕事はあるけど他に自分のやりたいことや夢って思いつかない。シンシン達みたいに上手にできないかもしれないけど料理を教わってみようかな。
* * * * * *
一方その頃街でデート中のキエリスちゃんと団長はというと〜⭐︎
「あ、団長!」
「どうしたの?」
「さっきミッケに牧場に行って牛乳とか買えるか交渉してくるからできれば運ぶの手伝ってくれないかって言われてまして」
「あー。悪いけどそっちは任せるよ」
「じゃそのままガルニエに戻りますね」
「今日のところはあとは銀行だけだから大丈夫だよ。あとこれ朝イチで出したいからルミオに渡しといて」
「わかりました。ではではまた後ほど〜」
ん〜とりあえずどこにいるかわかんないし、上から見に行こうかな〜。
ガルニエ上空からは特に見えない。ちょっと進んでも見えない。またちょっと進んで。うん、誰もいない。
あ、牛がいっぱいいる!結構大きい!そしてやはりミッケはいない。よっと、言ってる間に目の前まで到着しちゃったよ。
ここがおうちかな?結構大きいお屋敷だ。
「すいませーん。誰かいますか〜」
牧場広すぎるな〜隣の牛舎に誰かいるかな。
「はいー。あら!またかわいらしいお客さんだ〜」
お、声が聞こえた。優しそうな女の人の声だ。
「こんにちわ〜!ってデッッッッッ」
「?」
牛の亜人さんってこんなに大きくなるんだっけ!?メイさんより大きい人がいるとは。あまりの迫力で思考が一瞬飛んじゃった。
「ああ。いえ。今日ってあっちに見えるガルニエってところから誰か来ませんでした?」
「ああ〜ミッケさん達!少し前にラウラさんが台車引いて帰りましたよ〜」
「あ、そうでしたか〜」
しまった。先にガルニエに行っておけばよかった。どうして思いつかなかったんだろう。私のばか〜!
それにしても、いいにおい〜♪
そういえばガルニエでご飯食べてから行ってもよかったんじゃなかったかな。天気がいいから飛んでるうちに考えるのをやめちゃってたな。
「さっきいっぱい買ってくれたんですよ〜」
「そうでしたか。今度また買いにきますので。またお願いしますね!」
ぐぅ〜。
しまった。キエリスちゃんの身体に住まう猛獣の遠吠えが。
「あはは、いや〜今日は朝から大忙しでして」
「丁度お昼ご飯ができたんです。みんなも来るからよかったら食べます〜?」
「(いえいえそんな申し訳ないです!)いいんですか!じゃお言葉に甘えまーす!何かお手伝いすることありますか?」
「じゃあお皿運んで、あと外にいる人たちを集めてもらえますか?」
「わかりました!」
あれはグラタンだ!めっちゃ美味しそう!!
それからそれからお皿を運んでみんなを集めて美味しいグラタンを食べて、デザートにジャム入りヨーグルトを食べて、牧草の移動とかを手伝ったキエリスちゃんでした。私はどこでだって働けるバリキャリウーマンなのさ!
「いや〜キエリスちゃん助かったよ。ああいう穀物は重くて運ぶの大変なんだ。うちの馬も年老いてきたしね」
「いえいえ。このぐらいおちゃのこさいさいです!」
「ほんと!こんなことができる魔法もあるんだねえ」
「ふふん。まあこれでも?世界一の魔法劇団を謳ってるんで。しかも私、そこの副団長なんで!」
「そうかそうか。今度俺たちも見にいくよ。そうそうミッケさんにも改めてよろしくな」
「今度は私とミッケで来ますんで。いっぱい用意しておいてください!」
「キエリスちゃんに言われたんなら特濃を用意しておくからな!」
「楽しみにしてます!じゃまたまた〜」
「おう!気をつけてな〜。って速!もう消えちゃった」
「Flying Twinkle Caravan?可愛らしい名前だねぇ」
「世の中にはすごい人たちがいるもんだな」
「リオの方であの政治家の騒動を突き止めたのもこの劇団ってっていってますからね」
「ええ!?そうなのか?俄然興味が湧いてきたな」
「もぉ〜最初は演技?知らねえなって言ってたのに」
「い、言ってないっつーの」
ぴょんと飛んでガルニエにひとっ飛び!
1人ならこのぐらいの距離ならちょろいちょろい。
もうすっかり夜ご飯の時間だ〜!今日は何かな〜。さっき食べたばっかりな気がするけど〜!お、食堂に向かう途中団長発見!
「あ、いた。どこ行ってたの?」
「昼間に言った牧場でゴチになってました!」
「ルミオのところに書類置いてないよね」
「あ」




