第14話 麗らかなる地平線よ その2
ぱんぱん。手をたたきほこりをはたいた。
「それでかわいい女の子相手だとなんだっけ?」
「なんだお前その強さは……化け物か」
差別は良くないけど、私よりも余程化け物みたいな奴にそんなことを言われるとは。
「なに?」
「ひひ!すまん!もう手出ししない!頼む!ほらお前らも!」
「「「「すみませんでした姐さん!!!」」」」
「誰が姐さんだよ」
「団長やりすぎですよ」
目配せして一旦遠くにいてもらったキエリスが近くへ飛んできた。
「なんで私たちってこんなにつけられるんだろうね」
「私たちがかわいいからですよ」
「なら仕方がないね。で?はい正座!」
「はい!」
めっちゃ従順だなこのトカゲちゃんたち。青タンが身体中につけながらこんなにかわゆい女の子2人に正座させられている構図はなかなか滑稽だろう。
……人気のない路地を選んで正解だった。
「誇張はしたかもしれないけど、私たちは本当に今日この国に来て急にあのチャラい男が出てきただけなんだ。言っておくけどこれ以上は何も出てこないよ。それで雁首揃えてそっちは何の用さ」
「……」
だんまり決め始めたから睨みつけてやった。こう見えて喧嘩を売るのは得意だ。こう見えてね。
なんだい?
別に今までの旅路を見ていればそのぐらいやりそうだとでも言わんばかりのその顔は。こんな華麗で可憐な女性が喧嘩なんてイメージないよね?ね??
そんな華麗で可憐な私はちょっとしたオーラを相手に飛ばしてビビらせたのだ。
「ひっ!ちが、違うんだ!」
ビビり上がりながらまだ白状しない。まだ抵抗するか。
「なにが?」
声のトーン低めで威圧した。この機に及んで隠すな。
「確かに脅かそうとしたけど、誘拐とかは俺たちはしてない!もちろんあなた方に対してもやろうとは微塵も思ってなかった!なんでもかんでも俺たちのせいにされちゃ困る!」
「畑荒らしたりとかは?」
「あれは畑だと思わなかっただけだ」
トカゲちゃんがそっぽ向いてそんなことを言った。
「……まあ信じてあげるとして、そっちは何が欲しいの?情報?サニィとかいうあの神様を嗅ぎまわってるってこと?」
「ああ。だが、そろそろ俺たちもわかってきた」
「何が?」
「誘拐されてるのはな。人間だけじゃない。亜人もなんだ」
「うん。それで?」
なんの話してるのかわからないけどこのまま話させておこう。
全く入国初日でこの国の人達はご挨拶なものだ。
「割れてはいたんだが、どうしてもあの神が絡んでるかだけ知りたかったんだ。だが、あの神は絡んでねえ。この国の政治家だ」
「そう。黒幕がわかってよかったね。じゃ行こうかキエリス」
「待ってくれ!それだけの力があるんだ!俺たちに手を貸してくれないか?」
「はぁ……そう来るよねえ。汚職政治家の弾圧なんてなんで私たちが絡まないといけないのさ。来て早々デモ活動に勧誘しないでよ」
「そこを頼みます姐さん!」
「誰が姐さんだ!」
「あんたたち劇団なんだろ?亜人への宣伝はしますから!」
「具体的には?」
「とにかくここにいる奴らで声をかけまくる。人間のあんたが言いふらすよりも俺たちが宣伝したほうがみんな怪しまないで来てくれるって!」
「はぁ……わかったよ。考えておくよ。だけどねしばらくはこっちにはいないよ。手伝えることももしかしたらないかもしれない」
「それでもいいよ!あんたたちが敵じゃないだけでいい!」
来て早々よくわからない連中に随分と買われたものだ。ま、ここまでわからせておけば寝床を襲われることはないか。
トカゲちゃん達に丁重に見送られながら宿に戻った。可愛い舎弟ができたようだ。
「妙なことになりましたね」
「そうだね。毎度これだよ」
「頼りになるからですよ姐さん」
「だからなんだいそれは……。とにかく明日は帰るよ。何か動くとしてもちゃんとこの国に来てからだよ」
「公演やるんですね」
「……まぁね」
「それはよかった!明日に備えて早く休みましょう!」
それから何回かイビポランマランに来てこの国の歴史などを調べつつナレアに共有して台本を作った。もちろんそれだけではなくイビポランマランとの契約などを交わしながら。
大体固まったところでガルニエではなくサライでこの国に来た。
北アメリカ大陸からずっとサライで来ていたからだ。ガルニエを置いていた欧州に戻るのも面倒だし。
転移場所に指定されたのは町外れの広場だった。
近くに海もあるみたいだ。とはいえ中心部からは結構遠いかな。
「到着。キエリスお疲れ」
「うぃぃぃ〜」
「……はいということで南米大陸のイビポランマランに到着しました。この国、亜人に対してあんまりいい印象がない人がいるかもらしいから、みんななら大丈夫だとは思うけど気をつけるように。ん?」
光り輝く何かがこちらに向かってくる。多分あのチャラ男だ。
光がサライの目の前に降り立った。
「やぁFlying Twinkle Caravan のみんな!!!」
ほらやっぱり。
「初めましてはじめまして!この国に降臨するサニィだ!よろしくなみんな!」
カミラ「神?」
ロンメル「ほんとか?」
ミッシェル「ちょっと飛べるだけのヤンキーじゃないの」
団員達がざわついている。
「こんなんでもほんとらしいよ。サニィ改めてよろしくね」
「ああ。大大大歓迎さ!」
普通なら神様に入国を歓迎されるなんてとてもありがたいことなのにみんな白けている。
謎に七色に光るサングラスに派手な髪色、そして半裸のチャラい男だもんな。無理もない。
「サニィ。レイモンドだ。イカした登場するじゃねえか」
そう言いながらレイモンドが無数の光球を出してサライと私たちを黄色と緑色で照らした。
「歓迎してくれて嬉しいぜ。お前みたいな神様もいるんだな。大西洋ができるぐらい号泣できる舞台をこの国のみんなに披露するから待ってるんだな!なぁ団長!」
「ま、その通りではある」
「おお!めっちゃ期待してるぜレイモンド!」
「任せときな兄弟!」
「なんですかあれ」
最近加入したミッシェルがジト目で2人を見る。
「レイモンドと同じ知能レベルの神がいるとはね」
「アンティエ酷くねえか!?」
と、来て早々舐められているサニィ神だったがそんな彼は手ぶらできたわけではなく、音楽隊を紹介してくれた。案外気が回る神様だ。あの亜人たちの言う通り、このチャラ男神が人を攫ったりするとは思えないな。多少頭はアレかもしれないけど少なとも悪い神のようには見えない。
フェリックスが目を輝かせながらサニィと音楽隊のいる場所へ走っていった。
それから公演はサーカスの演目をやりつつも音楽隊と合わそうという流れになった。入国早々ここまで決まるのはありがたい。
そしてある日サニィの紹介で件の汚職政治家の疑いのある人物とも対面した。
「お目にかかれて光栄です。Flying Twinkle Caravan魔法劇団のステラッチェと申します」
「はじめまして。噂はかねがね。欧州じゃ知らない人はいないというじゃないか。そんな劇団がイビポランマランに来てくれたことを歓迎しよう。改めてザビドロだ。この国の大統領だ」
* * * * * * *
サニィと大統領と挨拶をした後の帰り道。
誰かに付かれてる感覚があった。
ルミオとふたりだったのでどうしようかと思ったが、ルミオにも聞いてもらったほうが都合がいいかもしれないと思い、路地裏に入った。
「姐さん」
「だから誰が姐さんだよ」
「うわ!何トカゲ?」
建物の影から大きなトカゲの頭が出てきてルミオがびっくりしたようだ。
「驚かせちまったな旦那。姐さんに用事があってな」
「普通にサライに来てよ」
「それだと面白くねえだろ?」
「舐めたことするならこっちからけしかけてもいいんだよ」
「申し訳ございません。もうしません」
うん。素直でよろしい。
「それで?」
「ああ、あいつと会ったんだろ。どうだった?」
別に当たり障りのない挨拶をしただけだとトカゲちゃん達に話した。たかが劇団のリーダーと国家君主が会って話すことなどたわいのないことしかないだろう。
「初対面の相手にボロ出すとは思ってねえよ。政治家ってのは外面だけは超一級品だからな。だから姐さんの直感を聞きたい」
「直感ね。挨拶しただけって言ったでしょ。政治家は今までも会った事がある。大体があんな感じだよ。でも」
直感。私は割と理屈っぽい方ではあるけど。
「それでもあの大統領、というかあの政治所自体が変だ。これは直感じゃなくて私の目で見たものだ。そりゃ政治の中心部なんて隠したいものがあるのは当然だけどなーんだろうね。邪悪というか、悪趣味地味た何かがあるって感じかな」
「悪趣味とは?」
「さぁね。さてここからは私の直感、あの大統領は」




