第10話 リオ魔法専門学校
3日後、私とオレーナは朝から魔法学校へ向かった。ガルニエ正面玄関ではなく、屋上に集まった。屋上からは街のほとんどを見下ろすことができる。神殿兼中央議会の大きな建物よりも遠くの西側に見える塔。歩くと遠いし、山の中腹にあるようだからまともに行けば時間がかかりそうだ。
キエリスがいればあのぐらいならちょっと力を入れれば一発で飛べるけど今日は私の代わりに舞台を見てもらう。
「ささ、ステラッチェ団長様」
「なんだいその手は」
「なにって。手を繋いで一緒に飛ぶんですよね?」
「自分で飛べるでしょ?」
「いいじゃないですか〜!せっかく二人だけの優雅な空中散歩ですよ〜!朝日に包まれながら俗世を見下ろし、私たちは空への階段を駆け上がるのです!」
「何いってるんだい」
オレーナのポエムはさておき、転移ができないからちょっと風を起こしてひとっ飛びしようというわけだ。天候もいいし風も強くないからこの選択をとった。
「それに団長の風をお借りした方が私もかなり楽なので!」
「まあそういうことなら」
オレーナの右手を取った。何故か指を絡めて恋人繋ぎをしてくる。オレーナも同じく風に乗って目的地まで飛ぶから合理的ではあるけれども。
どうせ同じ風に乗るなら手を繋ぐ必要はないような。何かあったら私が引っ張れるしまぁいいか。
「きゃーーー!!!」
「きゃーって……(自分で絡めておいて)そろそろ行こうか」
「はい!いざ二人だけの逃避行へ!」
「どこに逃げるのさ」
軽くジャンプをしてそのまま風を掴んで上昇気流を作って空高く飛び上がる。
「ひゃっほーい!」
「キャラ変わってない?」
「そんなことはないです!オレーナはいつでもご機嫌です!」
大部分は私が気流を作っているけど、細かい体制維持のための気流はオレーナ自身で行っている。一見私に連れられているだけのように見えるけど、いや実際そうではあるけど、全く魔法が使えないルミオとかがこれをやると結構怖いらしい。上空を舞う鷹や渡鳥を横目に見ながら魔法学校へ上昇しては下降しの繰り返しで向かった。玄関口にサラさんがいるとのことだったけど。
「あ、あれサラさんじゃないですか?」
オレーナが左斜め下を指差した。こちらに手を振る人が見えた。
大きな門に向かってゆっくり下降した。
「おはようございます。ステラッチェ団長様。そしてオレーナ様ですね」
「おはよう。サラさん」
「お久しぶりです、サラさん。お変わりないようで」
「ありがとうございます。おかげさまで元気です。うふふ、まさかお二人が空からやってくるとは思わなかったのでびっくりしました。最初は鳥か何かかと思いました」
「天使だなんてそんなぁ」
「言っていない言ってない」
身体をくねくねさせて両頬に手を当てるオレーナ。幻聴にも程がある。
「では早速案内いたしましょう。どうぞ。それにしてもお二人仲がいいですね」
「一日中一緒にいますからね」
胸を張って答えるオレーナ。そしてサラさんの視線で気づいた。いつまで手を繋いでいるんだ私たちは。
「あ、サラさんも手繋ぎますか?」
「い、いえお邪魔はしませんよ」
「私たちももういいでしょ」
「ええー!!」
大きな門を通り、校舎に入る。遠くからでも見えた大きな塔と隣接して立派な建物が建っていた。
サラ「今見えていますのが本校の本館になります。向こう側で工事しているのは別館や寮になります。寮はまだ建設途中ですので街の近くから生徒さん達は通っているんです」
ステラッチェ「そういえばこの国以外からも生徒を集めているんですよね」
サラ「ええ。とはいえ今年開校されたばかりですからほとんどがイビポランマランの生徒です」
ステラッチェ「他の国の人も受け入れる学校は結構珍しいですよね」
サラ「魔法を使える者が多ければ多いほど国力となる場合が多いですからね。大体の魔法学校は国の政策として抱え込んでいるのでしょう。イビポランマランではそのような制約をせずに、才のある者、意欲のある者であれば入学できるようにしたんです」
煉瓦でできている部分と、大きな石を積み上げて建てられた校舎。新築だからピカピカで立派な建物だ。
それからもサラさんガイドの元、中庭や食堂、図書館、空いている講義室なども見て回った。
「どうだいオレーナ」
「私のいたところはすごい古かったですけど、ここはまだ新築の香りがして、素敵な学校ですね」
「オレーナさんはいつ頃卒業して劇団に入団されたんですか?」
「ああ、私一応休学中なので。」
「まあそうなんですか。転入制度はこの学校にもありますのでぜひご検討くださいね」
「あはは、いやぁ学校はもう大丈夫です!」
「そうですか。残念です」
「あはは……」
過去にオレーナが私に入団を直談判しに来たのを思い出した。本人の決めたことだからなぁ。
広い廊下を三人で歩いていた。
「その講義というのは結構集まっているんですか?」
サニィとサラさんに言い包められてのこのことここまで来たわけだけど、相手が二、三人とかだと流石に寂しいからね。もしそうならさっさと帰るけど。
「ええ。かなり噂にはなっているみたいなので、きっと沢山いますよ」
「腕がなりますねぇ……」
* * * * * * *
「こちらが公演していただく大講堂です。この学校の中で一番広い講義室なんですよ。では私、先に入ってフロア沸かしておきますので少ししたら入ってきてください」
「DJ?」
「では」
行っちゃった。なんで私達のちょっとしたお話会のためにフロア沸かす必要があるんだ。
サラさんが入ったあとドアに耳をみませて何を言ってるか聞いてみた。
「盛り上がってるかーい!」
「イエーーーーーイ!!!!」
ライブ?
サラさんの掛け声の後に生徒達の大きな声援が聞こえる。
「どうですか?盛り上がってそうですか?」
「授業をする感じの盛り上がりではないけどね」
このまま帰るって選択肢も実はあるな。
「オレーナは何か考えてきたの?」
「いえ?私はステラッチェ団長をお見守りしています!頑張ってくださいね!あ、変なこと言ってくる不届き者がいたら粛清しておきますからご安心を。ステラッチェ団長様のお手は汚させません」
「何を安心しろと?」
身近な敵は目の前にいた。なんで身内から放たれる緊張感と戦わなければならないんだ。人選を間違えたかもしれない。
「本当は司会進行ぐらいやろうかと思っていましたがサラさんがいるならいらないかなと思いまして」
ルミオの予想通りだったわけか。
「ふー。まあいいか。こういう場合ノックして入ればいいのかな?」
「それでいいんじゃないですか?」
こんこんこん。ノックをした。再びドアに近づき耳をドアに立てた。
「お待たせしました!それでは登場していただきましょう!Flying Twinkle Caravan 劇団長ステラッチェ団長様です!大きな拍手と共にお迎えください!」
だから何のDJ?




