第9話 タクトと奏でて
ガルニエに戻り事務室に向かい、受け取った書類をルミオに渡してから舞台に戻った。とはいっても客席から観ていた。
舞台の方は仕上がってきたからあとはフェリックスと音楽隊達との調和だ。例えばどのセリフのあとで音楽を始めるか、効果音、舞台のテンポによって同じ曲でもスピードや曲調を変えてみたりしている。舞台上の練習ではピアノでタイミングを探っている。ピアノソロの舞台というのも結構好きだけど、迫力を出したりいろんな色を出すにはやっぱりオーケストラ隊がいた方が表現の幅が大幅に増える。曲をどこで始めるか、どこを強調するか、どこで終わると余韻が出るかなど、練ることはいくらでもあるし、正解なんてない。だから妥協せずに模索し続ける。時間の許す限りね。
とはいえ、スタートエンドのタイミングは狙い通りの雰囲気が出ていた。舞台の難しいところは結局は主観になってしまうこと。それなりに場数は踏んできて、王道というものを心得ているつもりだけど、最後は自分の好みになってしまう。十人いたら十人同じ意見になることはあり得ないのだから。
客席側で魔法を打ち消しているプレンツがいたから近寄ってみた。
「音楽隊はどうだい?」
「初めてとは思えないほど音楽と舞台が合っていてびっくりしています」
「ここの音楽隊は前に来た時にもお願いしていたからね。とはいえメンバーの一部は新顔だけど、みんなうまいよね。サンリスタニアのように都市を巡る時は一緒に同行する形になるから、いろいろ話してみるといいよ」
「そういえばそうでしたね。あ、休憩みたいですね」
「じゃ私も改めて挨拶してこようかな」
少しジャンプしてオーケストラピットの前に降り立った。
「皆さん!お久しぶりです。改めて公演のご協力していただいて感謝いたします。今回も素敵な音楽をよろしくお願いしますね」
「お久しぶりです。相変わらず軽やかですなぁ」
以前もお世話になったオーケストラ隊のリーダーと握手をした。
「階段降りるのが億劫でして。観客席から見ていました。お祭りの時も演奏を聴いていましたが素敵な音楽でした。いろいろわがままを言ってしまうかもしれませんがお付き合いください」
「もちろんです。なんでも言ってください。音楽の魔法なら頑張ってかけますよ」
音楽隊の皆さんとフェリックスが笑っている。
「では、とびっきりの魔法をお願いしますね」
「ええ。任せてください。ステラッチェ団長さん」
「フェリックス。この調子で頼んだよ」
「はい。任せてください団長」
オーケストラに参加するのは約50名ほど。首都であるリオで公演を行う間はこの人数だけど、オケ隊の家庭の事情もあって全員が他の都市に同行できるわけではない。そりゃそうだ。この首都にいる間は各々の家からガルニエまで通うけど、他の都市では泊まり込みになる。この都市以外では四十人が同行することになった。もっと減ってしまうかと思ったけど、かなり付き合ってくれるらしい。
ガルニエにいる間は3食付きで他の団員達と同じように二人部屋に泊まってもらう。報酬金は音楽隊に払うけど、食事代は引いて支払う。あとは諸々の施設代も引くけどかなり破格の値段だ。楽器も今回は民族楽器はあまりない。一般的なオーケストラで見られる楽器が多い。弦楽器に管楽器木管、打楽器などなど。とはいえこの国らしい旋律を奏でて貰うつもりだ。
一度私たちと共演したことがあるというのはかなりアドバンテージが大きい。うちの勝手をわかってくれているし、魔法にびっくりしている様子も、ないことはないんだろうけど、比較的慣れは早い。あと数日もすればいい具合になるだろう。
よぉし今回も頑張るぞ!




