第7話 宴の後の散歩道
それからも飲み食いをしてお店を後にした。お会計はそこまで高くなかった。物価が安いのは助かる。そういえばこのお店は後払いだったな。首都だしそういうお店も増えてきたのだろう。
帰り際にお祭りはとっくに終わってるのにサンバの格好をしている馬鹿どもに鉄鎚を下しみんなでガルニエに戻った。
風で飛んできたであろう蛍光色の羽のようなものを腰にいっぱいに括り付けて踊っているニニギの様子を見て『あれが?』と言わんばかりの目で 私を見るプレンツ。私に訴えられても困る。
図体のでかいやつらほどバカ騒ぎをするから本当に困る。入国早々追放されたいのか。
みんなで野郎どもを引きずりながらガルニエに帰る。アンティエは私がおぶった。
「どんだけ飲んだの……」
「覚えてない……」
「覚えていられないほどよく飲むね」
「私はね!!!全てを忘れるために飲んでるのよ!!!!」
「うるさっ!耳元で叫ばないでよ」
「心配しないで。私の魔力リソースは全て肝機能に回してるから。」
「そんな器用なことできたいのかい……」
「吐きそう」
「できてないじゃないか!」
* * * * * * *
アンティエをベッドに連れていき眠らせた。
いやもう寝てたけど。
自立して歩けないほどよく飲めるものだ。あれぐらい一度飲んでみたい。
いや、やっぱりいい。
私もお風呂に入ってから寝ようかな。
足元に何かがまとわりついてきた。
「やぁメド。君はお留守番してたのかな?」
「みゃー」
「ご飯か。よぉし。おっもいなメドは。ダイエットしたら?」
いつの間にかガルニエに住み着いているデブ猫のメド。黒猫で胸元だけ白い毛が生えてる。ちなみにメス。
図体からして小熊のような猫だ。トゥエンのような猫の亜人ではなくて本物の猫。
そんなメドを抱きかかえて食堂に向かう。無抵抗のまま私に抱かれるメド。嫌がる様子もない。
苦しゅうないぞ、とそんなことを言ってきそうな目だ。
「今日はどんな一日だったの?50字で答えて。」
「みゃー」
「何言ってるかはわからないけど相変わらず食べて寝て過ごしていたようだね。」
食堂にメドをおいて、キッチンへ向かった。大体ミッケがメド用の何かを置いているはずだけど。今日は、というか今日も魚の煮たのをほぐしたものだ。
再び食堂へ向かいメドに魚を与える。
待ってました!と言わんばかりの勢いでがっついている。
しかしそんなに食べてないしヘルシーなものばかり食べてるのに何でこんなに太っているんだろう。
扉が開く音がした。ミッケだ。
「あれ団長ちゃん。あ!ごはんあげちゃった!?」
「え、なんかお腹減ってそうだったから。」
「さっきあげたんだよ。もうだめって言ったらどこかに行ったから諦めたんだと思ったんだけど、他にくれる人を探しに行ってたんだね」
既に完食してドアの前に座りこちらを見ている。早くドアを開けろといわんばかりに。口ほどに目で訴える演技派猫だ。だから太るんだね。
ドアを開けたらもう用はないと言わんばかりに軽快に廊下を歩いて行った。たるみにたるんだ腹をゆらしながら。
「だまされたね」
「一枚上手だったみたいだ。明日はランニングをさせよう」
「どうやって」
「餌を目の前に出して食べられないように逃げる」
「頑張ってね。じゃおやすみ~」
「……」
お風呂に向かった。時間をずらしたつもりだけど中に誰かいるみたいだ。
屋上に貯水タンクがあり、そこから流れる水を利用して発電をしていたり、このように生活に使っている。貯水槽には水の魔法を使える人が当番制で入れている。お風呂掃除やその他諸々も当番が決まっている。だからいつでもお風呂に入ることができるのだ。最悪お湯がなくても私とかがいれば自前で作れるけど。
お風呂キットを持って浴室に入るとやはり何人かいた。すごい湯気だ。
少し長い浴室は手前左右にがシャワールームが並び次に浴槽が並ぶ。
髪を洗い体を洗い湯舟に向かった。なんだか疲れたからささっと洗った。ちょっと酔ってるし。
湯船から話し声が聞こえる。
「あ、団長お疲れ様でーす」
「あらお疲れ。アンティエは大丈夫だったかしら?」
ミッシェルとメリチェルだ。湯船に浸かりふたりでおしゃべりしていたみたいだ。ふたりにお邪魔して湯船に入った。
「うん。部屋に置いてきたよ。何かあったらよろしくね」
「寝てしまえばあとは朝までぐっすりでしょう」
メリチェルは一角獣、ユニコーンの亜人だ。おでこに角が生えている。炎のように赤と黄色とオレンジの長い髪を結って団子にしている。ちなみに尻尾の毛色も同じ感じだ。角が生えたウマむ……馬のお姉さんだ。
ミッシェル「お酒好きなひと多いですよね」
ステラッチェ「うん。ごく一部が引くほど飲んでるよね」
ミッシェル「アンティエさんあんなにクールでいかにも仕事できます!って感じなのに酒におぼれるあの姿を見た時はびっくりしました」
メリチェル「お酒にしか頼れないことってのがあるんじゃないかしら」
ステラッチェ「美味しく飲める範囲で飲むのが一番だよ」
メリチェル「間違いないわ。外見がああだから、より内面がボロボロなのかもしれないわね」
ミッシェル「あれだけの事務作業ができるんだから内面も強そうに見えますけどね」
メリチェル「そういうストレスを酒で洗い流そうとしているのかもしれないわね」
ステラッチェ「そういわれると申し訳ないな」
ミッシェル「私は一日中机に向かうのはもう無理。よく学校行ってたって思いますよ」
ステラッチェ「勉強はした方がいいよ」
ミッシェル「それはそうなんでしょうけど。アンティエさんは勉強もできて魔法もキレがあってほんとすごいわ~。私もマティエンコさんにいろいろ教えてもらおう。ネイルとか」
ステラッチェ「勉強じゃないんだね」
そんな話をして湯舟から出た。私も昔はルミオに勉強しろって言われてたなぁ。
3人で湯船から出て脱衣所に向かった。濡れた身体を拭いて風を起こして髪を乾かす。
ミッシェル「そういうのできると便利ですよね~。私もできればよかったのに」
ステラッチェ「やってあげるよ」
ミッシェル「えへへ。ありがとうございまーす」
ドライヤーもあるけど私やメリチェルのように温風を扱える魔法があるととても便利だ。髪を乾かすときもそうだし、寒い日とかね。ただやりすぎると髪が焦げてしまう。そしたら台無しだ。この絶妙なムラのない温風というのは結構難しかったりする。
ま、できるけど。
二人と別れて自分の部屋に戻った。街の中心だから窓から街灯がちらほらと見える。リマクを離れてまだ一日も経っていないとは。なかなか濃密な一日だった。
ティカちゃんのピアスを取って机に置いた。これはもう役目を終えた。私よりプレンツが持っていた方がきっといいだろう。明日渡そうかな。
そんなことを思いながら布団をかぶり眠りについた。いつもよりも寝つきがよかった。そういえばルミオとか見なかったな。どこに行ってたのやら。




