第4話 チャラ男神のお願いごと
「はぁ。お腹いっぱい。食べ過ぎちゃった」
「ちょっと休憩しましょ」
キエリスさんは何度も屋台へ向かいその度に甘味を幾つも買ってきていた。そんなに甘いものばかり食べて具合が悪くならないのだろうか。
フレンに続いてティラクさんも寝始めてしまった。サンバは見なくていいのか。
ミッシェル「このあとどうする?」
キエリス「ん〜もうちょっとしたらサンバの近くまで行ってみる?」
ミッシェル「そうね。せっかく来たんだしね。私達のために用意というか日程を調整してくれたみたいだしね」
ヴィーナ「ロンメルさん達も一緒に行きませんか?」
ロンメル「そうだな。キエリス達と行こうか」
「あらこんなところに」
「ああ〜みんな〜寝てるし」
「お祭り楽しんでいるみたいですね」
ソフスさん、サッフィさんとオレーナさんだ。
ソフス「こちらは健全に楽しんでいるようで何よりです。」
プレンツ「け、健全ですか」
嫌な予感がする。脳裏に大人達で祭りへ赴く姿を思い出した。
ソフス「居酒屋でニニギさんたちが派手に飲んでましたから他人のフリを決めてきたところです」
キエリス「うわあ。絶対に絡みたくない」
ロンメル「こちらを勧められてよかったな」
エルフリーデ「元気でいいではありませんか。でも、夜遅くまで続くなら私が行きましょうかね」
Oh……。ステラッチェ団長が行くよりもエルフリーデさんの方が効くだろう。今日は夜遊びしないで帰ろう。
ソフス「お食事はもう済んだようで。」
サッフィ「何が美味しかったー?」
キエリス「焼き魚もあったしイカもあったよ!あとブリトーとかの軽食系かな」
ミッシェル「大体美味しかったわよ。ここで食べるなら譲るわよ?そろそろサンバの方も行くところだから」
ソフス「どうします?」
サッフィ「ん〜まだ朝ごはん食べたばっかりだしボクはいいかな〜」
オレーナ「ではサッフィさんに合わせましょうか。ソフスさんも大丈夫ですか?」
ソフス「ええ。小腹が空いたら考えましょうか。では皆さん情報共有ありがとうございました。お酒を飲まれる方はお気をつけを。」
行ってしまった。ステラッチェ団長がいない時のオレーナさんはとてもお淑やかだ。というか別人だ。これも演技力というものだろうか。
プレンツ「ソフスさんもお酒飲まれるんですかね」
ロンメル「ああ、たまには飲んでるぞ。あんまり強くないけど」
ロンメルさんもたまに飲んでいる印象がある。うちの団は中年ぐらいの人が一番飲んでいる気がする。
僕たちと体の形が違うしな。亜人のひとの中でも好き好みはあるか。
こんなにいろんな種族の亜人の人達がいる光景は初めて見た。
鳥やトカゲ、犬、猫、虫と様々だ。
ヴィーナさんのようにしっぽなどの身体の一部にだけが特徴が出ているタイプ。この場合はほぼ人間と変わらない。そういえばファロさんは普段は人の体で、自由自在に亜人のようになれているな。あとは亜人と人の中間ぐらいのタイプ。これはソフスさんのように羽根などが常に生えていて、ファロさんのように人間の姿になることができないタイプ。ヴィーナさん達もこのタイプ。そしてトゥエンさんのように動物がそのまま二足歩行をしているタイプ。同じ猫の亜人の中でも、しっぽと猫耳だけのタイプからトゥエンさんのようなタイプまでいろんな人が歩いている。世の中には本当にいろんな人がいるなぁ。
しっぽや耳が生えている程度ならそういう亜人もいるかぐらいに思うけど、サッフィさんのようなタイプは最初はびっくりした。話せば怖い人ではないのはすぐわかったけど。外見で人を判断してはならないということをこの団に入ってより強く学んだ。人間だろうと亜人だろうといい人はいい人で悪い人は悪い人なのだ。もしかしたら団長はそういうのも一眼でわかってしまうのかもしれないけど。
ミッシェル「そろそろサンバ見にいこっか」
ロンメル「そうだな。おいお前達。そろそろ起きろ。こんな騒ぎの中でよく寝られるものだ。」
せっかくのサンバのお祭りなのに団長は仕事か。もう済んだのだろうか。いつもお疲れ様です。
* * * * * * *
事務室を後にしてサラさんと神殿内の廊下を歩いていた。
「あれからまだそんなに経っていないのに街はもう亜人と人も関係ないようですね」
「いつまでもいがみあっていても仕方がないと思う方が選挙で多く選ばれているんです」
「サニィは政治には関わってるの?」
「立場上難しいところですが、法案などのご意見番のような立場でしょうか。彼の発言は無かったことにもできますが」
イビポランマランは以前来たときに政治家達が色々やらかしてたから今も模索しているのだろう。神様がこんなに派手に歩いているのに政の中心にいないのは結構珍しい。見た目もマインドもチャラいからなぁ。全然政に関わる出立ではない。
「何かひとつに権力が集中しちゃうと昔みたいになっちゃうかもしれないからね」
「そうですね。国の方針を決めて、それに向かって進むのはやはり難しいですからね。そもそも何を持って国民の総意とするか、ですかね」
選挙で政治家を決めているなら極論言えば多数決でその国の方針とやらが決まる。私たちが訪れていた時の政権はあの政治家達のことだから以前の選挙は正直だいぶ怪しい。
街の様子を見ると、いい国のようには見えるけれど。間違いなく前の政権よりはまともになっているだろう。政治が正常に機能しているかは街の様子を見れば大体想像がつく。主要都市だけ煌びやかにしているパターンもあるけど。
「私も一番わからない分野かもしれないですね」
「ステラッチェ団長様ならきっといい政治家になれると思いますよ」
「いやぁ性に合ってないよ。融通が効かないルールとかはすぐ変えたくなっちゃうタイプだから。がんじがらめで国民の声を聞いてとか一番向いてないんです」
「でもステラッチェ団長様の意思ならみんな従ってくれるのでは?」
「そういう盲目的な感情にさせちゃう時点で独裁者の誕生だから、なおさらだめだろうね。」
「半分ぐらいは本音でしたけど。残念です。でしたら劇団だけでもこの国を拠点にしてくださってもいいんですよ?」
「そうですね。それは結構ありですね。今は予定が割と詰まっちゃってるんで落ち着いたら検討します。」
「まあ。落ち着くことなんてあるんですか」
「ないでしょうねえ」
別にサラさんの意見を断る訳ではないけど。
実際色々立て込んでいるからせっかくのお誘いだけど保留だ。
広い部屋に通された。増築した建物にあたる部分だろう。こちら側の建物は初めて入った。
豪華ってわけではないが広い部屋だ。机とソファあと本棚が壁際に並んでいる。そしてなぜか嘘みたいに大きなミラーボールが天井から吊るされていた。
「ここが」
「ええ。サニィ様のお部屋です。」
よく見ると間接照明が置いてあったり謎の匂いが立ち込めていて謎のチャラさがこの部屋から滲み出ている。なんだこの甘ったるいココナッツ臭は!窓の方にはベランダもあるみたいだ。なんだあの真っ白な寝椅子とテーブルは。それにパラソルって。ここはリゾート地のホテルのスウィートルームか何かなのか?
とはいえ神様の部屋なのを考えるとだいぶ質素ではある。
「それでサニィはどちらに?先程はあらぬ方向へ飛んでいきましたが。」
「ああ。多分また遠くまでいろんな方々と話に行ってるんですよ。そういうときはこれです」
サラさんが何かを部屋の隅から引っ張ってきた。
「銅鑼だ」
「まぁさすがステラッチェ様。ご存知でしたか」
「科国にも行ったことがあるんです。そこで見たことがありまして。なんなら倉庫にあった気が。」
「まぁまぁ!ちなみに公演でも使ったりは?」
「いやーあんまりないかな。もう倉庫に置きっぱなしだと思いますね」
「そうでしたか。この音が鳴るとサニィ様が飛んできますから気をつけてくださいね」
そういいながら身体を大きく捻りながら桴を振りかぶり銅鑼を勢いよく叩いた。とっさに耳を塞いだ。塞いでも音の振動が体から鼓膜へ伝わってくる。この銅鑼どうやら仕掛けがある。というか魔法か。無駄技術だ。
遥か山の方から光り輝く星が現れた。昼間だというのによくもあんなに光るものだ。そしてその光はベランダに降り立ち。
「サラどうしたんだい。あ!もういる!」
「もういるって。そっちが私を呼んだんじゃないか」
「そうだけど、別に今日来なくたって。せっかくだから遊んでいけばいいのに。何のためのお祭りだい?」
「これでも堪能したよ。どこの屋台飯も美味しかったよ」
「俺もそろそろいこうと思ってたところなんだ。サーフィン終わりに行こうかな〜」
セリフが取ってつけたようにチャラい。
再び登場この国のチャラ男神、サニィ。
この神様に敬称はいらない(私談)。
別に舐めてるわけではなく、まぁ敬っているわけでもなく、とはいえなんだろうな。たまに会うやんちゃな従兄弟のお兄ちゃんみたいな感じだ。悪いひとではないけど、ナンパとサーフィン、たまに神様ムーブをしている。そんな感じ。とはいえ腐っても(?)神様だ。力は一目置くところがある。
「で、私に話があるっていうのは?」
「ああ!そうそう!実はお願いがあるんだ〜」
随分るんるんだな。嫌な予感がする。
「面倒なことじゃないだろうね」
「全然!とってもwinwinで素晴らしい提案だよ!」
どうだかなぁ。この感じはただ面倒なだけなパターンだけど。
「実はね。あ!そうそうあれ!あれだよあれ!」
サニィの指差す方向に聳え立つタワーのような城ような建物が聳え立っていた。
やっぱりあれか。
「あれ、前はなかったよね」
「そう!やっと本館だけ出来上がったんだ!まだ内装とかも終わっていないところはあるけどどう!綺麗な建物でしょ!」
「まぁ立派な建物だと思うけど」
「あれなんだと思う?」
「博物館?」
「まーそういう面もあるけど残念!」
「ステラッチェ様。ここは面倒がらずに!」
表情に出ていたかな……。
サラさんも案外サニィに似てきた。
「んんー」
結構大きい建物だ。街のはずれとはいえ中心街から遠くにあるわけではない。街側の反対は山か。うーん。これは
「テーマパークだ!」
「違う!はずれ!」
「もう何なのさ。」
あんまり当てにもいってないけど。
「正解は……イビポランマラン初の魔法専門学校でした!!!」
クラッカーがはじける。紙吹雪が舞う。一体どこから。……サラさんが四方八方にクラッカーを撃っていた。クラッカーって撃つが正しい表現なのか?
「この田舎な多民族国家が世界と足並みを揃えるためにも、この国に優秀な人材を呼ぶためにも!まずは教育機関を充実させたいと思ってね!なんとかゴマすって予算を勝ち取ったんだ!」
さっき政治には直接関わってないとか言ってたような……。政治においてそういうなぁなぁは良くないぞ。筋は通ってるからちゃんと賛同しただけかもしれないけど。
「そうなんだ。じゃ結構完成間近って感じなんだね。」
「そうなんだよ!実は去年開校してね。生徒ももういるんだ。寮付きで優秀なら国からも援助も出す。この学校はこの国の人間だけのものじゃない。世界中の意欲と才能がある人たちが学ぶ場所にするんだ!人も亜人もどんな人でもね」
「へえ。いいじゃないか。サーフィンしてるだけじゃなかったとは」
「俺ってそんなに仕事しなさそうに見えるの」
「うん」
「うんって!ひどいなあ」
「いやぁイビポランマランの益々の発展を心から願っているよ。じゃお邪魔したね」
「ああ!これからも頑張るよ!ってなに帰ろうとしてるの!」
「ええ。話は終わったじゃないか。」
「終わってないよ!お願いがあるって言っただろう!?」
「さっきのクイズに付き合って欲しいって話じゃないの?」
「そ、そんなわけないじゃん。天然さんか?」
「違うし」
くそぅ。ここまできたらもう何をお願いされるか大体想像つく。
「ステラッチェ団長」
「はいはい。」
妙に真剣味を帯びて改めて私の名前を呼ぶサニィ。
サニィ「君に」
ステラッチェ「お断りします」
サニィ「早いよ!まだ要件言ってないじゃん!」
ステラッチェ「どうせ先生やってくれって言うんでしょ?」
サニィ「な、何故それを……」
サラ「団長様テレパシーの魔法が使えるんですね!」
ステラッチェ「違う!この流れだったら誰でもわかるよ!」
サニィ「そんな……絶対サプライズになると思ってたのに。ってなんで断っちゃうの!いいじゃん!そんだけいろんなことができるんだから教えられることはいっぱいあるだろう!?」
ステラッチェ「私だって暇じゃないし。むしろ忙しいし。」
サラ「お給料ならこの額でいかがでしょうか」
ステラッチェ「ふむふむこれはこれは」
サラさんの提示してきたボードで留められた書類には授業料が提示されていた。
なかなかいいお値段だ。
ステラッチェ「ってだめ!私だってこの国にずっといるわけじゃないんだから!」
サニィ「そこはキエリスちゃんに頼んで」
ステラッチェ「面倒だからやだ!」
サニィ「君以上に教師の才能がある人なんていないよ!人前に立ってアがることもないだろう?」
ステラッチェ「そりゃないけど。モノ教えるのは別だよ」
サニィ「演出指導してるんだろう?」
ステラッチェ「してるけど。私のはやって見せてるだけだよ」
サニィ「それでいいじゃん!」
ステラッチェ「いーやーだ。そんな時間取れない。他の学校でもその話はあってね。同じ理由で断ってるんだよ。」
サニィ「おお。」
サラ「さすがですね」
ステラッチェ「というかサニィが教えればいいじゃないか!私なんかよりももっといろいろできるでしょ!?」
サニィ「あ、俺校長」
バダン!ずっこけてしまった。
こんな古典的なリアクションをすることになるとは。
サニィ「わかった!一回!一回でいいから!ちょっと顔を先っぽだけ見せる感じでもいいから!」
ステラッチェ「ええ……」
サニィ「夢売る商人なんだろ!魔法を極めようとする同士じゃないか!学校のみんなもあのFlying Twinkle Caravanの団長の話を聞きたいと思うはずだよ!」
ステラッチェ「はぁもうわかったよ。一回だけね」
サニィ「やったー!!!ありがとう!」
サラ「団長様。それでは午前と午後の構成でこの金額でいかがでしょうか」
ステラッチェ「ほう。お勉強してきたねサラさん。ってしれっと午前午後ぶち込むな!一回だけだよ!」




