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Stellacce Twinkle  作者: 橿原るり
第二幕 リマク国編
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第41話 やさしい人たち

目が覚めるとベッドの上で眠っていた。

薬品の匂いがする。

見慣れぬ天井だ。

でもこの薬品の匂いどこかで……。


「気がついたか」

白衣を着たアメデオさんがぼくに近づきながら優しく声をかけた。

「ここは……」

「研……医務室だ。ガルニエだよ」

やはりここはアメデオさんの根城、医務室だった。

奥の部屋にこんなにベッドが並んでいたなんて。

「そのまま寝ておけ。話せるか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか。腹減ってないか?もう5日も寝ていたんだぞ」

5日、あれからそんなに経っていたのか。


最後の記憶は、岩の悪魔に力を放ったところまでだ。

夢を見ていたのか、現実なのか曖昧だ。

考えると頭が痛い。


「無理するな。限界まで魔力、プレンツの場合はどうか知らんが、とにかく力を使い果たしたんだからな。誰だってそうなる」


やっぱり岩の悪魔との戦いは夢ではなかったのか。

「お前には助けられた。お前がいなければもっと被害が出ていただろう。最初はこんな子供を連れて大丈夫かと思ったが、同行してもらって正解だった」

アメデオさんが近くの椅子を取り、ぼくの近くに置き座った。


「あの、あの後どうなったんですか?」

「ああ、お前が最後の奴にとどめを刺して終わったよ」

「……そうですか。あのみんなは」

息を飲んだ。

聞きたくないけど、ぼくが聞かなければならない。

「ティカは無事ですか?」


膝に置いていたアメデオさんの拳がぎゅっと握り締められた。

「落ち着いて聞くんだ。」


アメデオさんは話してくれた。

あの後、負傷した人達を洞窟から脱出し、すぐさまガルニエに運んだこと。

中には間に合わなかった人がいることを。

その中にティカも含まれることを。 


「——プレンツ!!」

ドアを開けてステラッチェ団長が入ってきた。

「おい。静かにしろ」

「ごめん。えっと、その元気かい?」

「元気ではねえのはわかるだろ」

「そ、そうだけど——話を聞いたの?」

「はい」

涙が溢れてくる。声が裏返りながら返事をした。

「……ごめん。私のせいなんだ。私が強制してでも村に置いておくべきだった。前日の夜にも説得はしていたんだ。ティカちゃんは私達の帰りを待っていて欲しいって。でもティカちゃんは聞く耳を持たなくてね。おばあちゃんもティカの好きなようにさせて欲しいというから。……でも結果は———」


前の日の夜、そんな話をしていたとは。

ぼくやニニギさん達、男性陣は団長が作った小屋で寝ていたから知らなかった。

「プレンツ。ティカちゃんは君を庇った。けど、君の責任は一切ない。私達大人が不甲斐なかったからだ。思う存分私を殴ったって受け入れる。——君はやさしいから、こうは言っても後ろめたさを感じてしまうかもしれない。けど、誓ってプレンツのせいではないよ。君の力が足りなかったからでもないんだ。そこだけはわかって欲しい」


ぼくの手を取り、真っ直ぐぼくの目を見てステラッチェ団長はそう言ってくれた。


ぼくなんかよりもこの人の方がよっぽどお人好しで優しい。

あくまで自分たちに責任があるという。

ぼくでもなく、そして岩の悪魔のせいでもなく。


岩の悪魔か。彼らの話を聞いた後では悪魔はぼくたち人間かもしれない。名称を改める必要がある。


「団長を……」

「ん?」

頬を伝わる涙を拭いながら。

「団長を殴ったりしません。お気遣いありがとうございます。わかりました。自分を責めたりなんてしません。けど、団長たちに無責任があるとも思っていないです。こうなってしまったのは歴史のせいです」

「……うん。そうかもね。その意味でいえば歴史を断ち切ることができた。君のおかげでね。そして歴史を断ち切った後は君が歴史を作る番だ。そうくればやることはひとつ。早く元気になるんだよ」

「はい。ありがとうございま。」

「うん。お邪魔したね。アメデオ、何かあったら教えてね」

「ああ」


団長は手を振って病室を出ていった。


「俺からも謝らなければな。済まない。俺らが力不足だった。見立てが甘かった部分があった」

「いえ、皆さんの動きを後ろから見てました。力不足だったなんて思ってないです」

「何かあったときの為にあれでもセーブしていたんだ。洞窟の崩壊も恐れていたのもあるが」

「ヴィラコチャが顕現することを、ですか?」

「そうなったらあちらに敵意が無ければそれでいいが、あればどうしたって俺らは何をしても終わりだよ終わり。そっちじゃなくてあの未熟者の方だよ」

未熟者……ステラッチェ団長のことか?

「団長は別に未熟者って感じではないように思えますけどね」

「——あいつはただの半人前だ。怒り狂って何をしでかすかわからん。現地救護班目的もそうだが、あいつのストッパーとしても岩のアイツらに全力を出すのは避けたかった」


なんだか随分団長に対して当たりが強い。

けど、気を失っているところを覚ましてくれた時に見た団長を思い出すと今でも身震いしてしまう。


「だがそんな半人前なあいつでもお前やあのティカって子のことは自分よりも大事に思っていたと思う。半人前だがお人好しは人一倍だ。お前が寝込んでいる間も毎日どころかちょくちょく見に来ていた。命には別状はないと伝えてはいたんだが、やはり自分のせいだと考えていて気が気でなかったのだろう」

俺が診ているのにな。

そういいながら立ち上がるアメデオさん。

「明日には元気になるだろう。空になった魔…ああ、もう魔力でいいや。どうせ似たようなものだ。急激な魔力欠乏症による意識混濁と身体機能低下によるちょっとした免疫不全と呼吸不全による低酸素状態になっただけだ。今はもう身体が魔力を作り始めていいサイクルが回り始めている頃合いだ」

そういわれると原因はともかくそれなりに重症だったような気がする。五日も目を覚さなかったんだからそれはそうか。


「だから治すも何も本人の力が戻ることを祈るしかない。それにお前のケースはより特殊だ。それだけ意識もしっかりしていれば大丈夫だろう。腹が減ってきたら教えるんだぞ。何か食べれるなら食べた方がいい」


ステラッチェ団長のことをお人好しだと言っていたけど、アメデオさんにだって大きな隈ができている。きっと団長が来てくれていたのはアメデオさんの負担をかけすぎないようにしていたのだろう。


「はい。ありがとうございます。実はもうお腹がペコペコでして」

「わかった。上行ってくるから横になっておけ」

「はい。すいません、ありがとうございます」

「気にするな。これが俺の仕事だ」



* * * * * * *


急激な魔力欠乏症。

力を使い過ぎれば誰だってああなる。

もし、ほぼ魔力=ATPならと想像しての診断だ。


身体の魔力を使い切るというのもそれは才能だ。しかしそれは自分の意思で、だ。


やはりどこかでストッパーが掛かるはずだ。

気を失ったり、手足が痙攣したり視界が狭くなったりするだろう。


しかし、プレンツの力をモロに当たった者はどうなる?

もし岩の悪魔に振るったように完全に魔力を無くしてしまえば、人はどうなるのだろうか。

ほぼ魔力の固まりのような神であればどうなるのか。

もしかしたら帝国の悲願は叶えられていたのかもな

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