第26話 憧れの純白タワー
館内を案内してもらったあと今日の泊まる部屋を見せてもらった。
窓があってベッドが二つとタンスと机が並んでいた。
壁の木目と部屋の天井には照明がついていた。
シンプルなインテリアだけど落ち着いていて過ごしやすそう。
「二段ベッドの部屋もあるけどどっちがいい?」
「私はこの部屋がいいです」
「そう?じゃここにしよう。枕と布団は突き当たりの倉庫室にあるから取りに行こうね」
「わかりました!」
「よーし!ざっくりと案内終わったから寝具を運んだら食堂に行こう!」
「ついにご飯ですね!」
「うん!昨日のティカちゃんのおばあちゃんのご飯も美味しかったな〜。塩と胡椒の味付けは万国共通に美味しいんだね」
「えへへ。おばあちゃんも喜びます。ここのご飯も楽しみです!」
「パンケーキとパフェ楽しみだなぁ」
「さすがにそのふたつは出ないと思いますよ」
先程通った廊下をキエリスさんと歩いた。チキンのいい匂いが漂ってくる。着いたのは長机と椅子がいくつも並んだ広い部屋だった。舞台へと続く道はほとんど大理石でできているけど生活をしているスペースは木材で使われているところが多い。この広場も壁や天井は木材だ。端っこの方にカウンターがある。お酒の瓶が並んでる。あと多分食器棚?
広場には誰もいなかった。
「誰もいないですね」
「いるよ。ほらあそこ」
「え?」
よく見ると部屋の隅で人が倒れていた。
「うわあ!!」
「大丈夫。いつものことだから。ベールさん!いつもお疲れさまでーす!もう少しでお昼だよ〜」
声なき声、いやうめき声を上げながらベールさんと呼ばれた人は拳を上げた。
あれはお昼ご飯を喜んでる?
小声でキエリスさんに聞いてみる。
「あの人、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。いつものことだから」
あんな人も劇団員なのかな。いろんな人がいるなぁ。
「最近は魔法の仕上げしてるから負担が大きいんだよきっと」
「へ、へぇ」
ここにいるのに舞台の負担がかかるのかな。それかあの人の出番はもう終わったとか?
そんなことを考えていたら扉が開いた。私よりも小さい子達が台車で大きな銀色の蓋のついたトレーを持ってきた。
「おや?」
「この時間にもういらっしゃるとは」
「「珍しい」」
「あ、ランラン、シンシン。ティカちゃん、この子達がミッケと話してた子達だよ」
「「初めまして!」」
「ランラン」
「シンシンです」
「は、はじめましてティカといいます。ふたりがミッケさんのところでお手伝いしてるの?」
見たところ10歳ぐらい?双子かな。とっても似てる。ふたりで左右反対に髪を結んでいる。とってもかわいい。あんまり見ない服装だなぁ。
「「結果的にはそうです」」
「けっ、結果的には?」
「ふたりは仕えてる人がいてその人のご飯を作るついでにみんなのご飯を作るのを手伝ってくれてるんだよ」
「そうなんだ〜まだ子供なのに偉いね〜」
思わずふたりの頭を撫でてしまった。
「「むふふ〜」」
よかった。嫌がってはないみたい。
「あ〜なにそれなにそれ私もやる〜」
「いえこの辺で」
「まだ仕事があるので」
「ええ〜仕方ないなぁ〜」
そうランランちゃんとシンシンちゃんがいうとテキパキと食器や大きな銀のトレーを並べていく。
「ではキエリスさん、ティカさん、ベールさん先に食べちゃってくださいね」
銀のトレーの蓋を開けると小麦色に焦げ目がついたチキンが!香ばしい匂いとハーブとソースの匂いが鼻を貫く!大きな底の深いお鍋にはコーンスープ。バケットにはいろんな種類のパンが並んでいる。そしてこの氷が敷いてあるトレーは一体?
「「これですか?アイスクリームです」」
「アイスクリーム!?」
「「ミッケさんが急に作ると言い始めて用意しました」」
つ、ついにこれを食べる日が来るとは。クチャクティムイに来てから存在は聞いてたけどなかなか出会えなかったアイスクリーム。
なんてオシャレな響き!
「「ではごゆっくり」」
台車を押しながら双子ちゃんが部屋から出て行ってしまった。
「その反応、もしかしてアイスクリーム初めて?」
「はいそうなんです!」
「(そういえばリマクはあんまり電気も通ってないし、外でも氷を使った飲み物ってなかった気がする。牛さんはいっぱいいるらしいから冷凍技術がそんなにない感じなのかも?)そっかそっか。じゃ食後のデザートも楽しみだね!」
「はい!!!」
お皿にチキンのソテー、ソテーに入っていたじゃがいもなどのお野菜、コーンスープ、パン、チーズ、牛乳を取った。
キエリスさんはベールさんにも配膳してあげてた。背中バシバシ叩いて『ほら頑張って!ご飯だよ!!』と言っている。優しさは感じる。
「みんなはまだ舞台かな?ま、そのうち来るでしょう!ってことで!いただきまーす!」
「いただきます!」
ここは建物の中だからパチャママへの感謝はジェスチャーだけ。きっとパチャママがこの巡り合いを助けてくれたんだ。ありがとうパチャママ。
チキンをナイフで切り分けて一口食べた。
んんっ〜!香ばしい皮目とあとなんていうんだろう。食べたことがないソースの味。まろやかなんだけど味はしっかりしていて風味が鼻を抜けていく。舌でも鼻腔でも味わえる、そんな料理。
コーンスープもとうもろこしのいいところだけが詰まってる感じがしてとっても濃厚!
どれを食べてもすっごく美味しい。ミッケさん、双子ちゃん、こんな料理が作れるなんてすごいなぁ。
驚きつつも目の前の料理を味わっていたらいつの間にか食べ終わってしまった。お腹ももういっぱい。いや!まだ終わらない!そうまだメインディッシュ…は今食べたか、デザート様がある!
ああ、デザートがある食事なんてしかもお昼ご飯になんて贅沢すぎる。
ひんやりした銀のトレーの蓋を開けた。振動で敷いてあった氷がカランと音を鳴らせた。うんうん、なんとも掻き立てられる音!
半球になった銀色の大きなスプーンでくるりとアイスクリームをくり抜いた。
ああ、はじめまして、こんにちは。いつかあなたに会える日を心よりお待ちしてました。
席に戻ってスプーンでアイスクリーム様を削った。ついにこの瞬間が!
「いただきま〜」
「本当にいた。やぁ、ティカ」
扉が開いた。
大きな口を開いてアイスクリーム様を迎え打とうとする私をプレンツが見ていた。
「あ、続けて、どうぞ」
舌にアイスクリームが落ちた。
冷たいからかな。味があまりしなかった。




