第24話 ガルニエご案内〜
「キエリス。ガルニエの中を案内してあげて。今日泊まる部屋とかその他諸々」
団員達にも紹介もしたいけど、とりあえずガルニエの中を見てもらわなくては。ないとは思うけど居住スペースで文化的に合わないところとかがあるかもしれないし。
「了解!団長はどうするんですか?」
「私は舞台のほうに行ってくるよ」
丸一日放っておいてしまった。オレーナならちゃんとやってるとは思うけど座長がいるに越したことはない。
「あーそうですね」
「案内が終わったら食堂でお昼を食べよう。ティカちゃんは何か苦手なものある?」
「特には。なんでも食べますよ!」
「ほんと?よかった。すごいね。私は辛い物は苦手でね」
「団長さんでも苦手なものってあるんですね」
私はティカちゃんの中でどんなイメージなんだ。
「ピリ辛ぐらいなら食べられるんだけどね。ティカちゃんは辛い物は?」
「私は好きですよ!この国には香辛料を使った料理も多くありますから」
「そういわれるとそうかもしれないね」
「私も辛すぎると苦手かな~。あと苦いのも苦手~。コーヒーはミルクもお砂糖も必須~」
顔芸をしながらそんなことを言うキエリスちゃん。
「そういえばリマクはコーヒー有名だよね」
「はい。アンデスのコーヒーときたらリマク、と豪語している、らしいです」
政府の観光大使みたいなことを言うなぁ。
確かにアンデス地方のコーヒーと聞くとなんだかおいしそうな響きがするな。
今度買っておこう。
「ブラックも香りは好きなんだけどな~ティカちゃんはブラック飲める?」
「いえ、ブラックはちょっと苦くて」
子供は苦いのは苦手なのはどこでも共通認識か。そういえばプレンツは前ブラック飲んでいたような、違うっけ。
「いいんだよティカちゃん。そういえば苦みに敏感なのは若い証拠なんだって」
「今度は子供アピールかいキエリス」
ちらっと私を見ながらそんなことを言われた。私は若くないとでも!?まだ25歳だよ!いやもう立派な大人か。それでもまだ若いはずだ。
「ちっちっち。身体はぴちぴち。心はアダルトってことですよ団長」
「ハードボイルドはどこに行ったのさ」
「奴ならサンリスタニアの寝湯で寝てるぜい」
「茹でられてるだけじゃないか」
疲れていると思ってキエリスには舞台のほうは休んでもらおうと思ったけど、ここまで口が回るならやはり出てもらおうか……。
大体そのティアドロップのサングラスはどこから持ってきたんだ。魔法の無駄使いだ。
それだけキエリスも身体的にも魔法のほうも力がついてきているということか。
もっと有効活用してもらえると助かるけど。
「……もしご飯食べ終わったら疲れたろうから部屋で休んでいてもいいからねティカちゃん」
「いえいえ!私はキエリスさんの魔法におんぶにだっこだっただけですから元気いっぱいです!」
「そうかい?さっきも言ったけど長旅は案外疲れが溜まるものだから無理しないでね。あ、大浴場もあるからもしよかったら入ってね」
昨日は夜更かししておしゃべりしちゃったしね。
「はい!ありがとうございます!」
「じゃ団長また後で~」
「ステラッチェ団長さんいろいろありがとうございます!」
「うん。またねティカちゃん」
* * * * * * *
「お客さんの通る方は廊下とか広いけど私たちが住むスペースはそんなに広くないから気を付けてね」
キエリスさんに連れられて正面玄関から入って居住スペースに通じる廊下を進んでいた。
「すごく綺麗な建物ですね」
「そう?」
「はい。こんな立派な建物入ったことないです」
「そういわれると照れちゃうなぁ。それでここがキッチンね。誰もいないみたい。あ!そうそうティカちゃんぐらいの子はプレンツの他にもいるんだよ!大体キッチンにいるんだけど、いないか~」
「前舞台でも見かけました!あの紫色の髪の子ですよね!でもあの子は私よりもっと小さいような……」
「あーーーザーラさんね。あのひとはまぁ。小さいけど、あの人こそ、身体はこども、心は大人?みたいな?大人という言葉では片付けられないけど」
歯切れの良くないことを言うキエリスさん。
キエリスさんにしては珍しい気がする。
「はぁ」
「うちの団は亜人の人も結構いるから、見かけによらないんだ。ザーラさんは亜人じゃないけど」
キエリスさんは結構行き当たりばったりで話すから説明はあまりうまくなさそう。
結局ザーラちゃんは一体何者なんだろう。そういえば鏡みたいなのがザーラちゃんの周りをくるくると回っていたような。
あんなに身体は小さいのに魔法はすごかったなぁ。
「ちなみにザーラさんはステラッチェ団長よりもすごいよ」
「そ、そうなんですか……?」
何がすごいんだろう。実力?大人の魅力の方?
キッチンの中が明かりがついた。リマクは中心街や国の建物、お金持ちの家しか電気は通ってないから私にとっては新鮮。
廊下にも電球があった。そんなところにすらも私は驚いていた。
「あ、ミッケさんだ」
白い衣装。いや、あれは料理人の服だ。茶色い髪がぼーぼーだ。髭も生えてる。料理人というより、牧場のひとみたい。
キエリスさんが扉を開けてキッチンの中に入った。私もついていく。
中は金属の調理棚が並んで結構広い。おいしそうな匂いで充満している。
ここにいるだけでおなかが減っちゃう。
「キエリスちゃん。あら、お友達?」
「前団長が話したでしょ。討伐隊の」
「はじめまして。ティカといいます」
「あーはいはい。討伐隊っていうから屈強な男を想像してたからびっくりびっくり。はじめましてミッケだよ。ここのコックだよ」
「今日はティカちゃんここに泊まるんだ。だからミッケさん、ティカちゃんの分もご飯お願いしますね」
「あらそうなのね。何か食べたいものある?なんでも作るよ」
「じゃあパンケーキとパフェでしょ?あとはアクアパッツァと」
「キエリスちゃんじゃなくてティカちゃんに聞いてるの」
「えーいいじゃん」
キエリスさん相変わらずですね……。
「アクアパッツァってなんですか?」
「気になるかい?簡単に言えば欧州の魚煮込み料理かな。オリーブオイルとニンニクと香草で炒めて、白ワインで煮込むんだ」
「ミッケさんこんなだけど料理はとっても上手なんだよ!」
「こんなってどういう意味なのキエリスさん」
「えー髭生えてるし、だらしなくなり始めたおじさんみたいな?」
「そんなおしゃれでやってるのに」
「「え?」」
「え?って!ティカちゃんまで!ひどい!」
キエリスさんとの阿吽の呼吸がもう既にできてしまった。
「うふふミッケさんごめんなさい。ついキエリスさんに乗っちゃいました。アクアパッツァ初めて聞きました。食べてみたいです!」
「いいよ。じゃ準備するよ」
「あとパンケーキとパフェもね」
「しぶといなキエリスちゃんは」
「お~ね~が~い?」
「かわいい声でくるっと回りながら言ったってねぇ。ま、なんとかしようか」
「ありがと!ミッケさん!その髭ダンディで嫌いじゃないですよ!そういえばあの二人は?」
「調子がいいんだから。ランランとシンシン?上で卵を取りに行ってるんじゃないかな」
ランラン、シンシン?あまり人の名前には使わない響きだ。きっと私の知らない異国の人なのだろう。それに……
「卵?」
「上で鶏を育ててるんだ。鶏が産んだ卵を取りに行ってるんだよ。実はさっきまで近くの町で買い出しをしていたんだ。アクアパッツァの材料もあるから作るよ。キエリスちゃんまた中心街までよろしくね」
「もちろんです。いつでも呼んでくださいね!」




