第17話 鏡の幼女
今回できれば私、プレンツ、ニニギの他にあと2人を入れたい。
要員としては戦力と医療班だ。
その二つを担えるザーラが来てくれるのが一番いいんだけど。
「ザーラ。お疲れ様」
「朝から見ないと思ったが、気づくと3階にいたのお。団長様よ」
「見えていたかい?ちょっと客人が来ていてね」
「どうせまた野暮用なのじゃろうて。放っておけばよいものを」
薄い布を何枚も重ねた舞台衣装。色合いは暗めで、紫色の髪は時々赤く煌めいて見える。そして両目の瞳に花の模様がある幼女。私の左目のように。
相変わらず、身体の周りくるくると装飾も何もないシンプルな一枚の鏡が回っている。
「お察しの通り。ちょっと厄介事でね。」
「全くお人好しなのだから。いつかそのお人好しがその身を滅ぼすやもしれぬぞ。……とはいえ何も聞かずにものを申す妾ではない。話は聞こうかのお」
「ありがとうザーラ」
そして、討伐隊のことや岩の悪魔のことを話した。時折相槌を取りながら静かに聞いてくれた。
「ふむ。ヴィラコチャの仕留め損なった第三のヒトのお」
「本当だと思う?」
「さぁ?なんとも言えんなぁ。妾とてヴィラコチャなる神に会ったことがあるわけではない故になあ」
「私とニニギとプレンツは参加しようと思ってね。できればザーラにも参加してもらいたいなと思ったんだ」
「ふむ。プレンツか。あの奇妙な子供。何故あやつを?」
「訳ありでね。」
小指を立ててみた。ザーラこのジェスチャー知ってるかな。
「ああ、あの少女か。ほお。ませとるのお」
さすがザーラ様。何もかも察しが良くて助かる。
「ふむ。あの奇妙な力ならヴィラコチャの忘れ形見とて葬れるやもしれぬなあ。所詮は魔力で動いておるのだろうし」
一呼吸置いてザーラは続ける。
「妾はやめておこう。理由はふたつ。ひとつは団長様のいう一番最悪の事態はその岩の悪魔の悪行を、まだ生きていると知ったヴィラコチャが現れることじゃ。ヴィラコチャがウヌ・パチャカティなる大陸規模の大津波を起こした場合、妾、ニニギ、そして団長様がいないとなると被害はこの国だけではない。ガルニエも危なくなる。キエリスがガルニエを移動させるとはいえ、さすがに被害が出ない場所までガルニエを転移させるのは無理であろう。———ああ、秤の国に行ってしまえば良いか。それでも最悪の事態だがなぁ」
そう言いながら私を覗き込んでいた目は天井、いやガルニエに目線を移した。
そうだった。うちの団最大戦力がみんな離れてしまうとヴィラコチャがもし現れた際に対応できない。ガルニエごとの転移は私のサポートがないとまだきつい。人だけ転移だけならなんとかなるかもしれないけど、ザーラの言う通り大陸規模の大津波ならおそらく、タイミングによってはキエリスだけでは逃げきれないかもしれない。
「そうだったね。自分で言っておいて気が付かなかったよ」
「ヴィラコチャのお。会ったことはないが聞いたことはある。南米大陸の創世の神、知らぬ方が祟られるわい」
さすがザーラよくご存知で。今度ザーラにも脚本考えてもらおうかな。
「キエリスにも移動だけは手伝ってもらおうとは思ってるんだ。その洞窟結構遠いみたいだしね」
「ならやはり妾はガルニエに残っていた方がよいのお」
「そうだね。じゃもしヴィラコチャが出てきちゃったら頼むねザーラ様」
ウインクをしながらお願いしてみた。
「ふふ、妾が創世の神に敵うわけがなかろう。———団員達だけは救ってみせよう。それに救えなかったとしても———」
「それはできればやらないで済ませたい。ま!ヴィラコチャに勘付かれる前にサクッと片付けるよ」
「ああ、妾もそう願おう」
やはりザーラを誘わないにせよ、聞いておいてよかった。こんな幼児体型だけど、ご意見番として一度は相談しておくべきだ。うちの団のカウンセラーもお願いしようかな。
「そういえば理由がふたつあるって言ったね。もうひとつは?」
「ああ、単純に妾が斯様な場所まで行くのは面倒じゃ」
カウンセラー任命は撤回する。
このものぐさ女神め。




