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Stellacce Twinkle  作者: 橿原るり
第二幕 リマク国編
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第10話 岩の悪魔

「お客さんがいるなら今日の夕飯は豪勢にしよう」

 そういってティカとアプさんはどこかに行ってしまった。部屋の窓はもう陽が落ちている。

 3人で豆を食べて待っていると続々と討伐隊のメンバーが集まってきた。そしてティカとアプさんが夕飯を持ってきた。


 そしてアパさんが音頭を取った。

「みんな!本日まで手を貸してくれてありがとう!人攫い最後のひとりをここにいるニニギさん、フレンさん、プレンツさんが確保してくれた。攫われた子供達も無事だ。今日はこの3人への感謝の宴だ。乾杯!」

「乾杯!!」

 討伐隊のメンバーは10人ほど、それにぼくらで宴会が始まった。

「お三方、本当にありがとう。どうやら腕が立つらしいな」

「我らは所詮は芸者。そこまで腕は立たないさ」

「そう!この人達あのFlying Twinkle Caravanの団員なんだって!」

「そ、そうなのか?噂には聞いています。皆優れた魔法の使い手だと」

「魔法のことを褒められるのは嬉しいけどどっちかというと舞台そのものを噂されたいっすね〜!」


 フレンの言う通り魔法は舞台に立つ時の演出手段であって魔法そのものが売りではない。

 とはいえやはり目立つのは魔法の技術なのは仕方がないか。どちらにせよティカが言っていたようにぼくたちは噂されているんだな。


「アプさんも是非見に来てください!結構面白いと思いますよ」

「あぁ、岩の悪魔の討伐が終わったら見に行きたいな」

「そのさっきから出てる岩の悪魔ってなんですか?」

討伐隊面々が顔を合わせる。

「実はここから南東にある山で奇妙な噂があってな。なんでも大男が夜になると出てきて近くの村などを襲うのだそうだ」

 神妙深い表情をしてアプさんが岩の悪魔について説明してくれた。


* * * * * * *


 太古より神が作ったとされるこの地には様々な伝説が残っている。

 創世の神、ヴィラコチャは天と地、そして冥界、宇宙を作った。時空そのものを作りながらこの地に降り立ったときに、この世界を治める者が必要だと考えてヒトを作ったという。そのヒトはとても力が強く丈夫だった。ヴィラコチャはこの地をより豊かにする為に彼等に使命を与えた。

 しかしそのヒト達は傲慢だった。ヴィラコチャが姿を消すとそのヒトは大地を荒廃させて水を汚したという。事態を知ったヴィラコチャはこれを憂いて大津波を起こし自らが作ったヒトを一掃した。その大津波はウヌ・パチャカティといわれ、世界を洗い流す規模でアンデス山脈全てを覆ったともいわれている。


 そしてヴィラコチャは新たなるヒトを作った。

 新しいヒトは力は弱く頑丈ではないが知識と秩序を持たせた。すると大地に文明を築き豊かに発展したそうだ。

 その第二のヒトこそが我々の祖先だと伝えられている。


 そんな我々の祖先を作ったヴィラコチャはその様子を見送ると海に消えてしまったそうだ。そしてヴィラコチャが創造した神や大地の力を持ったものがパチャママと呼ばれる神となった。他にもこの地に未だに存在するという神々を我々は慕い畏れを持って接している。


 これは太古の話だ。所謂、終末の日以降我々の祖先が地上から逃れて地下に潜った時代だ。これも言い伝えによると、だ。我々が地下に籠る間にヴィラコチャは再び海から現れ大地に降り立ったそうだ。そしてヴィラコチャは再びヒトを作った。そのヒトは峠に橋をかけて、我々がいない間も田畑を整備し再び草木が生い茂るように大地を耕した。しかし何故かまた大津波が起きてそのヒトは一掃されたと。その津波がただの地殻変動によるものか、終末の日によるものだったのか、はたまたヴィラコチャが起こしたウヌ・パチャカティだったのか。それはわからないが、人類が高度な文明を持ち、破滅を招いてもヴィラコチャはこの地を捨てていなかった。


 さて、そんな伝説が数多くあるこの地で、事件が起きた。

 ある村の畑が一晩明けると荒れ果てていた。橋も壊され、大きな獣が暴れ回った後のように森の木々が薙ぎ倒されていた。

 魔獣の群れにでも襲われたのかと調べたがそんな痕跡はなかった。


 またある嵐の後に村の家が崩落し、家の住民が犠牲になった。生き残りがいたので聞いてみると家が壊されたのは嵐のせいではない、分厚い雲が月明かりすらも通さなかったので見えなかったが大きな何かが家を破壊したのだそうだ。


 とはいえ折れた木が風で家を突き破っただけでは?大きな物音は風が強かっただけでは?とまともに誰も信じなかったそうだ。再び魔獣による被害を疑ったがそんな痕跡はなかった。


 またある晩、再び村が襲われた。家や田畑を破壊されてたそうだ。逃げ惑う村人が火をつけて家を壊す何かに向けて投げるとそこには大きな岩や土でできた巨人がいた。その巨人は火が通じなかったそうだ。


 実はその村だけではなくその周辺地域では似たようなことが稀に起こっていたらしい。

 その岩の巨人は一体何なのか。明らかに悪意を持った行動をするその巨人を調査すべく調査隊が結成された。戦闘向きの魔法を使う者もいる調査隊だった。その調査隊はある山の洞窟を見つけ、そこに岩の巨人がいると想定し洞窟に向かった。


 しかし今この時も調査隊は帰ってきていない。

 その洞窟は周辺の村からは不吉な洞窟とされ、誰も寄りつかない一帯だそうだ。

 そんな調査隊すら返り討ちにする岩の巨人を恐れて村の人々は悪魔と呼んだのだ。岩の悪魔。この国は悪魔も有名でな。今度大きなお祭りがあるんだがその祭でも悪魔を模った催しが行われるぐらいにはこの国に根付く概念的な恐怖の存在だ。


 そんな岩の巨人は岩の悪魔と呼ばれるようになった。そしてその岩の悪魔はヴィラコチャが作った我々人類を超える新しいヒトなのでは、などと騒ぐ輩も出てきた。


 こうしてはおけない。今度は調査隊などと甘いことはいわず、討伐隊を組むことになった。各地の魔法の使い手を集めたのがここにいる人間だ。

もっとも調査隊ほど腕の立つ者は集まらなかったが。




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