第19話 誉あるサンリスタニア王国よ
プレンツが舞台に立ってから数週間、今晩をもってサンリスタニア王国での公演を幕を閉じる。
泣いたって笑ったって今日が最後だ。
今日はサンリスタニア国王も観に来る。
会場に観客を入れる前にみんなを舞台に集めた。
演者からベールのような裏方そしてオーケストラの演奏をしてくれたサンリスタニアの演奏家たち。
オーケストラ奏者達には本当に感謝しかない。
今回ばかりはオーケストラは無理かと思っていた。だけど王国の手助けもあって王国最後のオーケストラによる讃歌だと、国に残った優秀な演奏家達が参加してくれた。
今日の公演を終えたら国を離れると言っていた人もいた。みんな本当に最後まで付き合ってくれてありがとう。そしていつもオケを取りまとめてくれるフェリックス。君なしではこの団はここまで来れなかった。
音楽の調和があるから劇は煌めき、夢の世界へ飛び出していける。
「みんな!今日でサンリスタニア王国の公演は完了する!演者も裏方もそしてサンリスタニアのオーケストラの皆さん!この日を無事に迎えられるか心配だったけどみんなのおかげでここまで来れた!本当にありがとう!さて、本気の締めの挨拶はこの公演が終わってから打ち上げでやるからここら辺で……みんな〜なんで舞台に立つの〜〜〜????」
舞台の練習や本番前に毎回やってるこのくだり。このメンバーでは今日が最後だ。
「舞台が好きだから〜〜〜!!!!!」
拍手と共にみんなの笑い声が聞こえる。つられて私も笑ってしまった。
「よーしみんな最後まで気を抜かないで行くよー!」
「「「「おーーーー!!!!」」」」
今まで通り私達の舞台は大成功した。
今回の公演ツアー最大の出資者のサンリスタニア王国、その国王から最後に挨拶がしたいというので舞台に来てもらった。
国王は公演初日にも観に来ていた。あの時も泣いていたそうだけど今日も泣いていた。いやもう涙と鼻水と何だかよくわからない汁で顔がぐちゃぐちゃだ。
ちなみに部外者を舞台に立たせるなんて国王だろうが神様だろうが普段は私はさせない。
けど今日はもしかしたらこの国最後の『晴れ』舞台になるかもしれないと思ったから許した。
しかしそんな顔で国民の前に立っていいのか。
「サンリスタニアの民よ!よくぞ今まで国に残ってくれた!我は昔は傲慢で肥満でチーズが好きで温泉が好きで喧嘩が好きな碌でもない小僧だった!」
ひどい開幕だ。今日で最後なんだぞ!?
「しかし母上が死に父上も病で倒れた。その隙に近隣の国が攻め入ってきた時もあった。そんな時に私は国王となった。国王になってしまった。我には皆も知っている優秀な兄上がいたが、名誉の戦死を遂げた。我はずっと兄上には敵わなかった。剣も魔法も勉学もだ。しかし兄上がいなくなってしまったから我に王位継承の権が来た。我はずっと劣等感を持っていた。しかし兄上はこの碌でもないガキをいつも叱り、諭し助けてくれた。今でも兄上の夢を見る。兄上は天に昇ったが、昇ったからこそ我と兄上との二人三脚でこの国を治めることができた。そしてそれはこの国民あってこそだ」
だん!と一歩踏み出して国王は続けた。
「我らが迎え撃つのは絶望という未来かもしれない!しかし!希望を持ち続けるのだ!誇り高きサンリスタニア王国よ!!!」
演説が終わった。どうなるかと思ったがちゃんと締めてくれた。
国王が私に手を差し伸べた。力強い眼差しだが涙で顔が赤い。
私も手を差し伸べ硬く握手をした。
こうしてサンリスタニア国王に美味しいところを持っていかれてサンリスタニア王国の公演は幕を閉じたのだった。
国王がなかなか舞台を降りないので国の役員が痺れを切らせて舞台袖に引っ込ませていた。その際もずっと『サンリスタニア王国万歳!』『うちの王国民演奏うますぎ!?』など叫んでいた。舞台を離れる時は静かにハケてほしい。
その後は団員とオーケストラ奏者みんなと打ち上げをした。
大いに盛り上がった。一部羽を伸ばしすぎた馬鹿共に鉄槌を下したところでお開きをした。
何したのかって?女装したニニギが怪獣の真似をするフェルナンを剣技で倒してた。酔っ払いすぎだ頭を冷やせ。
そして翌朝。
サンリスタニア王国を離れる時が来た。
ガルニエの周りには向こうまで地面が見えないほど人が集まっていた。
国王がガルニエの前まで来てくれた。
昨日とは全く違う毅然とした表情だ。本当に同じ人かな?
「ステラッチェ団長殿」
「はい、国王陛下」
「このような時に我が国での公演をしていただき心より感謝申し上げる。」
「いえ、サンリスタニア王国民は私達Flying Twinkle Caravanを最初から最後まで暖かく迎えてくれました。地域や国のご理解があっての我々の舞台です。感謝を申し上げたいのは私達です」
「心優しい団長殿よ。ありがとう。Flying Twinkle Caravanよ!最高の舞台だった!これからも達者でな!」
キエリスと手を繋いだ。
キエリスの目が潤んでいる。
団のみんなにはこの国の未来は伝わっている。キエリスは事実を知った時激怒した。
何故言ってくれなかったのかと。何故救えないのかと。転移能力という血の魔法を宿す彼女だからこそ、救える手段を持っているからこその怒りだった。しかしそれが本当に救いにならないことを彼女もわかっていた。
ごめん。キエリスには伝えるべきだった。
だが器の大きいキエリスちゃんはすぐに切り替えて今まで以上にみんなを率先して導いた。
私にとって君は眩しい。
手を振るサンリスタニア王国の人達に私達も応えながら王国を後にした。




