第17話 瞬く星へ
会場に観客のざわめきが聞こえる。緞帳が降りていて舞台袖も薄暗い。オーケストラピットからチューニングの音が聞こえる。
演者達も緊張しつつもこの状況を楽しんでいるのが表情からわかる。
ぼくは下手側から舞台袖に飛んでくる流れ弾を消すだけ。観客が見える位置には行かない。なのに舞台にいるだけでゾワゾワしてくる。鳥肌が立つ。髪の毛が逆立つ。
小さく足音が聞こえた。
衣装に着替えたステラッチェ団長だ。シルクハットを被り杖を持っている。
いつも姿勢がいいけど一際背筋が伸びているように見えた。
ぼくの隣に来るとウインクしながら舞台中央まで歩いて行った。
ステラッチェ団長が中央に立った。
そしてゆっくり舞台袖が暗くなり、真っ赤な緞帳も開かれていった。
幕が上がる。
途端に舞台内のざわつきが収まり、静寂と暗闇が支配した。
観客達の興奮と緊張がこちらにも伝わって来る。
スポットライトが舞台中央を照らす。
否、ステラッチェ団長を照らした。
「惑える星々たちよ!今宵貴方をお連れするのは星の夢の中。希望の唄を奏でながら光を見つける物語。瞬く星に手を伸ばす物語。Flying Twinkle Caravanが魅せる星の中へ!」
杖が宙高く掲げられた。
瞬間ステラッチェ団長の周りから所狭しと花々が咲いていく。それは舞台のみならず舞台袖、客席から出入り口の扉まで覆い尽くす。
観客は皆声をあげて驚いていた。
幾千万の花びらが宙に舞い、拍手喝采に包まれながらぼくらの団長は続ける。
いや舞台が続く。
この土地の文化が、この国の人達が、この笑顔が。全て失われてしまう運命だったとしても。
ステラッチェ団長は止まらない。構わない。
ただ目の前の人達をいかに驚かせるか。いかに感動させられるのか。いかに心を打てるか。
それしか興味がない。
目の前の光が眩しくてよく見えないけど、目一杯の喜びに満ち溢れているけど、少しだけ悲しい光だと思った。
この劇の間だけでも未来を忘れて、時を忘れて夢の中へ行けることを祈って。




