第44話 Samba Do イビポランマラン!
結局その日の公演は無事に行った。それから公演を続けつつ休みの日は山火事のあった街へいって復興の手伝いをした。
団長に色々言っていたサニィだけど結局手助けを受け入れたようだ。市街地は燃えてしまったし、周りも焼け野原になってしまった。それでも人々は元の暮らしに戻っていった。
せっかくだからと避難所になっていた芝生の公園を市民の憩いの場とすることになった。今度またこの国に来ることがあったらこの公園にガルニエが来られるように、と。サニィが提案したようだ。
アヴェラルさんとマルクスさん、そして団長は土の魔法が得意だから復興にはかなり役立っていた。もちろん他のみんなもそれぞれの魔法で貢献していた。
そんなことをしていたから特訓はやっている暇がなかった。でもこんなふうに体を動かすのも気持ちのいいものだ。
状況が落ち着いたところで山火事の被害の全貌が分かった。火元の原因は焚き火かゴミを燃やしているうちに森に引火してしまったのではないかとのことだ。また葉同士の摩擦熱が原因なのではとも言われている。つまり事件性がない事故だったらしい。被害が広大で発火場所の特定もままならないようだけど、不注意や自然的な発火なのでは、と報道されていた。
消防団長のトカゲの亜人、ダガーさんと団長、メリチェルさんそしてソフスさんが発火場所のことを話している時、団長の顔が浮かないというか、真剣さとはまた違う感情を浮かべていたように見えた。にこやかに聞く話ではもちろんないがどこか確信めいた何かがあったようなそんな顔だった。
僕らには原因不明と話していたけどもしかしたら団長は他の可能性があると考えているのかもしれない。けど僕達に話さなかったということは深く首を突っ込む話ではないのだろう。
行方不明の人もまだまだいるとのこと。早く見つかりますように。
公演を行って、復興の手伝いをしてあっという間にこの国を離れるときがきた。旅立つ日、リオの街は以前のサンバ祭りを超える大盛り上がりだった。
* * * * * * *
「またやってくれたね。このお祭り騒ぎはなんだい?またサンバの優勝パレード?」
「いーや。これは君たちのためのサンバだ。僕が言い出しっぺじゃないよ?」
にひぃ、とギラついた笑顔を浮かべるサニィ。
「この国の一大事を2度も救ってくれた皆さんをどうお見送りするかと国会で話が出たのです。あとは自然とこうなりました」
微笑みながら答えるサラさん。
「随分大規模じゃない?」
入国の時よりも大規模な気がする。それにガルニエの目の前でサンバを踊っている。目の前だとすごい迫力だ。山車も前見たもの以外のもある。
「みんな感謝してるんだよ。もちろん僕もだ。ありがとう。毎回君たちには助けられてばかりのようだ」
「今度はサニィが助けてよね」
「もちろんさ!それまで全裸待機しているよ」
「これ以上服を脱いでどうする」
短パンに、上裸でアロハシャツを羽織っただけのサニィ。魂が変わっても結局いつも通りの格好をしていた。周りを見ると一部のうちのメンバーが中に混じりサンバを踊っていた。楽しんでるなぁ。
「次はいつきてくれるんだい?」
「ん〜。なんとも言えないかな。しばらくは欧州を回るんだ」
「そっか。僕たちはいつでもウェルカムだから。例え世界中が敵になってもね!」
「安いラブソングみたいなこといって。ま、もしそうなったら頼りにしようかな」
「もちろんです。いつでもお待ちしていますね」
「なんか世界の敵になるのを待ち侘びてるみたいになってない?」
「うふふ。まさかそんな。何があろうと皆さんは私たちを救ってくれた。その事実は変わらないとお伝えしたかったのです。夢を売る商人っていろんな方法があるんだなと皆さんから学びました。ただ、舞台で感動的な物語を演出するだけでなく、皆さんの行動や真心が滲み出ているからあんなに心に響くのだなと。ステラッチェ団長様、またお会いできる日を楽しみにお待ちしていますね」
手を差し伸べるサラさん。そして私もその手を取る。
「ありがとうございます。苦労して世界を飛び回っている甲斐がありました。またショッピングでも行きましょう」
「え!?なに!?そんなことしてたの!?なんで誘ってくれなかったのさ!?」
「ちょっと!締めたところだったのにほじくらないでよ!」
空気が読めないなこの神様……。
今日は七色に反射するサングラスを頭にかけているサニィ。その目には隈もなく、ピンク色の花模様が浮かぶ綺麗な瞳が見えていた。
「素敵なお見送りありがとう。また過労死しないでよ」
「ああ!休むのもお昼寝も大好きさ!お世話になっちゃったけどさ、君もたまには息抜きしなよ?やり方がわからないなら教えてあげるから。あと次は僕もショッピング行くから」
「奢ってくれるなら考えてあげなくもなくもない」
「結局ないんじゃん!え?ない?どっち?」
「あんまりサラさんを困らせないでよ。あと心配もさせないでよね」
「信用ないなぁ」
「あるわけないでしょ。でも信頼はしてる。これからも元気でね。チャラ男神様」
私が差し伸べた手を取るサニィ。
「ああ。もちろん。けどごめん!やっぱ耐えきれない!僕には苦手なことがあってね!多分これは前のサニィでもそうだったと思う!」
握手していたサニィが私の手を離した途端、光り輝きながら空へと駈ける。そして国中に響くような声でサニィが叫ぶ。
「しみったれたお別れさ!このお祭り騒ぎにしんみりしてちゃあっちのサニィも浮かばないだろう!!」
空を舞うサニィは光り輝く軌跡を描き私たちにメッセージを書いてみせた。
Boa viagem!!
思わずニヤリとした。手持ち無沙汰になった手を空でくるりと回して、光の花火を打ち上げた。咄嗟に手が動いた。この国に祝福されている気がしてそれに応えなければと手を空へと伸ばした。思ったよりも力が弾んで太陽にも負けない花火となった。
花びらは広がった先でまた新たな花火となりリオの街に降り注ぐ。
街の人達は突然の街を包む花火にびっくりした様子だったけど次の瞬間には拍手喝采をあげた。
「そろそろ行こうか!ベール!キエリス!」
サンバを踊っていた団員達が一緒に踊っていた人とハグをしてからガルニエの前に集まりベールがしゃぼん玉で包んだ。
「イビポランマランの皆さん!再び私たちを迎えてくれてありがとうございました!またこの国に来るのがとても楽しみです!そのときはまた盛大に歓迎してくださいね!」
キエリスの手を取りイビポランマランに手を振った。
* * * * * * *
ガルニエがしゃぼん玉に包まれて消えていった様子を空から見ていた。
喝采と光とサンバが街を覆い尽くしていた。
人も亜人も共に手を取り歌い踊っている。
「さぁて。僕もお祭りを楽しもうかな」




