第41話 鎖に刻まれしもの
とても遺言として残した手紙とは思えない文体だった。サニィらしいけども時と場合を弁えろ。こういう雰囲気のときに開封することになるのはわかってたでしょ!
全員でまじまじとサニィの首に輝く金色のネックレスを見る。小さい鎖が大量に繋がったネックレス。私の趣味じゃない。こういう鎖を巻いている人って一体何をよしとしてるんだろうか。縛られたい欲とかだろうか。
……一旦ビジュアルは置いておいて。
「ではこれを使えばきっと!?」
ちょっと涙ぐんでいるサラさん。
「今までサニィの力が強過ぎてわからなかったんですけど、今になってこのネックレスが特殊なものだと私の左目もいっています」
このネックレス、確かに力はあるけど眠っているようだ。よく見れば見るほどサニィのオーラとはかけ離れているし。もう少しサニィに関心を持って見ていれば気づいたかもしれない。
「それを使えば生き返っても記憶が戻るのか」
アメデオが放った疑問、これが問題だ。
うーん。どうだろうか。こんな変なネックレス初めて見た。見た目は金色の小さな輪っか状の鎖がいくつも連なっているネックレスだ。しかしよく見るとこれは結界術の応用で作られた何かといったところか。どちらかというと私のバックの様な亜空間系?サニィの権能、はたまた血界の一種。なーんか書いてあるけど小さ過ぎて読めない。私の目でもわからないならやることは一つだ。
「物は試し。それに失敗してもそのまま死んだだけ。神性が元に戻るか否かは置いておいても、その手紙といい今回は試す価値があろう」
ニニギの意見と同意だ。
「そうだね。やってみようか」
サニィをベランダの椅子に座らせた。太陽を浴びたサニィをザーラの鏡はその周りをゆっくりと回転していく。徐々に増していく回転速度。鏡に太陽の光が反射していってサニィが光に包まれた。
しばらくしてサニィが目を覚ました。目を醒めるところまでは大丈夫ではとのことだったけどほんとにうまくいった。さすがは我らが頼れるザーラ様。
だけど言葉を発しない。周りをゆっくりとなぞるように眺めていた。
「サニィ様!わかりますかサラです」
「……」
サラさんの呼びかけに全く反応がない。
見るにこれは。
「戻ってないね」
あの態度と呼びかけに反応していないということは言葉も私たちが誰かもわかっていないだろう。残念ながら予想通りの結果になったらしい。
アメデオ「魔力の方はどうだ?」
ステラッチェ「さっきよりは満ちているけど一般人ほどもないね」
ニニギ「ふむ。ではその首飾りをどうにかしないとならぬようだな」
再び訪れる沈黙。うーんネックレスを身につけた状態で生き返れば何とかなるのではと思ったけど甘くなかった。
「記憶とくれば脳。頭に巻いてみましょう!」
空元気のサラさんがサニィの頭にネックレスを巻いた。
変化なし。
「じゃ体をそれで縛ってみたら?」
私の提案にサラさんが全身を縛るには短いネックレスを無理やりサニィの身体に巻いてみせた。困惑し抵抗しながらもサラさんにネックレスで縛られるサニィ。
変化なし。
「んごごごご……」
……反応はしているけど言葉も記憶もない人間でも謎の金属で身体を縛られたら誰でもああ言うだろう。
「記憶は叩き込むもの。それで鞭のように叩いてやれば身体に取り込まれるやもしれぬぞ。無知だけに」
ニニギがぼやいたしょうもない駄洒落をサラさんは信じた。というか面白がってないか?
縛り上げたネックレスをサラさんが取り外しサニィをネックレスで力一杯鞭のように叩き込んだ。
サニィも変な声をあげてた。
大体十発程度叩き込んだが結果は虚しく変化はない。
記憶喪失者を囲んで甚振る構図が完成した。
夢売る商人とは一体。
サラさんが私たちを見る。そんな目で見られても困る。方法まで書かなかったサニィが悪い。うん。そうだとも。私たちはいろいろ試してみるしかないのだ。
「では直接体内に入れてみるしかあるまいな。口か尻どちらが」
「口で!!!!」
もはや悪ふざけのようなことを言い出すニニギの声に、そんな馬鹿げた提案すらも半ばキレながらも応えたサラさんはサニィの口にネックレスをぶち込んだ。
変化な……そういえば。
目に映っていた銅羅の妙な謎技術。この国に来て早々お呼ばれされてこの部屋に来た。その時にサラさんはサニィを呼ぶときにこの銅羅を叩いていた。銅羅自体にちょっとした魔法がかかっている。あの時も銅羅がなった瞬間からサニィがこちら目掛けて飛んできていた。おそらくこの銅羅はサニィを呼ぶためのものなのでは?
口にネックレスを突っ込まれたまま呻き声を上げるサニィ。手紙を取り出す際に解体されていた鉢を元に戻しつつ振りかぶって思いっきり叩いた。
直後サニィが黄金に輝き出した。
5秒ほど光ってから輝きは収まり無言で私たちを見るサニィ。いや当たったよ。色々やってみた価値はあった。あのままだとサニィのお尻も試すところだっただろう。いくらサニィでもそこまで尊厳をなくしてしまうのは可哀想だ。
「あーーーー。生き返ったぜ!」
「「おおおおおおおおおおお」」
私とサラさんは声を上げたけど、他のみんなはただサニィを見ていた。
「いやぁステラッチェにザーラにニニギ、そしてアメデオ、そしてそしてサラ!いや随分心配かけたね!」
「ほ、ほんとうにサニィ様なのですか!?」
「完全復活!」
チャラいポーズを決めながら叫ぶサニィ。
「いやぁさすがに疲れたな、ちょっと寝ようかなとか思いながら寝てたらそのまま死んじゃってたみたい!」
「みたいって」
あのとき頑張りすぎるなって言ったのに。
「なんでもあの金のネックレスの鎖ひとつひとつに今まであったことが刻まれていてね。飲み込んだらその記憶を入れられるようになってたみたいだ!」
ネックレスに見えた文字が小さかったのは超圧縮した記憶の文字だったということか。普通の視力じゃ読めないわけだ。それにしてもなんだか他人事みたいに話しているように聞こえる。
もしかして———
「サニィ」
「なんだい」
「本当のことを話して」
「え?」
「君、サニィの記憶はあってもサニィではないんじゃないかい?」
さっきまでのお調子者がぴたりと止まった。どうやらだいぶ言葉を選んでいるようだ。
「僕が知ってるのはこうなんだから仕方がないだろう?あと記憶は鎖になってるところまでしか記憶がないからなんで死んだのか、詳しく教えてくれない?」
山火事のことは覚えていそうだったけど念のため直近何をしてたかをサラさんが説明した。
「いやぁ大変だったんだね僕」
他人事のようにサニィを憂うサニィ。
さっき寝てたら死んでたみたいなことを言っていたけど、多分当てずっぽうというか空気を読んで推理しただけだろう。無駄に頭が回るな。さっきまで死んでたのに。
サニィの記憶が入ったサニィの肉体、か。
「サニィ。どうやら君はサニィではあるけどサニィの人格や記憶を知っているだけでサニィではない」
一呼吸して質問をする。
「君はどうしたい?」




