第39話 本業
他のみんなも起き始めてご飯を食べ終わった頃にダガーさんと消防団、サニィがやってきた。そして、あれ?スーツを着たどこかで見たことあるトカゲの亜人な気が……
それは置いておいて、さて今日も始めますか。優先順位を考えれば、まずは行方不明者の捜索だろうか。先程広場の中央にたくさんの名前が書いてある看板を見た。逸れてしまった人たちの名前だ。
現在行方不明者や迷子がどれだけいるのかわからないけど。街はペリーヌやミッシェルたち、山の集落は私たちが見たから……とはいってもいない可能性は0ではないか。
もしかしたら間に合わなかった人たちもいるかもしれない。もしそういう人がいたらどんな形であっても家族の元へ帰さなければ。
あとはアメデオたち話していた衛生施設か。こっちはマルクスとアヴェラルあたりに任せようかな。
「ステラッチェ団長殿。この度は大変お世話になりました」
ダガーさんが深くお辞儀をした。
「いえいえそんな。こういう時はお互い様ですから。頭を上げてください」
「我々だけでは事態は最悪な結果を辿っていたでしょう。本当に感謝しきれません」
「感謝の言葉はありがたく頂戴しますけど。そんなに気を使わなくて結構ですよ。好きでやっていることですから」
「俺からも国を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとう」
隣にいたサニィもいつものチャラい格好ではあるけど真っ直ぐな感謝をぶつけられた。こう面と向かわれると照れ臭いな。
「げぇ。サニィまでなんだい。わかったから。気持ちは伝わったよ。でもまだ終わってないんだからそういうのは後でいいよ。それで今日は何すればいいの?」
「ははは!まぁまぁ待ってください。姐さん相変わらずで何よりです。もっと早く会いたかったのですが、こちらもてんてこ舞いでして」
姐さん?
それにこの声は。あ、思い出した。このトカゲの亜人は
「トカゲちゃんじゃん!!!」
キエリスの咆哮が響き渡った。おお、そう言われてみればそうだ。
スーツ姿で全然気が付かなかった。なんでスーツなんか着てるんだ。この国に来た時に首都で色々お世話になったトカゲちゃんじゃないか。
「ご無沙汰してます。キエリスさんもすっかりお綺麗になって」
「久しぶりだね。なんでトカゲちゃんがここに?火事場泥棒で検挙されたとか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか……。ごほん。実はこの街の町長をやってましてね。皆さんのご活躍は伺っていたのです。昨日は私も駆け回っていましてなかなかご挨拶に行けなくて」
「「町長!?」」
あの好戦的でちょっとお調子者だったあのトカゲちゃんがねぇ。政治家とは恐れ入った。いや本当に。でも私をも巻き込んであんな悪事を暴けるんだから人望はあるのかもしれないな。人間ちょっと抜けてる方が魅力があるものだ。
「でもあの頃のトカゲちゃんの方が好きだったなぁ〜」
「スーツ似合ってないですか?」
「似合ってない」
「ひ、ひでぇ……」
キエリス本当に酷いな。本当だからって言っていいことと悪いことがあるんだぞ。
「まぁそれはさておきどうしたの?ああ、そっか町長だからか。えっとそれで今日私達は何をしましょう?」
ダガーさん、トカゲちゃん、サニィが顔を見合わせた。
「まだ問題は山積みではありますが、ここから先は我々イビポランマランの国民でなんとかします」
ダガーさんからの驚きの言葉が飛び出した。そうきたか。
「皆さんはまだ公演のご予定があると伺いました。それにこの国に滞在できるのもそれほど長くはないとも」
いつの間にか、うちの団員達が集まってきていた。
「そういうこと!山火事は助けてもらっちゃったけど、ここからは俺たちでなんとかなる。むしろ色々新しくなったイビポランマラン最初の試練ってことでね!みんなと一緒に復興がんばるよ!」
公演の予定はリスケしたわけではない。とはいえこの非常時にそんなことは言うつもりはない。まだまだ手伝う気ではあったけど、実際あとは人海戦術が鍵になる。消火活動自体は私たちの力が必要だったけどこの先は私たちでなくてもなんとかなるから、というわけか。
「わかったよ。たまには神様らしいこと言うんだね」
「正真正銘神様なんでね!でも一個だけ!一個だけやって欲しいことがあるんだ!」
意味深なフリをするサニィ。
「君たちの本業のほうさ」
「本業?」
「ああ。最後に君たちが魅せる夢をこの街の人にも見せてくれないかい?ほら!本当はこの町でも公演やる予定だっただろ?残念ながらできなくなっちゃったけど、今日限りの特別公演をお願いしたい」
「なんだそういうことか。もちろん。お任せください。私たちは夢を売る商人だからね」
作業する人にも見てもらいたいから今公演で行っている演目ではなくて、団発足時によくやっていたサーカスをメインにした即興劇を行うことにした。
時間も大体1時間弱程度のものだ。
火は使わないで森と水がメインの魔法サーカス。衣装なんてないからドロドロのまんまだったけど見ていてくれた人たちは喜んでくれた。
昔は街から街へ移動して、空き地とかで魔法を披露してお金をもらっていたものだ。今では立派な舞台があるけど、こうして初心に戻るのも悪くない。
それに、いくら過去にやっていたからって久々にやる今の方がよほど綺麗な魔法を披露できる。ちょっとした演目を終えると見てくれて人たちから沢山の拍手が貰えた。
「ありがとう!!素晴らしい舞台だったよ!」
「こっちが本業ですから」
突発だったから軽いものだったけど、喜んでもらってよかった。
家や故郷、もしかしたら家族が怪我をしていたりはぐれてしまったひとがいるかもしれない。鎮火から一夜明けて、まだ気持ちの整理ができていない人もいるだろう。
慣れない環境で夜を過ごして気持ちの休まらない人がいるだろう。
今はこんなことをしている場合ではないかもしれないけど、そんな人たちのために私たちはいるのだ。
野原の劇場だったとしても、少しでも心が安まり、そして明日へ向かう力が湧いてくれたのなら私たちがここに立った意味があったんだと思う。
「いや〜そうだけど即興劇でここまでできるんだもんな!本当にありがとう。あ、お礼に滞在中の土地の利用料は半額にしておくよ」
「本当に!?」
「今までで一番いいリアクションじゃん!!!!大体君たちがしてくれたことを思えばこのぐらい大したことないって」
「いやぁそんなつもりは勿論なかったんですけれどもね。サニィ様これからもご贔屓にお願いしますね」
「気色悪いな!」
「演技派と言って欲しいね。でもありがとう。これからも大変だろうけど、頑張りすぎないでね」
「ああ。とはいっても俺、神様なのにいいとこなしだからな〜!多少は張り切るよ!」
多くの人に手を振られながらガルニエに帰った。
過干渉は良くない。この国の人たちがこの国の人たちの力で解決できるのならそれに越したことはないのだ。
いいことしたし、結構お金が浮いたな〜ラッキー!などと思っていた矢先のことだった。
またしても血相変えたサラさんがガルニエに飛び込んできたのだ。




