↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Stellacce Twinkle  作者: 橿原るり
第三幕 イビポランマラン編
104/117

第36話 火災最前線

山の入り口に立っていた3人。エルフリーデ、ニニギ、アヴェラル。

 目の前は火の海が広がり終わりが見えない。手ぶらのエルフリーデ。模擬刀を腰に巻いたニニギ。背丈の倍はあろう大きな槍を持つアヴェラル。

 役割が決まるといち早く炎に包まれた街を突っ切り山火事の規模を確認していた。


 馴染みのある気配がした3人は上空を見つめる。黒煙に混じりながらも微かにファロの光が見えた。


アヴェラル「あちらも始まったようだ」

エルフリーデ「私たちも急がないと」

アヴェラル「2人はとにかく火事の前線へ向かってくれ。これ以上火災の前線を増やしたくない。そうだな、火災の前線から30m程は更地にしておきたい」

エルフリーデ「そのあとはいかがしましょうか」

アヴェラル「やり終わった頃には多分カミラかフェルナンあたりがこっちまで来ていると思うから水の散布をお願いしよう。山の中にも集落がいくつかあるらしい。集落近くでは更地にするのは慎重にしてくれ」

ニニギ「御意」

エルフリーデ「わかりました」

アヴェラル「更地にしたところを俺が土で覆っていく。ニニギはとにかく木を切り落としてくれ。エルフリーデは木を倒して欲しい。木を動かせるならそれでもいい。とにかく燃えるものがないようにしてくれ」

エルフリーデ「心が痛みますけど仕方ないですね」

アヴェラル「なっちまったものはしょうがねえ。今は延焼を防ごう」

エルフリーデ「ええ。わかっています」

ニニギ「では先に」


そう告げたニニギは次の瞬間には風の切る音のみを残して山中へと消えた。


「アヴェラル。乗っていくといいわ」

「ああ。頼む」


地鳴りを起こしながらエルフリーデとアヴェラルの周りの地面が盛り上がり始めた。大きな木の根が捻り合わさり太い荒縄が生えた。荒縄は2人を乗せて山の奥深くへと誘った。


 エルフリーデの身体に宿る血の魔法。

 植物を自在に操れる魔法。操るのみならず植物の急速な成長、細胞分裂を促すことも可能。その力はもちろんエルフリーデの魔力由来のもの。ステラッチェやザーラほどではないにせよ、圧倒的な魔力量を持つエルフリーデだからこそ真価を発揮している。


 彼女の故郷では寄生木(ミステル)と恐れられていた血の魔法。


アヴェラル「そういえば退化はできないのか?燃える前に種か何かに変えちまえばと思ったんだが」

エルフリーデ「植物の形を変えられるけど、種に戻すことはできないわ」

アヴェラル「そうか。いやいいんだ」

エルフリーデ「可能な限り高範囲で植物を地面に潜ってもらいます。そこを土をかけてあげて。そうすれば強い子ならまた出てきてくれると思うから」

アヴェラル「わかったそうしよう」


大量の根でできた荒縄が2人を乗せ、火事の前線に着くと地面に降り立った刹那、周りの植物が地面に潜り始めた。

 これほどのエルフリーデの力を見たの久々だ。団長やザーラを見てるから目が眩むがエルフリーデも十分おっかねえ。


「アヴェラルさん!」

水飛沫の音を立てながら俺の名を呼ぶ声があった。聞き覚えのある美人の声だ。思ったよりも早い到着だったな。


アヴェラル「フェルナン、ヴィーナ。来てくれたか」

ヴィーナ「凄い音がしたのでこっちに来てみました」

アヴェラル「丁度良かった。見ての通り燃え移る前に木を倒していてな」


遠くで地滑りのような音が響いてきた。ニニギが木を切り落としている音だろう。それに雨粒が落ちてきた。


アヴェラル「二手に分かれて前線部分に水を撒いていってくれないか?」

フェルナン「もちろんです」

アヴェラル「俺らやニニギに構わずじゃんじゃん降らせていい」

エルフリーデ「あまり降らせるとと地滑りが怖いから程々にね。根を地面に這わせて対策はしているけど」


左頬に手を当てながら会話に入るエルフリーデ。

話しながらも周りの木々を次々と地面に潜らせていた。器用なものだ。


アヴェラル「ということだ。すまんが頼む」

ヴィーナ「わかりました!アヴェラルさん、エルフリーデさんもお気をつけて!」


水のジェット噴射で俺らに水を掛けながら前線に水を振り撒く2人。

 この調子じゃ延焼はもう心配はないかもな。このまま前線を潰して、あとは今燃え盛っちまってる山をどうにかしないとならねえな。団長とキエリス、そしてソフス間に合っただろうか。森の被害もそうだが火の手で集落で閉じ込められて、なんてのは目覚めが悪い。


エルフリーデ「アヴェラル。今は私たちにできることをやりましょう。ずいぶん難しい顔をしているわよ」

アヴェラル「俺はこう見えて心配性なんだよ」


* * * * * * *


私(ソフス)は皆さんと別れた後、黒煙を避けながら上空へ飛び打ち合わせた方面の集落へ向かいました。

 被害状況から見てまだ火の手が届いていない集落へと羽を伸ばしました。するとまだ人が残っていました。最低限水を散布してから安全な場所に避難させようとしました。が、あっという間に火に囲まれてしまいました。


 集落に残っていたのは7人。空へと飛び、水を出してから翼で散布を続けていたものの火の勢いは増すばかり。風ならともかく私は水の魔法はあまり得意ではない。

 あと7人も避難所まで連れていくのは流石に時間がない。子供を優先して連れていくしか——


 いや他の人を見殺しにはできません。

 しかも残っているのはハリネズミの亜人。一度に運べるのは多くても3人。


よし。腹が決まりました。


「皆さん!ここは私が食い止めます!きっと仲間が助けに来てくれるので家屋から離れてそこで待機していてください!」


再び空へ舞い上がり水を散布する。やはり私の水の量では食い止めるのがやっと。家屋が火にやられて倒れかかっている。


 団長、キエリス!誰でもいい!どうか届いて!


 風魔法のひとつ。木枯らしの呟き《ススッルス・アルボルム・ウェントー》。


 塵や葉などを飛ばし、それを媒介物として声を届ける魔法。多くは語れないし木枯らしの呟き《ススッルス・アルボルム・ウェントー》の届いた全員に一方的に声を届ける魔法。しかしここはあたり一面火の海。どこにいるかもわからない団長達にこの声が届くかどうか。火災による上昇気流のせいでたださえ分散してしまう声がより伝わりにくくなっている。


 眼下に水を散布しつつ、声を辺りに振り撒く。最中も大きな音を立てながら家屋が崩れていく。


 どうしよう。やはり避難所まで行ってシャルルあったりを連れてきた方がよかった?

今からでも連れてきても遅くはない?

ダメだ!このままこの人達を置いて離れる訳にはいかない。

 くっ……!!やっぱり無理矢理にでもリスクを承知で避難させるべきだったのでは!?

 私は梟の亜人。翼のおかげで風の魔法はそれなりだけど、ほかの魔法の出力は大したことがない。いろんな魔法を少しずつできるだけの器用貧乏。


それがどうした。

できない理由を探すな!

そんなことに思考を使うな!

 私がここでまともに役に立てる魔法は風のみ!こうなったら周辺を火も木も何もかも吹き飛ばす!

 飛んでいった先の被害が大きくなるけど人命第一だ!

 やけになったのではない。しかし焦ったのも事実。この大規模な火災現場で私の中で最善の道を選んできたつもりだった。しかし結果はこの通り無様な力任せによる解決しか思い付かなかった。


 火を舐めていたわけでも過小評価していたわけでもない。ただ、脳裏にずっと感じていた違和感が拭えなかった。


 この火災、いやこの『炎』何か変なのでは?


 覚悟を決め一度上空に上がり翼大きく広げて力を込めたその時。


「ソフス!!!!」

私よりももっと高い場所から私を名前を叫ぶ声が聞こえた。

「団長!!」

「キエリス!!」

「先行ってますね!」

団長がキエリスの名前を叫ぶと、次の瞬間にはハリネズミ達のところに降り立ち、燃えてしまった家屋自体を森へ転移させていた。団長は1人で私の元へと飛んできて大きな水球を作った。

「頼んだよソフス!!」

「はい!」


目一杯羽を伸ばして直径30mはある水球に向かい翼を羽ばたかせる。集落とその周辺は瞬く間に鎮火していった。鎮火した集落に団長と村へ降りた。


「ソフスよく持ち堪えてくれたね」

「ほぉ。さすがに危うかったです。この有様なので届いているか不安でした」

「ほぼわかんなかったけどこれを使うということはと思ってね。電気を帯びてくれてたおかげですぐ見つかったよ」

「意味がないかと思っていましたが見えていたならよかったです。さ、早く連れていってあげてください」


そう、木枯らしの呟き《ススッルス・アルボルム・ウェントー》自体に電気を帯びさせていた。この火災の状況で声が届くか、届いても不明瞭なものになってしまうのではないかと危惧して保険をかけていました。

 団長が見ればおそらく声が届かなくても呼んでいることが伝わる確率が高くなると考えてのこと。狙い通り作用したようで安心しました。


「うん。さぁ!ハリネズミの皆さんもう大丈夫ですよ。避難所まで行きましょう」

ふぅ。なんとかなりました。心臓の鼓動が速くなっている。久しぶりに焦りましたね。

「あのソフスさん」

「?はい」

キエリスさんの元へと駆け寄っていたハリネズミさん達が私を呼び止めた。


「守ってくれてありがとうございました」

「……いえ、怖い思いをさせてしまいましたね。あちらでも気をつけて」

団長とキエリスが微笑んでいる。


「さぁさぁ!火は消えましたけどまだ危ないですから飛びますよ〜!はい手繋いで〜絶対離さないでくださいね〜フリじゃないですからね〜」


「ソフス。ここの集落が最後だ。残りはサニィが行ってくれたからファロのところへ向かって欲しい。多分街の方だ」

「わかりました」

団長が手を振ってキエリスの手を取るとどこかへ飛んでいってしまった。

さてもう一仕事です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。