105回目 影と歩く午後
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカ
昼下がりの散歩道を一人歩いていて、僕はふとあることに気づきました。
自分の影の横に、もうひとつ影があるのです。
ひとりで歩いているはずなのに、地面に伸びる影は二つ。 ひとつは僕自身のもの。そして、もうひとつは……一体、誰の影でしょう。
その影は僕より少し背が高く、その分歩幅も大きい。それなのに、不思議と歩調はぴたりと合わせてくれる。まるで長年の友人と並んでいるようにも感じられました。
「久しぶりだね」
声をかけると、影がわずかに頷いたように見えました。もちろん、影が喋ることはありませんし、足音も立てません。
ただ、風が通り抜けるたびに、隣の影が生きているように揺れる気がしました。
誰の影なのかは気にしません。いつからか、風が心地よい晴れた日の午後に限って、この辺りを歩いていると、彼(?)が現れることがあるのです。
池の畔へと向かう道すがら、影は時に先に伸び、時に後ろへ下がります。道の蛇行で太陽の角度が変わるだけなのに、まるで気分で位置を変えているように思えました。
しばらくして池のほとりに着くと、その影は水面に映っていませんでした。揺れているのは僕の影だけで、さっきまで隣にあったもうひとつの影は見当たりません。
そういえば、いつしか雲が太陽を覆い、日差しが幾分弱まっていたようです。
「帰っちゃったかな」
そう呟いた瞬間、背中にそっと風が触れました。まるで「また歩こう」と影の主が誘ってくれたかのようで、思わず笑みがこぼれます。
帰り道、影がふたつに戻ることはありませんでしたが、足取りは軽くなっていました。
散歩というものは、時としてこのような錯覚を連れてくることがあるようです。
おわり
※ファンタジーなのか、ホラーなのか。




