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105/125

105回目 影と歩く午後

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカ

 昼下がりの散歩道を一人歩いていて、僕はふとあることに気づきました。


 自分の影の横に、もうひとつ影があるのです。


 ひとりで歩いているはずなのに、地面に伸びる影は二つ。 ひとつは僕自身のもの。そして、もうひとつは……一体、誰の影でしょう。


 その影は僕より少し背が高く、その分歩幅も大きい。それなのに、不思議と歩調はぴたりと合わせてくれる。まるで長年の友人と並んでいるようにも感じられました。


「久しぶりだね」


 声をかけると、影がわずかに頷いたように見えました。もちろん、影が喋ることはありませんし、足音も立てません。


 ただ、風が通り抜けるたびに、隣の影が生きているように揺れる気がしました。


 誰の影なのかは気にしません。いつからか、風が心地よい晴れた日の午後に限って、この辺りを歩いていると、彼(?)が現れることがあるのです。


 池の畔へと向かう道すがら、影は時に先に伸び、時に後ろへ下がります。道の蛇行で太陽の角度が変わるだけなのに、まるで気分で位置を変えているように思えました。



 しばらくして池のほとりに着くと、その影は水面に映っていませんでした。揺れているのは僕の影だけで、さっきまで隣にあったもうひとつの影は見当たりません。


 そういえば、いつしか雲が太陽を覆い、日差しが幾分弱まっていたようです。


「帰っちゃったかな」


 そう呟いた瞬間、背中にそっと風が触れました。まるで「また歩こう」と影の主が誘ってくれたかのようで、思わず笑みがこぼれます。


 帰り道、影がふたつに戻ることはありませんでしたが、足取りは軽くなっていました。


 散歩というものは、時としてこのような錯覚を連れてくることがあるようです。



おわり

※ファンタジーなのか、ホラーなのか。

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