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103/125

103回目 百円分の世界平和

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカ

 賽銭箱に百円を入れて、世界が平和になりますようにと祈りました。


 その硬貨は、木の底に触れる前にいくつかの光の粒へと分かれます。


 そしてその光は、あなたの知らないところで、世界のひび割れた場所へと吸い込まれていくのでした。



 砂の国で起きたこと。


 最初の光は、遠い砂漠の国へ落ちました。


 そこは、二つの部族が対立し、長きに渡って争いが絶えることのない場所でした。


 光は風に乗り、ちょうど代表らの怒号が飛び交う間に降ります。


 その瞬間風がふっと止まり、砂の舞い上がる音が消えました。


 そして、沈黙の中で一人の代表が呟きます。


「今日は、やめておこう」


 理由などありません。ただ、胸の奥に“争いたくない”という気持ちがひとしずく落ちただけです。


 それで十分。その日は誰も傷つかなかったのでした。



 海の向こうの小さな町で。


 二つ目の光は、海辺の小さな町に落ちました。


 そこでは孤独な老人が、一人静かに海を眺めていただけでした。


 光は彼の肩にそっと触れます。


 その時です。通りかかった少女がふと足を止めました。


「おじいさん、海きれいだね」


 老人は驚き、そして久しぶりに笑いました。


 その笑顔は少女と別れてからも心に残り、その夜の、一人ぼっちの食卓を少しだけ温かくしたのでした。



 夜の森の奥で。


 三つ目の光は、夜の森に落ちました。


 そこでは迷子になった子どもが泣いていました。


 光は木々の間をすり抜けて、子どもの足元を照らします。


「こっちだよ」と言わんばかりに。


 子どもは涙を拭き、光を追いかけるように歩きます。


 そして森の出口では、心配して探していた母親が子どもを抱きしめました。


 その抱擁は、この家族にとって冷たかった夜を、少しだけ温めたのでした。



 そして、光は最後にあなたのもとへ戻ります。


 それは、あなたが百円を入れたときに生まれた、世界を良くしたいという願いの欠片です。


 胸の奥で静かに灯り、あなたの気持ちを、ほんの少しだけ優しくしてくれます。


 世界のどこかで起きる小さな奇跡の連鎖。


 そしてその始まりは、あなたがそっと願ったほんの少しの優しさでした。


 たった百円で、などとは言わないで下さい。



おわり

※いや、どう考えても大袈裟でしょう。

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