7ー1 山の民の村
7ー1 山の民の村
もう、限界だった。
それでも、ふらつく足を懸命に前へと動かし続ける。
アネッサも呼吸を乱していた。
どうすればいい?
このままでは、俺たちは、山の神に!
俺は、一か八か魔鏡でその怪異を封じることができないか試そうと思った。
ポケットの中の魔鏡を取り出す。
俺は、肩越しに背後を写した。
そこには。
ちらっと見た鏡面には、金色に輝く瞳をした暗い影が写し出されていた。
これは?
「何をしている!」
不意に誰かの声が聞こえて前を見ると金髪に褐色の肌をした逞しい青年の姿が見えた。
「こっちに来い!急げ!」
俺とアネッサは、青年の方へと駆け出した。
「待て!」
声が追いすがってくるのを振り払うように俺たちは走った。
転びそうになりながらも必死にかけ続けて!
呼吸が苦しい!
息が!
空気がまとわりついて息ができない!
それでも俺は、駆け続けた。
背後で何かが叫び声を上げて!
空間が歪む。
光が!
俺は、光に手を伸ばした。
気がつくと俺は、光が差す広い場所に座り込んでいた。
く、くるし!
懸命に呼吸を整えようとしている俺の横でアネッサが身構えたのがわかった。
ここは……どこだ?
俺は、まだ荒い呼吸を繰り返しながら周囲を見回した。
遠くから視線を感じる。
「『サク』の日に山に入るとは、愚かな」
頭上から声がして見上げるとさっき見た金髪に褐色の肌の青年が立っていた。
「あなたは……?」
ようやく乾いた声を発した俺に青年は、侮蔑するような目を向ける。
「俺は、コーザ。ここは、山の民の村だ」
山の民の村?
俺は、きょときょとと回りを見た。
土壁に木の屋根。
あちこちに吊るされた乾燥した薬草のようなものがあり、つんと鼻をつく匂いが漂っている。
だが。
俺は、その村の清浄な空気に驚いていた。
清らかな、厳かさすら感じさせる空気に包まれた村の中心には、巨大な天を突く大樹が伸びていた。
『聖樹』
自然と俺の頭にそんな言葉が浮かんでくる。
さらさらと枝が風にそよぐ音に混じって鳥たちの鳴き声が戻ってくる。
「運がいい連中だ」
山の民の青年が吐き捨てる。
「『サク』が終わったようだな」




