7ー2 穢れ
7ー2 穢れ
「あれは……?」
俺が問うと山の民の青年は答えた。
「お前たちが遭遇したものは我々の神、だ」
神?
信じられない!
だって、あれは。
俺は、魔鏡越しに一瞬垣間見たものを思い出していた。
それは、闇をまとったもの。
4本の捻れた角を持った闇に覆われた男が立っていた。
俺は、その金色の目を思い浮かべて背筋を震わせた。
あんな冷たい瞳を見たのは初めてだ。
「あれが神?」
俺は、思わず声に出してた。
「あれは……あんな禍々しいものが神なんて信じられない……」
「お前、あれを見たのか?」
山の民の青年の問いに周囲に集まってきていた村人たちがざわめく。
青年は、俺を凝視していたがやがて声を上げた。
「婆さまを呼べ!」
村の連中が何やらバタバタしているのをちらっと見てから俺は、隣にいるアネッサに声をかけた。
「アネッサ、大丈夫か?」
「ああ、なんとか」
アネッサが顔を上げて俺を見た。
「あんなまがものがいるとは。思い出しただけでも吐き気がする」
アネッサは、立ち上がるとスカートの砂ぼこりを払い、俺にも手を差し伸べた。
「お前、本当にあれの姿を見たのか?」
「ああ」
俺が頷くとアネッサが感嘆の声を発した。
「すごい!お前がそれほどの胆力を持っていたとはな!」
いや。
俺は、引きつった笑みを浮かべた。
まだ、足が震えているし!
「神を見たという者は、どこだ?」
俺たちを囲んでいた村人たちが二つに割れてできた道を背丈より長い杖をついた小柄な老婆がやってきた。
「婆さま!」
脇にどこうとした青年に老婆がもう一度訊ねた。
「コーザ!神を見たというのは、このそとびとか?」
「ああ」
コーザと呼ばれた青年が頷く。
「この子供の方のそとびとだ」
「どれ……」
老婆があり得ない速さで俺の前に歩み寄り俺の目を覗き込む。
突然のことに反応できずにいる俺をかばおうとしてアネッサが老婆に手を触れようとしたが、その手は空を切った。
「……大丈夫のようだ」
老婆が俺からすぅっと音もたてずに離れていく。
「どうやら直視したわけではないようだ。穢れてはおらん」




