5ー9 アイダさん
5ー9 アイダさん
少女たちを救出した騎士団は、いったんアズールへと戻った。
5人の少女たちの内、3人が『ローム病』にかかっていたが比較的軽い症状ですんでいた。
「どうやらあの山の民の少女が的確に介抱していたおかげのようですね」
テイルズの言葉に俺は、頷く。
すぐにルーア君に知らせてやらなくては。
そのとき。
ルーア君の姉の姿を見たアイダさんが叫んだ。
「なぜ、ここに山の民がいるんだ!?」
教会にいた人々がざわつき出したのを見て俺は、とりあえずルーア君が隔離されている部屋へと案内するように神官に頼んだ。
「なんであたしだけ、別の部屋に?」
ルーア君の姉だろう少女は、きつい眼差しで俺たちを睨んだ。
警戒するのも無理はない。
俺は、前に進み出ると彼女に告げた。
「あなたのことを追ってルーア君が来ているんです」
その言葉でルーア君の姉は、すべてを理解してくれた。
ルーア君を隔離しているのは、彼が『ローム病』の病原菌を持っているだからというわけではない。
他の人々から山の民である彼を守るためだ。
ルーア君の姉は、大人しく神官に従い後をついていく。
「なぜ、山の民を助けるんだ?」
アイダさんが声を荒げる。
この人にしては珍しいことだ。
「この病は、奴らが持ち込んだんだろう?」
憤っているアイダさんに俺は、説明する。
「今回の『ローム病』は、人さらいの一味が持ち込んだものです。山の民が持ち込んだわけではありません」
「わかるものか!」
アイダさんは、頑なだった。
「俺の両親も弟もみな、山の民のせいで死んだんだ!」
うん?
俺は、興奮しているアイダさんを静めるために少しだけ精神に干渉することにした。
今、アイダさんに騒がれたらせっかく落ち着いてきた町の人々がまた騒ぎだしかねない。
俺は、魔鏡をアイダさんに向かってかざした。
と。
魔鏡を通してアイダさんの過去が流れ込んでくる!
それは、悲しい過去だった。
アイダさんは、14、5才の時、家族を『ローム病』で亡くしたらしい。
それ以来、彼は、1人で生きてきたのだ。




