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1ー3 奴婢

 1ー3 奴婢


 「ふん、やっと気がついたのか」

 ぎぃっと小屋のわずかに傾いだ扉が押し開かれてぼろぼろのワンピースを着た見事な銀髪の女が入ってくる。

 はっと息を飲んだ。

 昨夜の少女……じゃない?

 小屋に入ってきた女は、よく見ると大きな獣耳を頭に生やしている。

 「もう、丸1日は、寝てたからこのまま死んじまうかと思ったよ」

 いやっ!

 俺は、はぅっと呻いた。

 俺、生きてるし!

 「あんたが助けてくれたのか?」

 俺が聞くとその獣人の女は、頭を振る。

 「あたしがあんたを助ける理由なんてないし」

 女は、くぃっと顎をしゃくる。

 「あんたを助けてくれたのは、そっち」

 狭い小屋の壁際に藁を敷き詰めた簡素なベッドが置かれていた。

 俺は、慌てて立ち上がるとそのベッドというのもおこがましいものの上を見た。

 そこには。

 美しい銀色の髪をふわりと広げた中に横たわる美少女の姿があった。

 俺は、昨夜のことを思い出していた。

 『我が奴婢となれ』

 そんなことをこの子は、言ってたような。

 ってことは、俺、この子の奴隷になっちゃったわけ?

 「なぁ、あんた!」

 俺が呼び掛けると獣人の女が迷惑そうに顔をしかめた。

 「なんだ?小僧」

 小僧と言われて俺は、ぐぅっと唸り声をあげた。

 「俺は、小僧じゃない!俺は!」

 そこまで言って俺は、言葉を詰まらせた。 

 そういや、俺、なんて名前だっけ?

 記憶を手繰るとようやく浮かんでくる。

 「俺は、クロウズ!クロウズ・セフィール、だ!」

 言ってから首を傾げる。

 俺、こんなバタ臭い名前だったっけ?

 日本人じゃねぇの?

 そこまで考えて、はっとする。

 俺、転生したんだった。

 今の俺は、クロウズ・セフィール。

 この辺りを治める領主の息子。

 それと同時に、嫌な記憶が覆いかぶさってくる。

 確かに俺は、セフィール辺境伯家の嫡男だ。

 しかし、実の母は、俺が生まれてすぐに亡くなり、今は、父である人の後妻とその連れ子たちが家を牛耳っていた。

 要するに俺は、辺境伯家の余計な子だ。

 しかも俺は、魔力を持たない。

 そのせいで嫡男でありながらほぼほぼ使用人と同じように扱われていた。

 昨夜も。

 義理の妹が不治の病で苦しんでいるからと1人で森に薬草を取りに行かされたんだった!

 

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