1ー2 転生
1ー2 転生
朦朧とした意識の中、少女が倒れている俺の側に膝をつき覗き込んでくるのがわかった。
ふわり、と甘い匂いがする。
頬に少女の銀糸のような柔らかな髪が触れた。
「強い生への執着。それほどまでに生きるということが大切なのか?」
少女の低くかすれるような声が届いたがもう応じることはできなかった。
「答えられんか……まあ、いい。我が奴婢となればその答えを聞く時間もあるというものだ」
少女の暖かい手が俺の胸元に触れる。
染み渡るような温もりが流れ込んできて体がびくん、と跳ねた。
暖かい、けど!
全身を痛みが襲ってくる!
脳天まで突き抜けるような痛みに俺は、声にならない悲鳴をあげていた。
「これから長い長い時を我と共に生きるのだからな」
遠くに少女の声を聞きながら俺は、意識を手放した。
寒い……
「は、くしょぃっ!」
目覚めるのと同時に俺は、くしゃみをした。
目を開くとそこは、見知らぬ場所だった。
ぼろぼろの苔がはえたような腐った木の板の壁に覆われた部屋の湿った床の上に俺は寝ていた。
身体中が痛いし!
ほぼほぼ地面じゃねぇかよ!
俺は、がばっと起き上がると辺りを見回した。
土とカビの臭いに混じってわずかに獣臭がする?
はっと、俺は、気付くと慌てて自分の体を見た。
昨夜、俺は、森で魔物に……あれは、たぶん伝説の魔物の王フェンリルだ!俺は、あいつに喰われるところだった。
血を吐いて。
もう、死ぬ寸前で。
俺は、自分の体を見た。
上着を着てないが、体に傷1つない。
というか。
ぽてんとした柔らかな腹。
まるで天使のような?
幼い子供みたいな。
手をじっと見る。
子供のような小さな手だ。
あれ?
俺は、首を傾げた。
俺、もう17才。
何、これ?
体が小さくなってる?
ずきん、と頭が痛む。
不意に生まれてからの記憶が流れ込んでくる。
痛い、痛い!
俺は、頭を抱えたまま涙を流していた。
それは、俺が死んでからの記憶。
この異世界で生きてきた記憶だった。
はぁ、はぁ、と喘ぎながら俺は、涙と鼻水を拭う。
俺は。
転生、したのか?




