13ー7 聖女たち
13ー7 聖女たち
暗闇に白い影がいくつも集まり揺らいでいた。
やがてそれは、何人もの少女の姿になっていく。
美しいたおやかな少女たちが口々に俺たちに礼を言って、そして、ふぅっと消えていく。
あれ、何?
俺は、ちょっとびびっていた。
もしかして幽霊?
「幽霊ではないわ!」
グレンアイヒが俺の胸元をぼすっと殴り付ける。
「あれは、代々の聖女たちの残留思念だ」
「残留思念……」
俺は、消えていく彼女らを見つめながら思っていた。
それって幽霊と何が違うわけ?
「愚か者が!」
グレンアイヒが俺をぽかぽかと叩く。
「あれは、決して幽霊などというものではない!あれは、あれは!」
グレンアイヒが涙を流しながら俺を見上げる。
「我と戦い散っていった魂たち。戦友なのだから……」
戦友?
魔王と聖女が戦友なの?
俺の納得いかない顔を見てグレンアイヒは、ぐぃっと涙を拭う。
「我と聖女の戦いは、長い長い歴史がある。何百年、何千年と続いた。いつしか我らは、どんな仲間よりも親しい、理解しあえる存在となっていたのだ」
「へぇ」
俺は、なんとなく頷く。
そういうものなのかな?
グレンアイヒは、満足げに笑う。
「あの最後の聖女によって我は封じられた。だが、そこまで続く道を造ったのはここに眠る聖女たちなのだからな!」
ふむふむ。
俺は、納得したような気持ちでふと聖女たちの霊が消えていった先を見た。
そこには。
一輪のユリの花が咲いていた。
「あれっ!」
俺が指差す先を見てグレンアイヒが声を上げる。
「あれはっ!聖女の花?」
そこは、俺の血が滴った辺りだった。
血のように赤いユリの花。
しかし、毒々しさはなく、何か、清廉なもののような感じがする。
俺たちに気付いたレイラ様がユリを見て驚いた表情を浮かべる。
「これは……聖女の花……」
レイラ様が言うには聖女の花とは聖女にしか咲かせることができない聖なる花であり、これを咲かせることができて始めて正式な聖女として認められるというものなのだとか。
「この数百年の間、誰も咲かせることができなかったのに……」
聖女以外が世話をすると枯れてしまうという聖女の花。
俺は、レイラ様とロリスに頼んで聖女の花を周囲の土ごと採集して魔鏡の空間収納へとしまうことにした。




