12ー3 事件
12ー3 事件
貧民院の敷地内には、たくさんの露天商が出ていて足の踏み場もないぐらい人で溢れていた。
俺は、アイダさんとラザニエルさんと一緒に露天を覗いたり、催しものの歌や躍りを眺めたりと普通に祭りを楽しんでしまっていた。
と。
近くで何やら揉め事があったようで人だかりができている。
「ちょっと聞いてくるからここで待っててくれ」
アイダさんが俺たちから離れて人だかりの方へと向かっていった。
俺とラザニエルさんは、人の流れを避けて少しわきに寄って待った。
その時。
俺の背後から誰かがぶつかってきた。
「ごめんなさいっ!」
茶色のフードを頭からかぶった金髪の少女が頭を下げる。
俺は、笑顔を向けた。
「俺がぼんやりしてたのが悪かったんだ。気にしないで」
「こっちだ!」
「急げ!」
少女の背後から数人の身なりのいい騎士とおぼしき連中が追ってくるのが見えた。
少女の顔が青ざめる。
「あれは、王族の警護の騎士?」
ラザニエルさんが首を傾げた。
俺は、とっさに少女に認識阻害の魔法をかけて姿を消した。
そして。
騎士たちが去っていくのを待っているとアイダさんが戻ってきた。
「どうやら聖女がエールをぶっかけられたらしい」
アイダさんがふん、と鼻を鳴らす。
「聖女っていても成金伯爵の寄付のおかげで聖女ぶっていられるだけの候補生らしいんだが、なんでも王族の覚えがめでたいんだと」
「へぇ」
俺が応じていると姿を消している少女が息を飲むのが伝わってきた。
俺は、アイダさんを促して予定よりだいぶはやく貧民院から出ることにした。
まあ、俺名義での寄付もちゃんとたっぷりとしといたしな!
目的は果たしたわけだ。
俺たちは、アイダさんの荷馬車に乗り込んだ。
そこで認識阻害の魔法をかけていたのを解いた。
ほんとは逃げ出したそうにしてたんだが俺が腕を掴んで離さなかったから逃げられなかったのだ。
「あ、あの……助けていただき、ありがとうございます」
少女がぺこりと頭を下げる。
御者台にいたアイダさんが少女が現れたのに気付いてぎょっとする。
「な、な、いつの間に!?」
「まあ、詳しいことは後で」
ラザニエルさんがごまかすように微笑むとアイダさんがちょっと頬を赤くする。
俺は、少女に訊ねた。
「なんで王族の警護をしている騎士から追われてたんだ?」




