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第7話 管理職ハート

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先程装備した木製スタッフをパンパンと叩きながら近付く。

何をされるか想像は容易だったろう。

目に見えて狼狽えはじめた。




「く、来るな!」



「やーだ。借りは返す主義なんよ」



「あ...うぐ...クソ!」




お手本の様なセリフで今度は出口に走る。

着込んだお高そうな服のせいでもつれながらも必死で走ろうとする中年。

見ているのは楽しいが、今逃げられると困る。



「即撃」



バァン!!!



「ひゅ...」



出口の直前で即撃を発動。直線的に素早く踏み込む打撃スキルだ。

このスキルは対人を潜る人ですら見てからの回避やジャストガードは難しいほど、コマ落ちの様に間合いを潰す。


この人に避けられる筈は無いが、敢えて外した。死なれたら困るからだ。




「すとーっぷよ?次は当てるからね」




即撃を打ち込んだ壁は完全にスタッフが埋まって大きなヒビが入っている。

壁の手応えは水分たっぷりの泥に杖を突っ込んだ様だった。この位置で止めようと思わなければギャグみたいに人型の穴を残して突き抜けてしまっただろう。そう思うと少し笑えた。




「ぐ...馬鹿にしおって!何が目的かね!」




「いやあんたが拉致しといて何よその言い草」




「何を惚けた事を!ただの薬屋がここまで戦えるわけが無い。私を殺すためにエサを撒いたな!」




おかしな方向へ妄想が膨らんでいる様だ。

勝手にヒートアップされても困るな。




「雇い主は誰だ!こんな事をしてただでむぐ...」



「大人しく話し聞きや。このまま口の中に火の玉出したりも出来るからね。分かった?」




俺が火の玉を出さなくてもそのまま火を吐きそうなレベルで顔を真っ赤にしていたが、やがて苦々しい顔をして俯いた。



「何を勘ぐってるのか知らんけど、俺はマジでフリーの薬屋さんやねん。でもあんたはそれを拉致ってボコボコにして爪まで剥がそうとしたわけ。誰から命狙われてるか知らんけど、その前に俺が殺したい気持ち満々よ今。分かる?」



返事は無いが項垂れている。

まぁ下手に反論できないよな。



「でもこれって幸運よな?俺はあんたを殺す事は別に絶対の条件じゃないわけ。この落とし前をどう付けてくれるのかってところ、俺に納得させたら別に逃してあげてもええよ」



「あ、ほ...本当かね」



「勿論。今のところ俺の薬でだけ進行を遅らせられる毒状態にして帰そうかなって思ってるんやけどどう?それで良い?」



「待て!待てやめてくれ!金はどうだ。いくら欲しい!」



「あそうお金。あんた自分の命の価値を自分で決めれるってのかい。俺には無理やけど、試してみるか?」



「気に入らないならなんでも言いたまえ!私は生きて帰りたいのだ」



(はぁー凄い。生殺与奪を握られててこの口聞けるメンタルは尊敬やな。俺無理やわ)



「あんなぁ...まぁええわ。最初の話からやけど、俺はねぇ知っての通り流れ者で何にも縛られたく無いわけ。だから定期的にお薬作って提供とか幾ら金積まれてもそもそも嫌なの。この街にもそう長くおらんよ」



「...」



「でも病気の娘を思う親の気持ちには一定の理解があるつもりや。そこで提案があるねん。どうや?この際、薬やなくそのまま俺を連れてけよ。娘さんの体質バッチリ治してあんたに王族への恩売らせたるわ」



「なっ!馬鹿な!そんなこと...っ」



「今後の薬で儲けれる筈やった銭の事はもう忘れろ。その代わり今回支払われる報酬の半分はやるわ」



「半分!?王族から払われる金額がどれだけか知って言っているのかね!?私が居ないと会えもしない貴様が...っ!!」



「あ?お前状況わかってなさすぎ。俺は最大限お前のメンツも潰れん様に提案したってんねんけどさぁ優しくしすぎたか?もうええよ。死体で王都にお帰り」



「待て待て待て!ガッ...クソ!!分かった!!」



「オッケーじゃああんたの配分は2割ね」



「なんだと!?話が...」



「俺の優しさを無駄にしたよな。その3割がお前の命の値段や思うとけ。先に言うとくが、猫ババみたいなことしたら命無いぞ。目先の金と自分の命。どっちが重いかよう考えろや」




「貴様ァ!私を誰だとガァァァァ!!!!」




話に決着が付かないので膝を蹴り折った。

ため息を吐く。あまりやり過ぎると恨みを抱かれそうだが、こうしないと話が先に進まない。



ここでなんの条件も無く逃したとして、王族に俺の薬の存在がバレている以上、それを持ち込んだこの男ももう後には引けないだろう。

全て後腐れない様にしないと、皺寄せが俺に来ると困るのだ。



こいつも王族も、金がある事は既に聞いた。

特に王族の両親は娘の為、それを惜しんではいない事も。



例えばだが、俺が製法を持ち逃げした...だなんてこいつに言われれば、その両親は話が嘘であろうと本当であろうと構ってはいられない。

俺は何もしていないのに国最重要のお尋ね者になってしまう可能性があるのだ。



そうならないように、そしてこれが終わった後もう俺に用がないよう元から絶っておく。

幸い俺には娘の体質を治す手段に心当たりがある。

原因が何かにもよるが、予想通りなら解決出来る筈だ。



「クソ...貴様....貴様ァ....!」



「おー追加がお望みか?結構根性あるねぇ」



「ま、待て!分かった2割でいい!2割でいいからもう...やめてくれ...」



「最初からそう言っとけな。短気は人生損するで」



「ぐ...」



「ほれ」



回復薬を2本足に回しかける。

最低ランクのものだが、そもそもレベルを上げていない人物にはこれで十分だ。

そしてこの世界にはレベルという概念がない。俺以外の人間は瀕死でもコレ2、3本で全回復すると既に確認済みだ。




「あ...な、なな....」




「<誠意>もって対応してくれるんならさ、俺はお前がどんな奴やろうとちゃーんと温情かけたるってことよ。ただ舐めた態度は許せん。今回のお前は舐めてるとかの次元ちゃうかったけどな」




足が瞬く間に元に戻る。

話がひと段落ついたので離れ、護衛の方に歩き出した。

先ずは首が折れた方だ。




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