表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

第4話 刺激を求めるのであれば

ーーーーーーーーーーーーーーーー




右側から丸太。



「ふっ!」



石を弾いて相殺する。

丸太は粉々だ。当たっても問題にはならないが、当たったら負けのゲームだと思えばモチベが上がる。




「今日の森はまぁ...賑やかやねぇ」




もう帰路に着き始めて4時間だ。

落とし穴やら丸太やら、あの手この手で足止めを食らっている。

せっかく用意してもらった物だしと駆け抜ける事はせず、休憩しながら逐一対処してきた。




「...んーかからんか。ええけどね」




サーチの範囲も相変わらず反応が無く、戦わずに帰れるならそれも構わないので積極的に追っても来なかったが、ここまで遅延されると俺もそろそろ決着をつけたい。



あちらも何か狙いがあるのだろう。

そのうち自然に出てくるかと思っていたらかなり時間を使ってしまった。



辺りはもう暗い。

幸い夜目はきく。月光の下なら日中と変わらぬ様に見えるが、森の繁りの中はあいつの独壇場だ。

もう直ぐ森は抜けられるが、それまでは....




「....」




待ってくれないよな。

初めからそこに立っていたかのように、瞬きの間に現れる黒い影。




前横パッツンの美少年だ。

こけしヘアーとでも言うのだろうか。



小柄だが、存在感は大きい。闇を駆けるに相応しい黒い装いと、その妖しくも美しい中性的な顔貌が月夜によく映える。

華奢な体と艶やかな仕草は女性と言われても納得してしまう出立ちだ。

胸さえあればそのまま女性で通るだろう。




ようやくまともに顔を見た。




「こんばんは。月が綺麗やね」




「...ええ、良い夜だ」




返答は帰って来ないかと思って話しかけたが、意外にも答えてくれた。

彼は見惚れた様に月を眺めている。

俺に散々罠を仕掛けておいて優雅なものだが、確かに今宵は見事なまでの三日月だ。

ふんと鼻を鳴らして俺も暫し眺める。





(ま、良い夜ではあるな)




少なくとも、退屈はしていない。

それだけで良い日。良い夜であると言えた。



見上げる月光に眩しさを感じ、目を閉じる。

目を閉じても月の光が俺を照らし、包むのを感じた。



陽の光のそれより優しく、深く、何もかもを受け入れる抱擁のような光。

俺にだけ、月は何故かとても明るい。いつからか村にいた頃からそうで、これが俺の夜目が効くカラクリだ。





「祈っているのですか?」





今度は向こうから声をかけられて目を開ける。




「祈っても助けてくれる神様とかおらんかったし。まぁ月の光が気持ち良くてな」




そう言って石を構える。

会話出来るからと見逃したりはしないだろう。それに、この手の輩が顔を見せるのは既に見せても問題ないと判断されているに違いない。



(投げしか見せてないから、仕留めるなら他の手札の切り時がキーやな。ただ素手以外は殺してまうかも...)



出来れば誰の差金か聞きたい所だ。

プロなら言ったりしないだろうが、もしかしたらがある。




「ふふ....」




そんな姿が面白いのか、あいつが唇に指を添えて微笑んだ。煽っているのか?



(物語から出て来たみたいな奴やな。生来の雰囲気というかなんというか。あれの1%でも俺にあればパーティも組めたかなぁ)



自分の思考に呆れながら、握っていた石を全てその場に落とした。



散々石の威力は見せた筈だがこの余裕の態度。そのまま行動すると罠にかかる可能性が高い。予測されるのはカウンター型だ。そのままの威力が跳ね返ればかなりの痛手となる。



なら初手は奴から仕掛けるに任せよう。




「...?」




「いや、君から攻撃してこんなら別に戦わんでもええやん。俺家に帰るわ」





大きく避けることもせず、ただ隣を通り過ぎる様に歩き出す。

初めて笑みを崩し困惑した様な表情をするが、目線が俺から外れない。


俺も必然帰る方向に彼がいるので目が合い続ける。

隣に来る頃にも俺の顔をガン見しているので、ついつい笑みが溢れてしまった。





「ヒヒ、よう見て俺に興味でもあるかい。坊ちゃん」





そう言って頭に手を置いてみる。見え透いた挑発。揶揄いだ。

用意されたカウンターか、怒って攻撃が来るかと思っての行動だったが、ビクリとするだけで撫でられるままでいる。



(ビックリ。触らせるとかマジ?普通イコール死みたいなもんちゃう?俺に害意が無いから良いものの、この坊ちゃんなんかおかしいか?)





「んー?どしたん坊主。なんかあるなら話し聞くで」




訳ありか?一瞬そう思い聞いたが、固まっていた少年の手が動く。

初撃はHPで受ける気でいたため焦りはしないが、反射で盾を取り出した手が動かない。

そこでようやく異変に気付いた。




(マ?体動かんねんけど)




「いえ、大丈夫です」




その間にゆっくりと短剣を取り出す少年。

最初に見たものだ。



「ありがとう...ございます。優しくされたのは、久しぶりでしたよ」



ちくりと手に剣先が刺さる。




(あーなるほどね)




視界に映るのはレジストの文字。恐らく毒物。

だが体は動かない。つまりこれは毒とは別の効果。



(やば凄...確定拘束持ちか。俺の耐性抜いてこの効果時間ってどんな技でもぶち込めるやん。興味出て来たな...ついてってみるかな)




長い長い追いかけっこで萎えかけた興味が再燃する。



次いでにどうなるか任せてみるか。

そう思い瞳を閉じる。

殺すつもりの毒なら放置するだろうし、そうでないなら...ほら来た。

馬車の音だ。



近くで金属か何かを拾う音がして、体が自由になる。

意識的に脱力しそのまま倒れた俺は、直ぐに駆け寄ってきた大勢に手足、口を縛られ袋詰めにされた。

こちらは慣れた手際とは言い難かったな。



さて、どこへ行くのやら。

まぁ何処に行こうが構わない。

たまにはこんなイベントがあっても良い。



そう思い、俺は馬車に担ぎ込まれた。





ーーーーーーーーーーーーーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ