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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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後輩の家①

須東(すどう)春斗(はると)は、子供のころからモテてきた。

恋人に困ったことはない。向こうから近づいてきてくれるから。


『お前はいずれ、我が社を継(つ)ぐ。そのときのために、今から勉強しておきなさい』


父は厳しい人だった。母は父に逆らえなかった。


『はい、お父さん。任せてください』


そして彼は、父の教えに従(したが)って生きてきた。それに疑問も持たなかった。大学生になるまでは。


『はじめまして、須東くん』


そのとき、付き合っていた女の子が所属していたサークルの先輩。それが西野(にしの)秋子(あきこ)だった。


『……はじめまして』


彼氏がいるとは聞いていた。だが、それでも。まったく興味を持たれないのは初めてだった。


『今度、飲みに行きませんか?』


『いいねえ。みんなで行こー。あ、そうだ。今、友達から、須東くんのことが気になってるって相談されてて……。1回だけでも、会ってくれない?』


それは、ちょっとしたからかいのつもりだった。なのに彼女は、自然にかわした。その笑顔を見た瞬間から、他の女性のことを考える余裕は消えた。


――――――


「ちゃんとお金は支払うから、今日だけ泊まらせてくれる?」


そう言った彼女は、少し年を取っていたものの、以前と同じ笑顔を見せる。


「……お金なんて、取りませんよ」


そう言うのが精一杯(せいいっぱい)だった。ドキドキと、胸が高なる。


(秋子さん……。前より綺麗になってる気がする)


本当は、彼女と結婚したかった。けれど、恋人がいたから諦めていた。それなのに。


(どうして、こんなに素敵な人を捨てられるんだ)


細い手を取って、須東は彼女を連れていく。駅から徒歩数分の場所にある、マンションの最上階に。


「……ホントにいいの? ここ、かなり高い部屋じゃない?」


「大丈夫ですよ。土地も含(ふく)めてこの建物は、すべて僕の物ですので」


「……そっかあ……」


秋子は少し引きながら、クツを脱いで家に上がる。綺麗に片づいたリビングには、大きなモニターとソファ、長机(ながづくえ)が置かれていた。


「何か見ますか? 映画に、ドラマ……何でも好きなものを流しますよ」


リモコンを持った須東が言う。秋子は困ったように眉をよせた。


「ううん、大丈夫。気にしないで」


ソファのすみに腰を下ろして、彼女は背を丸める。須東は黙って手に持っていたリモコンを置いて、冷蔵庫を開けにいった。


「……なら、せめてお酒をお出しします」


とっておきのワインを開けて、彼はグラスに酒をそそぐ。そして生ハムやチーズと一緒に、リビングに持っていった。


「乾杯(かんぱい)しましょう」


「……うん」


2人はグラスを持ち上げて、軽く打ち合わせる。軽い音が聞こえて、透明な器(うつわ)の中で、赤い液体が波うった。


(いい香り。美味しいな……)


秋子はグラスを傾(かたむ)けて、ゆっくりとお酒を飲み始めた。

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