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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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後輩の家②

「うう……雪也(ゆきや)……。なんでぇ……」


アルコールが回り始めて、秋子(あきこ)はポロポロと、涙をこぼしだした。


「……先輩……」


春斗(はると)はその背をなでながら、スッとハンカチで目もとをぬぐう。


「辛(つら)かったですね」


「……ゴメンね、須東(すどう)くん。式には呼ぶって言ったのに……」


「……いいんですよ、僕のことは」


式という言葉に、彼はピクリと眉を動かした。


(先輩が先に結婚するまで、僕も待とうと思っていたのに)


父親から、何度も言われていた。早く結婚して、子供を持てと。だが、彼はそのたびに断っていた。秋子のことが、諦めきれなかったからだ。


(ウェディングドレスを着て、あの男の隣(となり)に並ぶ先輩を目に焼きつけて……それから、僕も結婚に向けて動くつもりだった。先輩が幸せになるのを見届けて)


だというのに、結婚式の招待状はいつまでたっても届かなかった。


(その上、探偵を雇(やと)って調べさせたら、あの男は先輩を置いて遊び歩いていたからな)


怒りがわき上がってくる。秋子は気づいていなくても、春斗は彼氏の裏切りを知っていたから、よけいに許せなかった。


「……先輩」


だから彼は、懸命(けんめい)に声をかけ続ける。


「僕はあなたの味方です。だからどうか、頼ってください。家が見つかるまで、ここに住んでくださっていいので……」


ウソだ。本当は、ずっと一緒にいたいと思っている。


(だけど、先輩はあの男のことが本当に好きだったから。きっと今は、何を言っても混乱させてしまうだけだろうな)


そう思った春斗の耳に、秋子の声が入りこむ。


「……ホント、ゴメンね。私なんかに、貴重な時間を使わせちゃって。せっかくのクリスマスなのに」


「いいんです。僕にとっては、秋子先輩と一緒にすごす時間が1番楽しいので」


自分を責(せ)めるような言葉に、彼はすかさず言い返した。彼女は泣きながらうつむいて、無理やり笑みを浮かべる。


「そんなの、雪也にも言われたことないよ」


「……秋子さん」


涙をぬぐうだけでは足りない。春斗は彼女の心を救いたかった。なのに彼女は、いまだに昔の男のことを考えている。


(……どうして僕は、あいつに勝てないんだ。あんな奴(やつ)に)


顔も年収も、彼より上である自覚はある。それに、秋子のことを思う気持ちも。なのに彼女は、フラレた今も、過去の男の名前をだす。


(僕なら、あなたを悲しませたりしないのに)


今も静かに泣き続けている彼女を見つめて、春斗は奥歯(おくば)を噛(か)みしめた。


(秋子さん。僕はあなたが幸せになってくれるなら、喜んで手を離すつもりでした。でも、こんな形で、あなたか1人になるのなら。もう2度と、あの男のもとには帰さない)


大切な女性(ひと)の横顔(よこがお)を見ながら、彼は心の中で誓う。今度は自分の手で、彼女を必ず幸せにすると。

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