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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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帰り道②

(……ウソだぁ)


秋子(あきこ)は信じられなかった。春斗(はると)は誰の目から見ても完璧な男だ。


「……須東(すどう)くんには、他にいくらでも相手がいるでしょ」


「ええ、そうですね。だけど僕は、先輩がいい」


「……どうして?」


「先輩は……秋子さんは、僕自身を見てくれるから」


彼はハッキリと言いきった。その意味がわからず、彼女は首をかしげてしまう。


「……須東(すどう)くん自身を?」


「はい。僕は自分で言うのもなんですが、恵まれているほうだと思います。でも、本当に欲しいものは手に入らなかった」


彼は目を伏(ふ)せて言った。周囲の客が、2人のほうを見てひそひそとささやく。


「……ドラマか何かの撮影かな?」


そんな声が聞こえて、秋子はハッとした。彼女は慌てて、彼を連れてレジに向かう。


「……ごめん、須東くん。変なこと聞いて」


「……いえ。僕のほうこそ、すいません」


セルフレジの列に並んで、2人は小声で話を続けた。秋子はうつむいて、ポツリとつぶやく。


「欲しいものって、何?」


春斗は黙って微笑んだ。キラキラと輝く笑みが、とてもまぶしい。


(……うわあ)


彼女は何も言えなくなった。あまりにも、顔が良すぎて。


(絶対わかってるもんな……)


彼は自分の武器を自覚している。正直に言えば、悪い気はしない。


(雪也(ゆきや)と付き合ってたときは、考えないようにしてたけど。今はもう、別れてるし)


春斗は優しい後輩だと思う。思う、のだが。


(……だけど雪也も、最初は優しかったんだよな)


結局、秋子は別れた男のことを考えてしまった。会計を終えてから、彼女は品物を袋に詰める。


「あのね、須東くん。私は君が思うほど、良い女の子じゃないと思う」


「そんなことは……」


「あるの」


否定しようとした彼を遮(さえぎ)って、秋子は続ける。


「だって今でも、雪也のことが忘れられない。君は、イヤでしょ。こんな女」


「まったく問題ありませんが」


春斗は笑顔で即答(そくとう)した。秋子はポカンと口を開ける。


「……えっ?」


彼女の手から買い物袋を取り上げて、彼はその耳もとでささやく。


「そもそも、10年も付き合った相手を、すぐに忘れろというほうが間違っていると思いませんか?」


低く、甘い声に、秋子は耳まで赤くした。その手を取って、春斗は告(つ)げる。


「僕はあなたがそばにいてくれるなら、どんな形でもいいです。他に行くところがないんでしょう? 僕と同棲してください」


「……はい」


彼女はうなずくしかなかった。心臓が、まだドキドキしている。


(……わかんない)


そこまで求められるほど、自分に価値があるとは思えなかった。けれど彼の手は、とても熱くて。


(本当に、私のことが好きなのかな)


春斗に引きずられていきながら、秋子は初めて、彼のことを意識した。

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