帰り道①
「荷物が多くなるんだけど」
そう言って、秋子は途中でスーパーに寄った。春斗は黙ってついていく。
「須東くんは、何か食べたいものはある?」
「肉じゃががいいです。……先輩に、初めて作ってもらったものですから」
「……そ、そう。安いお肉があるといいね」
サラリと言われて、彼女はろこつに目をそらした。大学時代は、自宅でホームパーティーをしたこともある。
(……そういえば、毎回ほめてくれてたな……)
こま切れの豚肉をカゴに入れながら、彼女はさらに落ちこんだ。
「……須東くんはさ」
良くないことだと思うのに、口から勝手に言葉が出てくる。人参とじゃがいもを追加で入れて、秋子はポツリとつぶやいた。
「なんで私に、ここまでしてくれるの?」
「好きだからです」
真剣に言われて、彼女はピタリと手を止める。横を見ると、春斗のまっすぐな瞳と目があった。
「僕は、先輩にずっと憧れていました。他の女性と付き合っても、長続きしなかったのはそのせいです。……気づいてましたか? 僕、あなたに紹介された人としか、付き合ったことがないんですよ」
「えっ」
秋子は石のように固まった。心当たりがある気がして。
(……そういえば、2回目と3回目の子には、あんまり会ったことなかったかも)
大学のとき、彼には3度、知り合いを紹介したことがある。1番長く続いたのは最初の子で、同じサークルの後輩だった。次は同じ講義を取っていた同級生。その次は、同じ学部の先輩。
(……別れた後に、ちょっと嫌われたような気もするし……)
今まで気づかなかったのは、最初の子に変化がなかったからだ。同じサークルで、卒業するまでずっと仲が良かったと思う。
(でも、もしかしたらあの子のことも、知らずに傷つけていたのかもしれない)
グルグルと、考え続ける秋子を見て、春斗は困り顔になった。
「……彼女たちとは、お互いの合意の上で付き合っていました。僕には忘れられない女性がいると。本人には、それでもいいと言われましたよ」
そこで、言葉を切って。彼はため息をつきながら続ける。
「……結局、僕は自分を変えられなかった。ずっと、あなたのことが好きなままで。気持ちが悪いと、思われますか?」
秋子は慌てて首を振った。
「いやいや! むしろ、ごめんね。まさか、そんな……須東くんに好かれてるなんて、考えたこともなかったから」
「そうでしょうね。でも、そんなあなただから、僕は好きになったんです」
春斗は悲しげに目を伏せる。
「できることなら、僕が先に出会いたかった。何度、そう思ったかわかりません」




