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第5話「晩夏、バス、おっぱい」

「やっぱ日光ってクソじゃない……? 頭ガンガンする……」


「太陽克服したからってずっと日焼けしてたら脱水症状にもなるよ」


「でもでも! それで焼けてないなんてあんまりよ……!」



 夏休み最後の思い出作りにと海水浴に向かったその帰り、バスの後部座席にてレンカはミハネにより掛かるようにして全身の主導権を預けていた。


 良く拭いたとはいえ、当然のように着替えなんて持ってきていない彼女のパーカーの下は白い肌にお似合いの黒ビキニオンリー。


 小学生と見紛うほどのガキメンタルには不釣り合いなデカパイがミハネの手に委ねられ、少しはみ出す。


 ミハネは珍しく焦っていた。


 彼女はドMだ。


 そして、レンカをエロい目で見ている。


 柔軟な思考回路のドMである彼女は、レンカ絡みならどのようなシチュでも適応できるように進化していた。


 いやその適応の先で何をするかはともかくとして、定義的には変態のそれである。


 二重の意味で変態のそれである。


 しかし将来設計を怠らなかった類の変態である彼女に漢検一級、英検一級、応用情報技術者等はあれど死角はない。


 具体的には、ミハネはレンカの情操教育の過程で良い感じの無知シチュになるように性的な情報をコントロールし続けてきたのだ。


 涙無しには語れない努力の日々であり、この瞬間はその労力の、いわば結実の時なのである。


 ちなみに、今彼女が今物理的に手にしている果実は努力とかとは関係のない天賦の才。



「でか……」


「……? 何、警察の話?」


「ううん。レンカちゃん、おっきくなったなって」


「そうでしょ? 去年からまた2cm伸びたんだから!」


「うん」


「……そう言えば、今の私って人間じゃないんだから大人でも小人でもないのよね? 博物館とか、どっちの料金で入ればいいのかしら……」


「都民ではあるから、無料でいいんじゃないかな?」


「あ、そっか、そうよね! ……映画、都民無料とかないんだけど……!?」


「サブスク落ちるの待とうね、レンカちゃん」


「やだぁ……好きな映画はちゃんと見に行くの私……」



 絶望顔でギュッとミハネの腕を抱き締めるレンカ。


 こう見えてもレンカの趣味は映画館での映画鑑賞。


 暗くて落ち着くという吸血鬼系女子的理由もあるが、それ以上に物語が好きというロマンチストな彼女は3時間半くらいなら問題なく眼の前のスクリーンに集中しっぱなしになれるというこの大ドーパミン時代においては極めて希少なスキルの保有者なのだ。


 いや、こんな話よりも駄々をこねている内に水着の紐が外れ、予期せぬ感触がミハネの手のひらを襲ったという事実のほうが遥かに重要であり、そしてオチには丁度良いのかもしれない。

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